***
バラの香りのシャンプーで体をきれいにしてもらって、タブンネにピッタリのかわいいベッドで眠ったらすぐに朝になったんだ。
朝食はタブンネだけみんなより大きなオボンの実。
今日からおしごとするからいっぱい食べなきゃね。
他のタブンネさんはまだ緑がかった熟してないオボンの実をたべて、お外に出たよ。タブンネもついてくとおそとにご主人様が立ってたの。
畑にタブンネさんが一列に並んでて、そのタブンネさんたちの子どものタブンネちゃん達はお外にある水がたぷたぷに入ったプールの中にシビルドンさんと一緒にひとまとめに入れられてたの。
きっとシビルドンさんは保母さんなのね。
あれ?でもみんな目をつぶって震えてるミタイ。
ご主人様は大きな声で、
「タブンネ共、あなをほれ!」
そのかけ声に大人のタブンネさんたちは一斉に畑に潜ったよ。
肉体労働してご主人様に恩返しするんだね。タブンネは
ナースさんでよかった。
穴をほりながら畑をたがやしてるけれど、みんな次第に疲れてきてペースが落ちちゃってきてるみたい。
すると、ご主人様は穴をほっていたタブンネさんたちがみている前で、子どもタブンネちゃんたちがいるプールのほうに向かって、
「シビルドン、放電だ!」
っていったの。
え?!そんなことしたら…
チビちゃんたちは…
「ミギャァァァァァ!!!!!!!」
「ピヒャァァァァァァァァァァ!」
ち一斉に悲鳴をあげたの!
もちろん大人タブンネさんたちも「やめてぇぇ!!!子どもだけは…!」って泣きながらさけんでる。
子どもタブンネちゃんたちはシビルドンさんの放電でおててやあんよがピリピリしびれてるみたい!
するとご主人様は、
「働かざる者食うべからず!しっかり耕せ!」
って怒鳴って、また大人タブンネ達に穴をほらせたの。
ご主人様…こわいよぅ…
タブンネはチビちゃんたちにいやしのはどうをしてあげたけど、みんなまたすぐに震えちゃってるの、どうしよう…どうしよう…
いやしのはどうじゃ、体力は回復してもまひはとれないんだ!
どうしよう…うまく泳げなくて溺れかけてるチビちゃんがいっぱいいるの!
「ミィバァ!」「ミボッ!」「ミュヒ!」「ミィビ!」「ミバァ!」「ミ!」「ミ!」
あちこちで溺れたチビちゃんたちの悲鳴がこだましてる、なんとかしなくちゃ…
一番手前にいた沈みかかったチビちゃんを抱きかかえてタブンネが微笑んであげたの。
そうしたらタブンネのいやしのこころでしびれがみるみるとれたみたい!ヨカッタ。
すると他のチビちゃんたちも「わたしも!わたしも!」っていうようにタブンネのほうに手をバチャバチャさせてるの。
「ちょっとまってねぇ」って声かけながらひとりずつ抱き上げようとしいたんだけど、ご主人様がタブンネの腕をギッチリにぎってるの!
なんで?!早くしないとチビちゃんが…
「タブンネちゃん、みんなでせっかくプールで遊んでるんだから邪魔しちゃダメだよ!ほら、いますぐその子をプールにもどしなさい!」
って命令するの!そんな…この子たちは苦しんでるんだよ?今プールに戻したら…
「あれ?言う事聞けないの?じゃ、タブンネちゃん、ナース失格だ!あいつらと一緒に穴ほりしてもらおうか…?!」
そういってニヤって笑うの…いやいや!タブンネはママとおんなじナースさんでいたいの、穴ほりなんてムリ…。
タブンネはさっき救い上げたチビちゃんをそっとプールに戻したの。
チビちゃんは「やーー!プールやー!ママーーパパーー!」って泣いてるの。
ごめんね…。
背後からは大人タブンネさんたちの怒鳴り声があちこちから聞こえてくるよ…。
「やめて!プールにもどさないで!死んじゃうじゃない!」
「なんで全員助けてやらないんだ!ナースだろ!」
「いやしのはどうのせいで苦しむ時間が増えてるだけじゃないのか!」
みんなみんなタブンネを責めないでよ…タブンネだって苦しいの…。
「さすがトクベツなタブンネちゃん!主人の言う事をちゃんと聞いて、エライね。」
そういってご主人様は笑顔でタブンネの頭をナデナデしてくれたけど…。
大人タブンネさんたちはタブンネのことみて睨んでる…こわいよぅ…。
ご主人様は、
「今から2往復!遅かったヤツのガキにシビルドンの放電を再度くらわす!ガキの為にもしっかり耕せ!!」
ご主人様の言葉を合図に一斉に大人タブンネさんたちは穴をほりだしたの。
パパタブンネさんたちは早いけど、ママタブンネさんたちはみんな1往復終えたあたりでヨロヨロしてるみたい。
タブンネはいやしのはどうをつくってみなさんに届きますようにって気持ちを込めて投げたんだけど、ご主人様が…
「ナースタブンネちゃんからのプレゼントで元気になっただろう!もう1往復追加だ!しっかり働け!」
って叫んだの!そんな…大人タブンネさんたちは一様に「余計なことすんなよな、ナースタブンネ!」っていう顔でタブンネをひと睨みしてまた穴を掘り出したの…。
タブンネは…タブンネは…みんなの疲れをいやしたかっただけなのに…。
3匹のママタブンネさんだけがまだあと1往復残ってる。
がんばって!タブンネは見守るしかできなかったの。
ママタブンネさんは最後になるまいと必死、なってるけど結局全員同着だったの。
この場合は全員シビルドンさんの放電はなしなのかなっておもったら…
「なさけない、お前らの仲間はこんなに愚鈍なのか!あきれたぜ。バツとして、連帯責任で全員のガキに放電だ!
文句あるならこいつらに言え!シピルドン、放電しろ!」
そ、そんな!!みんながんばってたのに…。
シビルドンさんはチビちゃんたちに無関心みたいで平気なカオで放電したの!
「ミギャァァァ!」「ピィヤァァァァ!」「ミュヒィィィィ!」
チビちゃんたちの悲鳴は畑じゅうに響き渡り、その声を聞いた大人タブンネさんたちも、
「イヤーーー!」「まだ、まだ赤ちゃんもいるのよ!」「やめてーーーー!」「心臓が破裂しちゃうわー!」
って叫びながら、土の上で気を失ったり、倒れたたりしてる!
タブンネのいやしのこころは張り裂けそう…。
ご主人様は、
「さ、ガキタブンネと親タブンネのケア、ヨロシクネ。」
そう言い残してシビルドンさんとどっかいちゃったよ、そんな…。
ひとまずタブンネはチビタブンネちゃんたちをまずプールからひきあげていやしのはどうをしたけれど、タブンネのいやしのこころじゃ、しびれがとれない子もいたの。
どうしよう。お薬もないし…くすん。くすん。
大人タブンネさんたちにもいやしのはどうをしてあげたけれど…。
気がついてタブンネが微笑みかけてもプイッてするの…なんでなの?
プールの外で「ミシュン!」「ミシュン!」ってくしゃみしてるチビちゃんたちをつれてみんなお家に帰っていったけど、誰ひとりタブンネに「ありがとう」っていってくれるひとはいなかったの。
タブンネのママはいやしのはどうをしてあげるとみんなに感謝されてたのにナ…。
***
夜になってお布団で寝ていたけど、タブンネさんたちの声が聞こえて目が覚めたの。
窓のそとをのぞくとトラックが止まってたけど…あれは?
ご主人様と知らない人間の声が聞こえてきたので耳をすましてみたら、
「この4匹は筋肉と脂肪のバランスがちょうどいい頃かな、これ以上育つと肉質が落ちる。今が一番だな。」
「いやぁ~、ここのタブンネは本当に素晴らしいです!野生のタブンネでは到底つかない筋肉と、それを包む脂肪!
この脂肪も良質な木の実を食べないとできませんからね!フーズじゃ薬臭くてありゃダメだからなぁ。助かります。」
その二人の会話を聞いてる4匹のタブンネさんたちは
「子どもがいるの!」「いやーーー!赤ちゃんとはなれたくない!」「おねがいだから、逃がしてくれぇ!」
と叫んでる!お外のトラックはもしかして………。
「じゃ、高値で引き取らせていただきます。」
そういって4匹に催眠術をかけてトラックに運びだしてしまったの!
そんな、そんな!
その4匹の子どものタブンネちゃんたちにご主人様は、
「一生、会う事はないんだ、最期に声でもかけてやれ」
というと、チビちゃんたちは一斉に
「ママーー!ママー!」「パパいかないでぇ!」「ママー!」「パパおきてぇ!」
って泣きながら必死になって叫んでるの。
タブンネはキュッとお耳をふさいで目を閉じたけどポロポロ涙がこぼれてくるの。
チビちゃんたちの鳴き声はいつまでもいつまで続いていて、苦しいよぅ。
ピカっとライトがついてトラックが走り去ってもチビちゃんたちの鳴き声はやまないまま朝を迎えちゃったの…。
***
ご主人様の畑は、半分がオボンの実が植えられていて、残りの半分は何も植えていない畑。
今日はオボンの実のなってる畑のほうでお仕事するみたい。
大人タブンネさんたちは夫婦一組でカゴを持たされてる。
チビちゃんたちはそれぞれの子どもごとに瓶にいれられているの。一応小さな空気穴はあるみたいだけれどみんな苦しそう…。
昨晩親を失ったチビちゃんたちは、
「親のかわりに今度はお前らが畑にでろ!」
といわれてちいちゃな体で畑の方に向かわされてるの…。チビちゃんたちの中にはまだヨチヨチ歩きの子もいるのに…。ご主人様は、
「カゴにオボンの実をありったけつめろ。一番少なかったヤツの子どもは、瓶の中にスカタンクのどくガスをまく!
昨日親ナシになったチビどもは10個以上とれなかったらオマエらも瓶づめにしてどくガスだ!いいな!」
その言葉を合図にみんな一斉にオボンの実の採取をはじめたの。
大人タブンネさんたちは我先に実をむしりとっていくけど、チビちゃんたちは採ろうと手を伸ばすとすぐ他の大人タブンネさんたちに採られちゃって結局1つしかカゴにいれられなかったみたい。
「ごめんなさい!」「やーーー!やーー!」と泣きわめくチビちゃんたちをご主人様はスカタンクさんといっしょに瓶にいれ、
「スカタンク、どくガスだ!」
といって命令したの!チビちゃんたちは走り回って体力もおちてるのにスカタンクさんのどくガスでみるみる青い顔になっていっちゃってる!
しんじゃう…このままじゃしんじゃうよ!
「…ッミ…ミ……」「ミヒュ…ミヒュゥ…」
チビちゃんたちのうめき声がタブンネのアタマの中でサイレンみたく鳴り響くの…
タブンネは瓶越しにいやしのはどうをするけれど、ガラスが邪魔してチビちゃんたちに届かないよぅ…。
せめてタブンネのいやしのこころでどくがとれれば!っておもって瓶にすがりついたけど、タブンネの思いは届かなかったみたいでチビちゃんたちは瓶の中で折り重なるように倒れていったの…。
この子達には心配してあげるひとがタブンネしかいないのに…タブンネなにもできないよ…。
どんどんどくがまわりだして、瓶の中のチビちゃんたちの心臓の音、弱くなっていってるの!しんじゃう!しんじゃうよう…!
ご主人様が全部の瓶のふたをあけてくれたけど、どくが回ってるチビちゃんたちだけは起き上がってくれないの…。
いやしのはどうをしても、すぐにまたぐったり…。
ご主人様、おねがい、お薬あげてちょうだいよぅ…って涙目でご主人さまの足元にすがりついたけど、
「それはキミのおしごとだよ。いやしのこころがちゃんと発動したら、どくは消えるだろう?がんばって!」
そういって他のタブンネさんたちとお部屋に入って行ったの。
ご主人様、この子たちにはママもパパもいないのよ…。
タブンネはなきながらいやしのはどうを撃ち続け、なでなでしてあげたけど。
4匹中、1匹の坊やだけは回復してくれなくてそのまま冷たくなっちゃったの。
タブンネ…ママみたくみんなを治せないよ…ママ、お知恵をかしてほしいよぅ。
冷たくなっちゃった坊やをタブンネのお部屋にコッソリつれていってタブンネはいっぱいいっぱい泣いたの…。
サファイヤみたいなタブンネの自慢の瞳はルビーのように赤くなっちゃった…。
***
ご飯の時間だけど、タブンネはお部屋を離れるわけにはいかなくてご主人様のノックを無視してたの。
でもそんなタブンネの様子にご主人様は気付いたみたい…。
ドア開けられないように必死になって手でおさえたけど、ご主人様の力には勝てなくてお部屋にはいってきちゃったの。
どうしよう…
「タブンネちゃん、この子、冷たくなっちゃったねぇ。どうしてかな?」
ご主人様の声がいつもと変わらず優しい。タブンネは上目遣いして涙をポロポロこぼしながらご主人様を見つめたの…。すると、
「タブンネちゃん、ナースさんのお仕事、いやだったのかな?」
って。タブンネは首を横にふってちがうちがうってしたけれど、
「大事な大事な子タブンネちゃん、死なれちゃ困るんだよね…」
わかってる!タブンネだって坊やに生きていてほしかったの!だけど…
「そうだ、僕ね、明日誕生日なんだ!僕にも、バースデータブンネ、手に入るんだ。キミみたいな無能な子じゃないといいんだけどね。」
え……どういうこと…?それじゃナースがふたりになるの???
タブンネがオロオロしてると、
「同族を殺すようなナースじゃ困るから、キミは明日から畑に出てもらうし、この部屋も新しいバースデータブンネちゃんのお部屋にするから、とっとと出てけ!」
そんなそんな、まだタブンネ、新米ナースさんだよ?イヤイヤ、ナースさんでいたいよぅ!
ご主人様にすがりついたけど、ご主人様はタブンネのあたまにちょこんとのってるナースキャップを強引にはずして
「キミはもう、トクベツなタブンネじゃないんだよ」
っていってタブンネをお部屋から引きずりだしたの。
いやぁ、タブンネのナースキャップ、タブンネのなのにぃ!!!!
泣きながらお部屋を追い出されたタブンネは他のタブンネさんたちのお部屋に入れられたの。
とてもせまいへや。周りを見ると、みんなタブンネに背を向けてる。
タブンネも仲間にいれてよ…。
さっき助けたチビちゃんがいたからニッコリ笑ってみせたけど、
「おにいちゃんを殺しといてヘラヘラすんなよ!」
っていって他の大人タブンネさんたちの中にはいっていっちゃったの。
くすん…タブンネたすけてあげたのに…坊やのことだって助けようと一生懸命だったのに…。
タブンネが泣いてると、体格のいいママタブンネさんが、
「子どもがやっと寝たのに、アンタの鳴き声でおきちゃったじゃないの!そんなんだからナースもクビになるのよ!」
そう怒鳴ると、他のタブンネさんたちも「そーだ!そーだ!」っていってタブンネを笑い者にしたの。
息ができないくら悲しくてつらくて、いやしのこころが粉々にくだけちゃいそう…。
タブンネはバースデーリボンをキュッて握りながら、みんなの笑いが止むのを待つしか出来なかったの。
窓の外からその様子をみていたご主人様はすごく嬉しそう。
なんで?タブンネが仲間はずれにされてるのに…。
***
ご主人様はタブンネの大事な「いやしのはどう」を忘れさせて「あなをほる」を覚えさせたの。
またタブンネのちいちゃなおててからはあのあたたかくてやさしいはどうはでなくなっちゃってる…。
他にも「ふぶき」や「あまごい」「にほんばれ」をおぼえさせられて、タブンネさんじゃないみたいだよ…くすん。ご主人様の、
「ようし!穴をほれ!」
を合図に穴を掘り始めたけど、目や口に土がはいって気持ち悪くてすぐに地上に顔出しちゃった。その度にご主人様は、
「勝手にやすんでんじゃねぇ!」
っていってタブンネのあたまを土の中にグイッて押し込むの!
ケフン!ケフン!土が鼻にはいってくるしいよぅ…。
そんなタブンネの姿を他の大人タブンネさんたちは嬉しそうに見て、わざとタブンネのほうに土がかかるように掘ったりするの…。
どうしてこんなひどいことするの?タブンネはナースさんじゃやなくなっちゃってすごく悲しいのに。
ご主人様は
「新しい穴ほりタブンネちゃんが全然はたらかないから、連帯責任!タブンネ、にほんばれしろ!」
タブンネはご主人様がこわくて震えるお手で初めて「にほんばれ」をしたの。
そしたら天気が燃えるように熱くなって立ってるのがやっとなくらいのカンカン照りに。
チビちゃんたちはちいちゃなビニールハウスの中に入れられていて、遠くから、
「あついよー!あついよー」「お水ほしいよー!」「ハァ…ハァ…」
っていう声が聞こえてくるの。大人タブンネさんたちはみんな
「おまえのせいで子どもが死んじゃうじゃない!」
「自分は子どもがいないからって平気な顔してんじゃねぇよ!」
っていってタブンネのほうにドロダンゴをベチャベチャなげつけてくるの…。
タブンネ平気な顔なんてしてないよ?
おねがいやめてちょうだい!みんなのココロがトゲトゲしていてタブンネ、悲しいよぅ。
ご主人様は、
「3往復!!一番遅かった奴に全員でおうふくビンタだ!」
そのかけ声でみんなまた穴をほりだしたの。
タブンネも頑張ったけど、うまく進めなくて結局ビリになっちゃって…。
それからおうふくビンタをいっぱいされたけど途中で意識を失っちゃって気付いたら、夕焼けの畑の中にひとりでいたの。
目が覚めなければよかったのに…。
***
お部屋に入ると、バースデーリボンをつけたご主人様のバースデータブンネがいたの。
あ、タブンネのいもうとなんだね。タブンネは泥だらけのリボンを手で払ってみせてあげたけど、その子はタブンネのことみて悲しい顔をしたの。ご主人様が、
「あの子、お姉ちゃんたちに意地悪して、元のご主人様に捨てられたキミのおねえさんだよ!」
って言ったの!そんな…ひどいタブンネなんも悪いことしてないよ?
タブンネは、
「そんなことしてないよ!信じて、お姉ちゃんの事信じて!」
って訴えたけど、いもうとタブンネは、
「ジョーイさんもママもボロボロのリボンみて泣いてたもんタブンネも悲しい。」
そういってポロポロ泣き出しちゃった!え!
「いもうとちゃんは優しくていいこだね、やっぱりナースさんにピッタリだ!」
その言葉をきいたいもうとはニコって笑ったの。
みんなタブンネのこと仲間はずれにするって思ったらタブンネ悲しくて、こっそりこのお家を出ようと決心したの。
ゆっくりゆっくり扉をあけて…見上げたらお月さまがタブンネにニッコリ微笑んでくれたよ。
ここを出て、ひとりで暮らすの、寂しいしこわいけど、きっとタブンネのこと大事にしてくれるひといるはずだもん、だいじょうぶ!
って思ったのに、お外には見張りのヨルノずくさんがいっぱいいて、タブンネのバースデーリボンのエンブレムがキラッて光っちゃったから見つかっちゃったみたい!
ヨルノズクさんたちの空気のやいばがタブンネの体中を切り裂くの!
いやいやいやぁ、タブンネの体ボロボロなんだよ?やめてぇぇ!!
タブンネの声を聞きつけたご主人様がやってきて、
「そんなに走りたいなら、明日はタブンネちゃんひとりで耕してもらおうか。」
そういってタブンネの尻尾を掴んで引きずりまわしたの。
いやぁぁ!タブンネ今ケガしてるのに!バイキンが傷口からはいっちゃうよぅ…
う…う…
タブンネ自慢のベビーピンクのカラダは汚れたぬいぐるみみたくなっちゃったよ…。
ツヤツヤな毛並みだったのに…
***
朝になってタブンネだけが畑に立たされたの。
他のタブンネさんやいもうとたちはご主人さまのうしろに並んでタブンネをみながら笑ってる…。
タブンネ、体中がボロボロなのに…立ってるのがやっとなのに…今すぐママにいやしのはどうしてもらって、あったかいブランケットに包まれながらねんねしたいのに…。
「今日はお前ひとりで畑を耕すんだ。お前はグズだから待ってたら夜中になる。だから、お前のあと追うように後ろからマンムーが歩く。
モタモタしてると踏みつぶされるから覚悟しろ、いいな。」
後ろをふりむくと目の周りが青くて大きなマンムーさんがのしのし地ならしをしてるの。
こわい、こわいよぅ。
「タブンネ、穴をほれ!」
う…ケホケホ…。土が目に入っていたいよぅ。傷口に土が入ってしみるよぅ。お耳の中にもドロが入ってきて気持ち悪いよぅ……。
でも、タブンネの後ろから地鳴りのような音をたててズシンズシンってマンムーさんがくるの。
いや!いや!土の中で死んじゃうなんて…。
苦しくて息つぎに顔を出したら、すぐ後ろにマンムーさんがいて、あわててまた土の中に入っちゃったからうまく呼吸が出来なくて苦しいよぅ…。
たすけて!ママ…ジョーイさん…
苦しくてミパッ!って息つぎに顔をあげたらマンムーさんの足がタブンネの体全体にのしかかったてきたの!
いやぁぁぁからだ…タブンネのカラダ…バラバラになっちゃうよぉ…………
目をさますといもうとがいやしのはどうをしたあとみたいでなんとか起き上がる事ができたの。でも…
「ようし、マンムー、畑で頑張るタブンネにふぶきだ!」
そのかけ声でタブンネにむかって冷たい冷たい雪が突き刺さるように吹いたの!
イヤァ…手が、手がカチコチになってるよぅ!タブンネのピンクの毛はつららみたく固まってるし、畑も固く冷たくなっちゃってるよ。
「タブンネ、穴をほれ!マンムーおいかけろ!」
タブンネが地中に入ろうとしたけど土がかたくてほれなくて…
タブンネは何度も何度もマンムーさんに押しつぶされて、
その度にいもうとのいやしのはどうで起こされて…またつぶされての繰り返しで、
タブンネの体はまっすぐに歩く事もできないし、指先の感覚もないの…。
ぐすん…。ぐすん…。
かわいいピンクの肉球はつぶれていびつに変形してる…ポケモンセンターのみんなにナデナデされてたハートの肉球…くすん…。
大事なリボンはマンムーさんにつぶされちゃってエンブレムがボコボコになっちゃったの。
うう…タブンネ…なんでこんな目にあわなきゃいけないの…。
幸せになりたいだけなのに…。
ご主人様は畑の中で泣いてるタブンネの方にむかって歩いてきた。
今度はなにするの!?
真っ赤なプレシャスボールをもってタブンネの顔を覗き込んで、
「キミにひとついいことをおしえてあげよう。キミは自分はなんでこんなに不幸なの?
って思ってるみたいだけど、その答えはひとつしかないんだよ。」
「それはキミが運がないだけ、ただそれだけなんだ。キミに限らず、
ポケモンはみんな運次第で幸せになるか不幸せになるかきまるんだ。
ジョーイさんの子どもだからトクベツなんてことはないんだよ。
現にキミは最初のトレーナーに捨てられたね。
もし、産まれてくるのが双子のいもうとより遅ければ違ったかもしれない、
キミの個体値が優秀だったら捨てられなかったかもしれない。」
「それから、バースデータブンネは誕生日を迎えたひとに贈られるタブンネなんだ。
だから他のひとが主になったって、その主が誕生日を迎えたら、主の為のバースデータブンネがあらわれる。
最初の主に捨てられたタブンネはがんばったって一番大事にされることはないんだよ。
キミのようにね!」
「あ、トラックがきた。唯一キミのこと必要としてくれる人が迎えにきたよ」
あれは、あれはいつかきたトラック…そんな、そんな…
いやぁぁぁあ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
END
最終更新:2014年08月15日 13:38