「お兄さんどうミィ、チケットあるミィよ?」
道を歩いていると一匹のタブンネが話しかけてきた。手にはチケットを持っている。
周りのポスターなどから推測するにどうやら「ミィミィミュージカル」という
出演者が全員タブンネという不快極まりないミュージカルのチケットらしい。
一体誰に需要があるのか。それにこのタブ屋の儲けは愛護団体へ行くので警戒も厳しいのだが、
やはり大きなイベント前となるとこうして虫のように湧いてくる。
「タブンネちゃんたちの楽しいミュージカルミィ、残り僅かミィよ、でも安くしとくミィ」
嘘つけ、開演一分前でも余裕で一等席が取れるくせに、しかも高ぇ、普通のミュージカルの二倍はしやがる。
まあミュージカル自体も一部のものしか知らないが愛護団体主催、しかも愛護団体は財政が火の車だから
こんな詐欺みたいな値段なんだろう。こんな物を買う奴がいるのかと思って周りを見わたすと、
当然一般販売口に人はなし、代わりに同じようなタブ屋が通行人につきまとっているのが見える。
「ミッ!」
あっ!一匹が通行人にすてみタックルをかましやがった!そう、タブ屋はよくこのような強行手段に訴える。だがそんな奴らがただで済むわけがない。
「やりやがった!よし確保だ!」
すてみタックルを食らった歩行者が叫ぶと、待っていたかのように周りの通行人がタブ屋に走って行き取り押さえた。
「ミッ?!ミィミィ!ミャァァァァ!」
驚いたタブンネが暴れるがただその贅肉が踊るだけで無駄だった。
「残りも確保だ!」
先程の通行人がそう言うのを確認すると、私はすかさず目の前で呆けているタブンネを取り押さえる。
「ミッ?!」
いきなりの出来事にタブンネの体は固まってしまった。私は腰からネストボールを取り出しタブンネを捕まえた。
「違うミィ!なんにもしてないミィ!!」「見逃してくれミィー!!」「関係ないミィ!!」
周りではタブ屋が次々と通行人に捕まっていく。もうお解りだと思うが、ここにいる通行人の殆どは捜査員だ。
愛護団体による過激活動と見境なく増えるタブンネに業を煮やした御上はまず資金源を潰すことを決めた。このタブ屋掃討もその一つだ。
「やだミィ!痛いミィ!連れていかないでミィ!」
ボールが足りなっかたのか、耳を捜査員に引っ張られ連行されるタブンネが喚いていた。
所詮タブ屋などやっているタブンネは下っ端だが、そんな下っ端にもやってもらわねばならないことがある。
他のタブンネをしょっ引く口実作りだ。
その後、捕まったタブンネにミュージカルと愛護団体との因果関係や、収益の流れ、アジト、資金の調達方法、
それにともなう違法行為等を例え知らなくても無理やり吐かせ、タブ屋はもちろん、ミュージカルに出る予定だった
タブンネやアジトでせっせと仲間を増やしていたタブンネなどありとあらゆる愛護団体と繋がっているタブンネを
捕まえては即決裁判の後、極寒の「タブンネ専用収容所」へと送った。
「助けてミィーーー!」
収容所へと向かうトラックにギュウギュウ詰めにされ、涙を流し運ばれていくタブンネの悲鳴を聞くと捜査の疲れも一挙に吹っ飛ぶ。
あのタブンネたちにはもう会えないだろう。
おわり
巷で話題の「ミィミィミュージカル」あまりの酷さに週刊誌でも取り上げられた。
それならどんなもんかと行ってみたのだが・・・概ね評判通りだった。まず値段、通常の二倍はやりすぎ、
一体何に金がかかっているのか。劇場内はガラガラ、しかも全員俺みたいなゲテモノ食いの奴らでまともに観ていない、
まあそんな価値があるとは思えないが。
さて本題のミュージカルとはいうと・・・酷かった。ただタブンネが多いだけ、逆にそれが癪に障る。
しかも練習していないらしく動きはバラバラ、途中でふてくされてやめる奴もいた。おいおい。
衣装もどいつも勘違いした服装で目が痛い、何着てもタブンネはタブンネだろ。俺が特に驚いたのはミュージカルの中盤、
最前列の一等席に俺と同じような目的の奴が菓子を食いながら観ていたのだが、なんと舞台上からタブンネが降りてきて菓子をたかりやがった。
しかも一匹それを始めると次から次へと降りてきてついには菓子を強奪してミィミィ言いながら舞台上で食い始めた。
これには俺も我慢できずなにか投げつけてやろうかと思ったその時、突然舞台の上手から十数人の男が出てきて菓子をむさぼるタブンネたちの耳を引っ張り
巨大な檻へと入れていった。劇場内に響く「ミィミィミィ!!」という悲鳴、この展開にはさすがの俺も唖然、呆然。
そのままミュージカルは閉幕となり、幕の向こうではタブンネたちの「ミィヤーー」という悲鳴が何度も聞こえてきた。
結局チケット代は帰って来なかったが、ミュージカル最後の捕まったタブンネの表情が最高に面白かった。
最終更新:2014年08月15日 13:48