スーパーサイズ・ミィ!

ポケモントレーナー達に大人気の「ポケモンフーズ」。
木の実よりも手軽で、保存が利き、ポケモン達も美味しそうに食べているので
利用者も非常に多いこの食品に俺は疑問を持った。
高カロリーなうえ、原材料もいまいちよくわからないものを、ポケモンの大好きな「ポフィン」の味付けでごまかしているのだ。
そして与えすぎると中毒になり、木の実をいやがるようになったポケモンがいるというトレーナーの声も聞いた。
もし、「ポケモンフーズ」を3食毎日与え続けたらどうなるのか、とても気になった俺は離乳したばかりの3つ子のタブンネで実験を試みた。

 --実験内容--
兄ンネ、姉ンネの食事は3食木の実を、末っ子タブンネには3食ポケモンフーズを与える。
食事を与える時間は朝の7時、昼12、夜6時を守る。
食事の際、3匹は個別の食事部屋に移し、他の兄妹が何を食べているかわからないようにする。
食事以外の部屋はすべて共同。部屋にはボールやその他遊具、寝床、トイレ、水飲み場を設置。


一日目
3匹の身体に大きな違いや不調は見られず、みんなで仲良くボール遊びをしていた。
末っ子タブンネだけは喉が渇くのかよく水を飲み、夜間何度もトイレに起きていた。

五日目
この頃より、徐々に変化が見られる。
兄ンネ、姉ンネに比べ、末っ子タブンネの体格がよくなり、動きがより愚鈍になっている。
夜、寝付けないのかモソモソ起きては水をのんでなかなか眠る様子は無い。
そして朝食の時間に起きれず、半分眠りながらの朝食。
朝食後は、昼食の時間になるまで眠り、昼食後もぼんやり座っている時間が長い。
時折、心配した兄ンネたちと一緒に遊ぶが、身体を動かすのが億劫なのかすぐに休んでしまう。

十日目
末っ子タブンネの体はかなり太り、兄ンネ達より15キロ以上の体重増加。
そして不規則な睡眠による情緒不安定の症状が確認できた。
昼食後、いつものように遊んでいた兄ンネと姉ンネに混ざり、一緒にボール遊びをしていた時に事件はおきた。
姉ンネは今までと変わらない強さでボールを投げたのだが、運動能力がガタ落ちしている末っ子タブンネには、取ることができず、
おもいっきり顔面にボールがぶつかってしまった。
尻餅をついた末っ子タブンネに、姉ンネは「ごめんね」というように駆け寄った瞬間、
怒り狂った末っ子タブンネは姉ンネに馬乗りになり、手に持ったボールで何度も姉ンネの頭を
叩き付けていた。
びっくりした兄ンネは必死に末っ子タブンネに「ヤメロ!」と言うようにミィミィ鳴きながら止めに入ったが、
一度怒りのスイッチの入った末っ子タブンネは止まらない。
はじめこそ大声で「ミィィ!!!!ミィィィィ!!」と悲鳴をあげていた姉ンネも、次第に弱々しく
「………ミ………ミヒィ…………」と消えそうな声を出して、その場に倒れた。
すると満足したように寝床に入る末っ子タブンネ。
兄ンネは姉ンネにいやしのはどうをして頭をさすりながら、
末っ子タブンネと離れたところに自分たちの寝床を移動させ昼寝をした。


十五日目
末っ子タブンネに躁鬱状態が確認できた。
昼食後、珍しく昼寝をせず起きていた末っ子タブンネは急に兄ンネや姉ンネにベタベタしだした。
末っ子タブンネの機嫌が良さそうなのでこの日は3匹で鬼ごっこををはじめたようだ。
最初に鬼になったのは兄ンネ。
逃げる姉ンネと末っ子タブンネだが、ちょっと駆け足しただけで末っ子タブンネの息が上がっていた。
末っ子タブンネにタッチするのは簡単だが、すぐ鬼になってはまた怒りだすかもと思った兄ンネは、姉ンネにタッチした。
鬼になった姉ンネもまた、末っ子タブンネを警戒して、すぐ兄ンネにタッチした。
これを見ていた末っ子タブンネは自分が仲間はずれにされてると苛立ち、そばにあった遊具の積み木を投げ出した。
すると、積み木の1つが姉ンネにヒットし、姉ンネはつまずいてしまう。
その隙をついてまたもや末っ子タブンネは姉ンネに跨がり馬乗りになった。
この間よりもさらに太った末っ子タブンネの重さに息をするのもやっとな姉ンネ。
「たすけてぇ!」と言うように「ミィーーーン!ミィミィミィ!」と声をあげるが、末っ子タブンネの怒りは収まらない。
それどころか、この間のボール投げのときの怒りも再びこみ上げ、姉ンネの触角をむんずと掴みひっぱりだしたのである。
さすがに触角は痛かったのだろう。一層大きな声でやめて!!ごめんなさい!と言うように
「ミィィミヒィィィィィィ!!!」と叫ぶ姉ンネ。
やめろ!と怒りながら、なんとか姉ンネの上から末っ子タブンネをおろそうと、
両手で末っ子タブンネを押す兄ンネだが、末っ子タブンネはびくともしない。
やがて、力任せに引っ張った姉ンネの片方の触角が引きちぎられた!
痛みのショックで「ミギャァァァァァァーーーー!!」と叫びながら横たわった姉ンネ。
触角のあった場所からは止めどなく血が溢れ出している。
「ァァァ…ミヒャァァアアァ…ァァァ」と泣きじゃくる姉ンネに必死になっていやしのはどうをする兄ンネだが、
触角が元通りになるわけではなかった。
姉ンネの悲劇はこれで終わりではない。
その夜、触角を失い一晩中泣きつづける姉ンネの声が余程末っ子タブンネの癇に障ったのだろう。
離れた場所にひとり寝ていた末っ子タブンネは、姉ンネのしつこい鳴き声に苛立ち、
姉ンネの寝床に入り込んで片方しかない触角をリードのように掴み部屋をぐるぐる歩き回っていた。
おねがい!やめてちょうだい!と言うように「ピァァァァァァー!!!」と叫ぶ姉ンネだが、末っ子タブンネの力には勝てず、
触角を両手でおさえながら引きずられていた。
一方兄ンネは、なき続ける姉ンネの体を掴んで、引きずるのをとめようとしたが、無情にも綱引き状態になり、
結局姉ンネの残されていた触角がブチンとちぎられて終息した。
姉ンネは気絶し、兄ンネは「とんでもないことをしてしまった」と涙をこぼしながら必死にいやしのはどうを撃ち続けて夜があけた。


二十日目
タブンネにとって触角は、体のバランスをとる役割もしていることが判明した。
姉ンネは両触角を失ったことでまっすぐ歩行するのも、ひとりでトイレに行くのも困難になっていた。
そして「自分のせいで姉ンネは触角を失ってしまった」という罪悪感に苛まれる兄ンネ、
この両者は十五日目以降、極端に食欲が落ち、この日には一日目に食べていた半分の量も残すようになっていた。
方や、ノンストップで肥大化しつづける末っ子タブンネは、小さい足では体を支えきれず自力での歩行が不可能になった。
転がるように這って移動をしてはいるが間に合わず、トイレ以外の場所で粗相をする事が頻繁になり、部屋には悪臭が漂いだした。
当然だが、誰ひとりとして遊具で遊ぶ者はいない。
ヨロヨロ歩きの姉ンネへの罪滅ぼしなのか、兄ンネは姉ンネがトイレのときには手をひいてあげていた。
それをみた末っ子タブンネは、自分には何もしてくれない兄ンネと甘えてばかりの姉ンネが面白くないのだろう。
姉ンネがトイレに向かってるのがわかった瞬間、トイレまで転がって先回りし、長時間トイレに居座り続けていた。
いい加減どけよ!と怒る兄ンネと足をプルプルふるえさせて涙目の姉ンネを「いい気味♪」というように見て、知らん顔をしている。
とうとう間に合わず、お漏らしをしてしまい「ミィィン…ミィィィン…」と鳴く姉ンネの顔を嬉しそうにみる末っ子タブンネ。
どうやら、思うように動かない体へのストレスを『弱いものいじめ』をすることによって発散しているようだ。


二十五日目
兄ンネの体重26.9kg、姉ンネの体重26.2kg、末っ子タブンネ49.4kg
末っ子タブンネの尿や便に血が混ざっていることを確認。
また、トイレで吐いている姿も時折見るようになった。
姉ンネは寝たきりになり、兄ンネは、姉ンネを心配して背中をさすったり、頭を撫でたりしている。
末っ子タブンネのストレスのはけ口はいつもは姉ンネに向けられていたが、この日は様子が違った。
いつもそばでわめく、邪魔な兄ンネを消す事を考えたようだ。
兄ンネが用を足してる隙を見て、末っ子タブンネは背後から遊具の積み木を兄ンネ後頭部にむかっていくつも投げつけた。
いくつかの積み木が脳天を直撃したことに加え、ここ数日の体重減少のせいで兄ンネはその場に倒れ込んでしまった。
そして、すぐに起き上がれない兄ンネの耳をおもいっきり齧りついたのである。
やめろ!!というかのように「ミィィ!ミィィ!」と鳴く兄ンネ。
今までの兄ンネだったら、抵抗もできただろうが、なにぶん体力の落ちていた兄ンネにはなす術も無く、
大きくてチャームポイントのひとつであったタブンネの耳とはほど遠い、虫食いだらけの葉っぱのような無惨な耳になっていた。
糞尿まみれで耳もボロボロの兄ンネだったが、姉ンネを守れるのは自分しかいない、
そうおもって立ち上がろうとするが、ゴロゴロと勢いをつけて転がってきた末っ子タブンネの全体重をもろに
受け、「ミヒャァ!」という叫び声を上げ、兄ンネは跳ね飛ばされた。
宙を舞う兄ンネの体は、すさまじい勢いで床に叩き付けられ、いわば瀕死状態だった。
翌朝、兄ンネの体は冷たくコチコチになっていた。



三十日目
兄ンネ死亡、姉ンネの体重25kg、末っ子タブンネ50.1kg
最愛の兄ンネを失い、姉ンネはひたすら寝床で震えながら耳をおさえ泣く日々を送っていた。
姉ンネの弱々しい鳴き声が大嫌いな末っ子タブンネは、姉ンネの声が聞こえだすと長方形の積み木を手にもち、
姉ンネの頭や体ををバシバシ叩きつけていた。
這ってトイレに向かう姉ンネの前に遊具をばらまいて、トイレまでの道を塞いだり、
わざと、姉ンネの寝床をトイレがわりにしたりとやりたい放題だった。
もはやはじめの頃の「仲良し兄妹」の姿はない。
それどころか、末っ子タブンネは姉ンネのことを姉、家族と認識できなくなったようにうかがえる。
姉ンネは早くおにいちゃんのもとにいきたい…という思いが強いのか、この5日間ほとんど木の実を食べていない。
水もほとんど摂っておらず、毛並みがボサボサで青い瞳も濁り、鳴き声をあげることも少なくなった。
一方、末っ子タブンネは、30日目にして肉体の限界に達したようだ。
うまく呼吸ができないのか、何もしていないのに急に深呼吸をしだしたり、脂汗をかくようになった。
転がることも心臓の負担になるのか、寝床で仰向けになり「ヒュゥ…ヒュゥ…」と音をたてて呼吸している。

数時間後、姉ンネが、そしてその姉ンネを追うようにして翌日末っ子タブンネが死亡した。


俺は「ポケモンフード」が及ぼす健康被害を目の当たりにし、大切なポケモン達を守るため、
このデータをポケモン研究室に提出した。
一ヶ月後、俺の実験結果が認められ、このメーカーのポケモンフードは販売停止となった
最終更新:2014年08月15日 13:34