葬式タブンネ

小雨が降りしきる中、私は自転車を走らせていた

数日前、フキヨセシティの害獣駆除業者が総出で、タブンネの群れの駆除を行った
この近辺で大規模な繁殖を繰り返していたタブンネによる被害件数が多く報告されたからである

公道に糞尿を垂れ流したり、旅人を集団で襲い荷物を奪おうとしたり
挙句の果てには街まで降りてきて、ビニールハウスの作物を略奪しようとする始末だ

タブンネというポケモンは総じて、粗野で下劣で身勝手な性格を持つという
一度人間に可愛がられれば、自分が世界で一番偉い存在だと増長する
一度人間の食物を口にすると、汚い欲望を剥き出しにして、何度でも奪いにくる

その性格を考慮し、駆除作戦は速やかに可決された

成体の♀は食用タマゴを生産する価値があるため、手足を切断して食品センターへ
幼児の個体は食肉加工されて、ホドモエの冷凍コンテナを経由してイッシュ全土に送られる予定だ
尚、成体♂の半数は強制労働施設へと連行したが、残り半数は群れを見捨てて一目散に逃げ出した

駆除から三日が経ち、空中から哨戒を行っていた鳥ポケモンから、タブンネの残党を発見したと報告を受けた
私がこの雨の中、わざわざ自転車を走らせているのはこのためである

タワーオブヘブン
寿命や病気で亡くなったポケモンを供養する慰霊塔である

塔の裏手の林に、コソコソと身を隠すタブンネを数匹発見した
私はそのまま、身を屈めて様子を伺う

タブンネは何か、石段のようなものに泣き崩れてているようだ
あれは・・・・・・慰霊碑だろうか?

一目見れば石や廃材を重ねたただのガラクタの山にしか見えない
ただ、よくよく見れば均等が取れた形をしている

周りには街の花壇から乱暴に毟ったと思われる、色とりどりの花
おそらくビニールハウスからの盗品であろうオボンの実が数個、備えられている

『ミィ~ ミィ~ ミィ~』

タブンネが一列に並び、耳障りな歌を垂れ流す

これらの様子から察するに、葬儀であろうか
子供のタブンネがスッポリ収まるような木の箱が、数個並べられている

おそらく、人間が行う葬儀という文化を、見様見真似で再現しているのだろう

・・・・・・ふざけるな
奴らは、散々好き勝手に無計画な繁殖を繰り返し、街を襲った!
街の女子供や老人にだけは強気に出て、怪我まで負わせた!

奴らの巣穴に突入して、駆除を行ったときの光景を思い出す
武装し駆除班を見た途端、奴らは媚びた笑みを浮かべて命乞いをしていた

掌から血が染み出るほどに拳を握り、私は怒りを堪える

「もしもし、私です。害獣共の生き残りを見つけました」

私はすぐさま、本部へと連絡を入れる
待っていろ害獣共。同族の弔いなど、俺は絶対に許さない


本部から到着した駆除班は、速やかに装備を整えると、茂みの中から躍り出た
私もそれに続く

『ミィ~ ・・・・・・ミィィィィィ!?』
合唱していたタブンネ共が驚き逃げ出そうとするが、一匹残らず、小銃で足を撃ち抜かれた

這って逃げようとしたため、班員総出で一通り痛めつけておくとしよう

『ミボォ! ミッ、ミッ・・・』
硬い地面に叩き付けられたタブンネ共は血を吐き出しながら呻いている
更に念を入れて、腱をズタズタに切り裂いておいた

動けないタブンネ共に見せ付けるよう、即席の慰霊碑を足蹴にする

『ミアアアアアアア!!!!!』
タブンネ共は突然、火がついたように怒り出す
なんて醜い顔をしているのだろう、反吐が出る

こんな性悪で知性のカケラもない下等生物が、人間の文化を真似ようなど
なんて胸糞の悪いことだろうか

怒りに身を任せたまま、積まれていた石や蝋燭を蹴飛ばし、メチャクチャに荒らす
慰霊碑は、既に原型を留めていなかった

泣き叫びながらジタバタともがくタブンネを無視して、並べられていた木箱を開けた
私の予想通り、子タブンネの死骸がある

駆除の後始末から逃れたものだろう
散々痛めつけられた形跡があるものや、心臓を潰されて即死したものと様々だ

ところどころに修復跡がある
死骸に対して、必死に癒しの波動をかけたのだろう
少々、歪な色と形をしているが、子タブンネとしての原型を留めていた

白いパウダーと頬紅で、大雑把な死化粧らしきものまで施されている
勿論、これも街からの盗品である

その様子が、ますます私を苛立たせた
木箱を乱暴にひっくり返し、死骸の顔面に何度も、何度も、蹴りを入れた

『ビャアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!』
涙や鼻水を垂れ流しながら泣き叫ぶタブンネ共に、変わり果てた死骸を晒す
眼球や脳漿が飛び出し、グロテスクな赤色に染められている
まるで潰れたトマトのようだ

これだ。害獣の死に様はこうでなくてはいけない
一片足りとも、慈悲など与えはしない

残ったタブンネ共にも死んでもらう
当然、楽には死なせない

班員たちが金属網でタブンネ共を捕らえ、連行する
さあ、街へと帰ろう

襲撃から一ヵ月後、フキヨセシティはもとの平和な街へと復興ていた
街は以前と同じように活気付いている

滑走路脇のビニールハウスには、季節の変わり目とともに色とりどりの果実が実っている
街頭の花壇には、再び綺麗な花が咲いていた

一つ変わったことと言えば
街の外れの大木に、タブンネの死骸が吊るされていることである

あれから街に連れて来られたタブンネ共は、この世に産まれてきた事を後悔する程の拷問を受け、ゴミのように死んだ
その死骸に防腐処理を施し、吊るしたのである

手足を切り取られ、傷口を熱した鉄板で焼き潰された死骸
内臓を取り出された後、子タブンネの死骸を腹に詰め込まれた死骸
いずれも皆、一生分の絶望と苦しみを味わったような表情のまま、硬直していた

こいつらは見せしめとして、これから長い間、無様な死に様を晒し続ける

二度とタブンネという害悪がこの地に繁栄しないよう、私は願うばかりである


『葬式タブンネ』 完
最終更新:2014年09月06日 13:00