清人の星

夜のグラウンドに光が走る・・・!
マウンドには一人の男がいた。名をば星比留間。彼はライバルである菱形を
攻略するため、父とある特訓に励んでいた。
「比留間、菱形のバッティング能力は今までの相手とは桁違いだ! 凡人のする
投球で勝てるはずがない!」
比留間の父、一穴の厳格さを醸す声が響き渡る。
「少なくとも今のお前に奴から三振は取れない。ならばどう勝つ?」
「打たせてとか・・・多分それでいいんじゃない?」
「そうだ! 菱形には初見のピッチャーの股間を狙って打つ癖がある! 奴の股間
への打球を捕れば、お前は勝てる!」
一穴は足元のバケツから小さなピンク色の物体を取り出した。
チィチィ♪
生まれて間もない子タブンネである。高い鳴き声がバケツからも一穴の手からも発せられる。
喜びの声をあげて指を握ってじゃれてくる子タブンネに、一穴は動じることなく言葉を続ける。
「それに必要なのは覚悟! たとえ命が消えようとも球を捕るという頑なな執念!
燃える子タブンネを捕れ!」
言うや否や、一穴はバケツの横の酒瓶の中身を少し子タブンネにかけた。
チチチィィィィ!!

子タブンネの悲鳴に、バケツの中の子タブンネが顔を出して様子を伺った。
目を瞑っていやいやと身を捩る子タブンネに、一穴は着火した。
ヂィィィィィィ!
手に炎が当たる前に上に投げ、落ちてきた所をバットで打った。
ギョヂビェェェェェ!!!!
体液を撒き散らしながら光を放ち比留間へと飛ぶ子タブンネ。
「あっつ」
グビェ!
比留間はそれを鋭い蹴りで叩き落した。メラメラと燃える子タブンネを何度も踏み、消火を図った。
ビッグ! ヴェッ! オボッ!
火が消える頃には子タブンネはとっくに息絶えていた。
「馬鹿者! 捕るのだ! 死ぬ気で、全力で、己の全てで捕るのだ!」
「いやむりっしょ。俺アニメ見たいから帰りたいんだけど」
「うつけが!」
一連の出来事に子タブンネ達が恐怖したせいで、バケツの中は糞尿に塗れていた。
一穴はそれにも構わずガタガタと震える糞だらけの子タブンネを燃やし、打った。
何度も繰り返し、朝日が昇る頃、バケツはただの肥溜めとなった。
「うっし、子豚もいなくなったしおわりでいいだろ」
青筋を眉間に浮かせる一穴をよそに、比留間は帰宅した。
「お前は・・・清人の星に・・・」
ぶつぶつと呟きながら、一穴もグラウンドを去った。

タブンネを燃やした後はカスをしっかり片付けましょう。
最終更新:2014年08月14日 17:31