いつまでも子供のままで

ペットとして飼われている幼い子タブンネの姉弟がいました
姉弟は飼い主から大変可愛がられ、毎日何不自由なくじゃれあって暮らしています
ご飯はとてもおいしい離乳食と、新鮮な木の実を毎日与えられ、
子タブンネ達はご飯の時間が楽しみで仕方ありません
特にお姉ちゃんのほうはくいしんぼさんで、弟の倍近くはぺろりと平らげてしまいます
そのおかげで2匹のタブンネはすくすくと成長し、日に日に大きくなっていきます
姉タブンネの身長が70センチに届きそうな時、事件は起こりました
いつものように姉妹で遊んでると、飼い主が姉タブンネをひょいと抱き上げました
(こいつは大きくなって可愛くなくなってきたな)
不意に胸に当たった触角からご主人様の心の声が聞こえてきます
ちょっと前まではは可愛い可愛いって口癖のように言って、
ナデナデしたり抱きしめたりしてくれたのに、最近はめっきりそういう事をされません
姉タブンネは悲しくなり、涙をほろほろと流しました
「ミュイッ?!」
すると突然首に手をかけられ、そのまま床に押さえつけられました
そして飼い主は拳を握りしめ、タブンネの顔面をガツンガツンとなぐりつけます
「フィッ!!?フィッ!!フィッ!フィッ!フィィィィー!!」
数十回殴って殴るのを止めると、タブンネの首を両手で掴み、喉に親指をめり込ませながら高々と持ち上げました
「フィィィィィィィィアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァ!!!!!ケホッケホッ」
「ミッミッ!ミィィ」
弟タブンネがやめてやめてと足元に縋りつきますが、飼い主はやめません
タブンネが咳き込んで泡を噴き出すと、飼い主は手を離した
床にどさりと落ちて涙目でケホケホと咳き込むタブンネに、
飼い主は汚い物でも見るかのように見下してこう言い放ちました
「ミィコ(名前)ッ!大きくなって可愛くなくなったお前はもうペットじゃない!お前は今日からサンドバッグだ!」
姉タブンネ改めミィコはサンドバッグが何かは判らなかったけど、何か良くないものだという事は理解しました
(どうして…ミィコ何も悪い事してないよ… 痛いよ… 苦しいよ… 元の優しいご主人様に戻ってよ…)
ミィコの願いも届かず、飼い主はミィコに一蹴り入れてから乱暴にケージに放り込みました

それからのミィコは地獄の日々です
暗い押し入れの中に置かれたケージに一日中入れられて過ごし
明るい所に出されたと思ったら腹パン、触角電流、首絞め、肛門根性焼きなどの虐待を加えられ
食べ物は捨て値セールで買いだめた賞味期限切れ寸前の激安フーズ
賞味期限が切れて腐ってもそのまま与えられました
毎日してあげてた寝床や床材の掃除も止められ、タブンネは汚く臭くなるのですが、
一カ月に一度車用の高水圧洗浄機でケージごと洗われるのでした
当然ミィコはガンガン弱っていき、
とうとう暴行を加えても何の反応も示さなくなり
ケージに閉じ込められ、ただ死のみを待つ状態になりました

弟タブンネ(チィタ)はうずくまって姉の悲鳴を聞いているしかありませんでしたが
しかし、飼い主はチィタを以前と変わらずに可愛がってくれます
チィタは内心ガクブルでした、自分もいつ姉のようになるのかわかりません
信じていた主人に暴行を加えられた姉の苦痛と悲しみの慟哭が耳から離れず
寝る時も起きる時もチィタの心をキュウっと締めつけました
「お前はちっちゃくて可愛いな~、いつまでも子タブンネだったらいいのに」
飼い主に撫でられながらチィタはこう言われました
(そうか、大きくならなければ、大きくならなければずっと可愛がってもらえるんだ)
チィタはそう考えました

それからチィタは大きくならない努力を始めました
それは、栄養をとらないという事です
食べ物は一日にフーズ一個と水のみ、
飼い主が心配しておやつを勧めて止むなく食べることがあっても
飲み込まずにこっそり後で吐き出すのでした
最初は当然凄まじい飢えに苦しみましたが、
常に飢えている状態に慣れてしまうと
食べ物を口に入れるたびに暴行を受ける姉の姿が頭に浮かび
しまいには食物そのものに恐怖するようになっていまいました
しかし大きくならなくなるという目的は達成されました
とっくに大人タブンネになる年齢だというのに身長は50センチ、体重は10キロに達しませんでした
だがその容姿は子タブンネのかわいらしい物ではなく
顔は骸骨、手足は棒のようであばら骨は浮き出て下腹は内臓がぽっこりと飛び出ているという
恐ろしい姿になってしまいました
でもチィタは幸せでした、自分はまだちっちゃくて可愛いままだと思いこんでいたからです

そんなある日、飼い主はまだ離乳したばかりくらいの小さな子タブンネを連れてきました
チィタは新しい家族を歓迎し、ミィと鳴いて挨拶しましたが
子タブンネはお化けのような容姿のチィタを怖がっています
「おい、バケモノ、俺はこのチビちゃんをペットにする事にした、チビちゃんが怖がるからお前は出てけ」
チィタは飼い主の言葉が信じられませんでした、特に自分を「バケモノ」と呼んだという事に
「ミッミッミ!ミィミィミィ!」
細い身体で必死に足元にすがりつき、幼いときのように甘えるチィタ
しかし飼い主はチィタを玄関から蹴り出してしまいました
「キモすぎてサンドバッグにもならないお前なんか家に置いていられるか、もう二度と帰ってくるな!」
そう言って飼い主は扉をバタンとしめてしまいました

その後、チィタは絶望の表情で町をさまよってる所を愛護団体に保護されました
ガリガリのチィタをベッドに寝かし、愛護団体員は栄養満点のお粥をすくって食べさそうとしました
「ミアアアアアアアアアアァァァウアアアアアアアアアアア!!!!!」
チィタはお粥を近づけられると泡を吹きながら絶叫して首を激しく横に振り、手で払いのけようとします
飼い主がチィタに残した物は、食べ物に対する一生消えない恐怖心だけでした
今のチィタはとうとう自力では動けなくなってしまい
愛護団体の病院で点滴での栄養補給だけで生きています
何の喜楽もなく、ただ心臓が動いているだけという時間が死ぬまで続くのです
その頃飼い主は、大きくなった前述の子タブンネを折檻してましたとさ
最終更新:2014年07月21日 16:53