草むらが揺れていたので足音を消して忍び寄ると、タブンネが座ってオボンの実を食っていた。
わき目もふらずクチャクチャと音をたてて夢中になっているせいか、こちらにはまったく気づいていない。タブンネは聴覚が優れているはずなのだが……まあいい。
5mくらいまで近づくと、耳をピクリと動かして振り向いた。逃げられるかと思ったが、タブンネは脇に置いてあったオボンの実を抱き寄せて
ミィィィ! と威嚇するだけで立とうともしない。
しばらく睨みあった後、タブンネはまたオボンをかじり始めた。舐めくさりやがって。ちょうどいい、立場を分からせてやる。
鞄から常備している灯油を取りだし、おもむろにタブンネの尻尾にかける。
ミヒッ! と驚くが、すぐに態度を変えた。
ミッミッ! 怒った鳴き声で尻尾を地面に擦り付けている。臭いが気にくわないらしく鼻をひくつかせている。
意識が灯油に集中しているのを確認し、後ろに回り込んで尻尾に火を点けた。
ミャァァァ! 突然の熱に混乱しているようだ。くるくると同じ場所を走っている。さらに体に灯油をかけると、タブンネはモエルネに進化した。
ようやく地面を転げ回るがもう遅い。火が消えることはなく、タブンネは動かなくなった。
カメールのみずでっぽうで消火する。驚いたことに、タブンネはまだ生きていた。
ミィィ……黒焦げの手を必死に伸ばして俺に助けを求めている。いいだろう、助けてやるよ。ボロボロのタブンネをモンスターボールに入れて帰宅した。
さて、明日からこいつをどう苦しめてやろうか。
最終更新:2014年07月19日 09:34