タブンネ短篇集「タブ肉質入裁判」

冬を迎えようとしている森の中でタブンネたちは焦っていた。無計画に食べ過ぎたせいで木の実が足りないのだ。
「どうするミィ・・・このままじゃ飢え死にだミィ・・・」タブンネたちが集まって対策を練っていると、一匹のタブンネが叫んだ。
「僕にいい考えがあるミィ!任せるミィ!きっとオボンをたくさん持ってくるミィ!!」
他のタブンネたちはいつも通常の倍は木の実を食べていたそのタブンネに若干の不安を抱きながらも、
一任することにした。
タブンネが向かったのはビーダル達の巣、タブンネは中に入るとこういった「お願いがあるミィ、オボンを半分分けてくれミィ」
するとビーダルは当然「何いってんだ。足りなくなったのは自己責任だろ、帰りな」と返す言葉のないくらいの常識論を浴びせた。
しかしタブンネ「お前たちは何でも食べられるからいいミィ、でもタブンネちゃんは木の実しか食べていないミィ、恵まれないタブンネちゃんに
愛の手を差し伸べるのは当然だミィ」という某国もびっくりのトンデモ理論を持ち出してきた。これにはビーダルも憤慨し、
耳でも噛みちぎってやろうかと身構えたその時、後から声がした。「まあまあ待ちなさい君たち」声の主は長老ビーダル、この群れを仕切っている。
「タブンネが居なくなるのは我々にとっても死活問題じゃないか」長老はそういって若者を諭すと、タブンネへ顔を向け
「どうだいタブンネくん、木の実をわたす条件で、我々と契約しないか?」するとタブンネ「どんな契約だミィ?」
長老は一枚の紙を持ってこさせ「何、簡単なことだ。我々は木の実をやる、君達はそれを春になったら返す。
もし守られなかった場合、君達全員から肉を1ポンドずつもらう。どうだ?」
タブンネは1ポンドの意味がわからなかったのと、どうせ春まで返せばいいミィと安易に考え、軽率にも契約書にサインをしてしまった。

さて春になってもタブンネたちは焦っていた。オボンのみが全然見つからないのだ。
「どうしてだミィ・・・何でないんだミィ・・・」実を言うと、あのあと怒りが収まらなかった
若いビーダルたちが、他のポケモンたちに協力を仰ぎ、タブンネ達に極力オボンのみが行き
渡らないようにしていたのだ。「困ったミィ・・・全然足りないミィ・・・そうだ!オレンのみを混ぜて水増し
するミィ!名前が似てるから絶対わからないミィ!!」タブンネはオボンとオレンを1:9の割合で混ぜて、ビーダルの
巣へと向かった。「ほら、ちゃんと返すミィ」ドヤンネ~顔で拙い工作をしてきたタブンネを見て、
普段は温厚な長老もさすがに堪忍袋の緒が切れた。「貴様!返せないどころか、このような小細工までして
我々を侮辱したな!契約通り肉をよこせ!!」タブンネは動じず「いいミィよ、僕は再生力もちだミィ、ところで1ポンドって
どんくらいミィ?」長老が「約453.6グラムかな」というと「ミッ!それはいくらなんでも無理だミィ!絶対にやだミィ!!」
「ならばポケモン法廷に訴えるまで!!」こうしてタブンネは訴えられた。

~ポケモン法廷~
ポケモン法廷にはたくさんのポケモンが傍聴に来ていたが、その中にはタブンネたちの姿もあった。この判決の如何によっては、
自分たちの肉も切り取られるのだ。
フーディン裁判長「はい原告どうぞ」
クロバット「契約書には間違いなく契約不履行の場合は肉を1ポンド譲ると書いてあり、捺印もあります。
よって、被告に対し肉1ポンドを要求します」
フーディン「被告、何か有りますか?」
タブンネ「その契約書には肉を渡すとは書いてあるミィが、血までとは書いていないミィ!
だからもし切り出す際に血が一滴でも出たら契約違反だミィ!やれるもんならやってみろミィ!!」ドヤンネ~
フーディン「だったら血抜きすればよくね?」
クロバット「だよな」
そう言ってクロバットは部下のゴルバット達に命じ、タブンネ達の首筋に噛み付かせた。
「ミギッ!」
タブンネがそういった時にはすでに遅し、ゴルバット達は吸血段階に移行していた。
「ミビャアアアアァァァァァ」「ミググググ・・・・」「ブヂャアアァァア」法廷内に
響き渡るタブンネ達の悲鳴、それと並行してタブンネの体はどんどん萎んでいく。
そしてついに血を一滴残らず抜き取られると、タブンネの目からは光が消え、そのままばたりと倒れこんだ。
フーディン「判決、原告の勝利ね」
その判決はタブンネの耳には聞こえなかったが、その後キリキザンによってきっちり肉1ポンドを抉り取られた。
これにはビーダル陣営大満足。タブンネ達は肉を切られてもピクリとも動かなかった。
フーディン「ああそうだ、この裁判費用は全て被告側が負担すること、いいね?」
当然タブンネ達は払えない、代わりに追加で肉を20ポンド切り取られた。タブンネは図らずもスリムな体になって
その生涯を終えたのである。

                               おわり
最終更新:2014年08月15日 13:31