タブンネ実験

イッシュ地方のとある場所、プラズマ段の地下実験室
そこでは大量のタブンネが飼育されています
タブンネは繁殖力が強く、再生力により治療を施さなくても傷が癒える
正に生体実験にはお誂え向きのポケモンというわけなのです

今日もまた一匹のタブンネが檻から連れ出されてきました
「ミィ?」
正常な状態で観察を行うために適切な量の食料を毎日与えてもらっているタブンネ
警戒心は欠片も感じられません
むしろ、久々に檻の外に出られたことを喜んでいるように見えます
因みに、これから行うのはタブンネの精神力調査
トゲキッスのエアスラッシュに対し、どれだけ怯まず立ち向かうことができるかの実験
二匹を実験場に入れ、キッスに指示を出し、実験を開始しました

実験が始まってすぐにトゲキッスが羽を振るい、真空波を放ちます
いまいち状況を把握しきれていないタブンネは、そのまま空気ごと切り裂かれてしまいました
私はこの時、当然のようにタブンネが怯んでしまうことを予想していたのです
かなりの力を持つポケモンですら怯んでしまうであろうこのエアスラッシュで
あのタブンネが、怯まないはずがないと考えていたわけですから

しかし、事態はそれ以前の問題でした
「ミギュィッ!」
ピンクと黄色のたるんだお腹は真空波によって易々と引き裂かれ、タブンネの血肉が飛び散ります
どうやら二匹のレベルの差が大きすぎたようですね
タブンネはそのまま倒れこんでしまいました

地に伏したタブンネを容赦なく切り刻んでいくトゲキッス
次々と浴びせられる真空波によって
大きな耳に、可愛らしい触覚に、まん丸の顔に、小さな手に、愛くるしい足に……
鮮やかな真紅の傷が描かれていきます
このままではタブンネが息絶えるのも時間の問題でしょう
しかし、我々は実験動物を殺すのを最大限控えるよう、N様から申し付けられている身分
私がキッスに攻撃の手を休める指示を与えたその時です
「ミミィィッ!」
なんという事でしょうか。タブンネが立ち上がり、雷を撃ち放ったのです
「ミュァッ!?」
ダメージは殆ど通っていないようですが、トゲキッスの方はかなり驚いている様子
しかしその驚きは、すぐさま怒りに変わったようです。無理もありませんね
私もサンドバックであるはずの豚が突然反撃してきたら、苛立ちと情けないのとで同じ感情を抱くでしょう
トゲキッスは怒りをエネルギーに代えて、タブンネに発射しました
全力全開の破壊光線が、雷を命中させて調子に乗っている哀れなタブンネを襲います
「ミ!?ミギャァァァァァ…ヒャ…ヒュァァ…」
直撃を食らったタブンネは無事でいられる筈もありません
下半身は蒸発し、上半身も大部分が焼け爛れてしまったようですね
肺すらも焼き尽くされてしまったようで、断末魔の悲鳴もよく聞き取ることができませんでした
トゲキッスは攻撃の反動で二発目を撃つことはできませんが、次を待つまでもなく
タブンネは息絶えたようです。こうなってしまえば再生力もクソもありません
まあこのような経緯があれば、N様からお叱りを受けることはないでしょう
それに、怯まずに立ち向かうタブンネの姿を観察することもできました
更にはトゲキッスの全力の破壊光線の威力も観察できたのです
このタブンネの死は、決して無駄なものではなかったのではないでしょうか

多分ね
最終更新:2014年07月30日 23:33