みがわり

我が家のタブンネは散歩に行く時はいつも四足歩行だ
そのせいか散歩途中にあう他のポケモンや同族であるタブンネにすら馬鹿にされている
我が家のタブンネはケージに入れられている
元はモルモット用のケージのため、狭いどころの話ではなく、我が家のタブンネはいつもケージの上から顔だけだして生活している
我が家のタブンネはいつもおじいちゃんと一緒の布団で寝る
我が家のタブンネはおじいちゃんにとても可愛いがられている
寿命を迎えてしまったモルモットの代わりに
おじいちゃんは我が家のタブンネのことをモルモットだと思っている
それを知っているから我が家のタブンネは何も抵抗せずにモルモットの代わりをやってくれている

ある日、近隣住民の通報により愛護協会の方が事情聴取に来たが、一通り説明すると憐れむような顔をしておじいちゃんとタブンネを見やり、何もせずに帰っていった
そのうちこのことが噂で広がり、誰も咎めたり馬鹿にする人はいなくなった
他のポケモンや同族のタブンネですら馬鹿にするのは止め、ただ憐れんでいる
またある日の夜、近所に住んでいて散歩の時にいつも会うポケモン:クロバットがこっそりと忍びこみ、我が家のタブンネに逃亡計画を持ちかけていた
この時だけ何故ポケモンが話ていることが解ったのかは、僕にも解らない
僕は我が家のタブンネが誘いに乗るだろうと思っていた

だが我が家のタブンネは断った
「それでも私はこの家族が……おじいさんが好きだから。おじいさんが笑ってくれるなら……喜んでくれるならそれでも構わない。例え私という存在が認められなくても……誰かの代わりでしかないとしても。」
「……そっかぁ、ごめん。お前が良いなら別にいいんだ、何かあったら遠慮なく俺に相談してくれよ。」
我が家のタブンネの一途で献身的すぎる答えを聞いた近所のクロバットは憐れみの表情を微かに浮かべながらも笑顔で去っていった

その夜、僕は眠れなかった
僕は我が家のタブンネが内心では恨んでいるだろうと思っていたのだ
その方がこちらとしてもまだ気持ちが楽だ
そもそも我が家のタブンネはおじいちゃんが可愛いがっていたモルモットの後釜として来た
本来ならおじいちゃんを慰める新しいペットとして来るはずだったが、おじいちゃんは我が家のタブンネを見てモルモットが生き返ったと勘違いしたのだ
最初からタブンネとして見てもらえなかった我が家のタブンネ
純粋でひた向きで一途な優しい我が家のタブンネの行く末を案じて僕は一人、すすり泣いた
最終更新:2014年08月11日 23:09