私、タブンネ、まだちっちゃな子供のタブンネさんなの。
今日はママと一緒にお散歩してたんだけどね、チョウチョウさんをおいかけてたらはぐれて迷子になっちゃったの…
ぐすん…もういっぱい歩いてあんよが痛いのにちっともママが見つからないよぅ…
ハートの肉球もズキズキ痛むよぅ…
あっ、向こうの方から何か近付いてくる!きっとママだ!ママはお耳がいいからタブンネのことを見つけてくれたんだ!
ママー、タブンネはここだよーっ
ガサガサッ
きゃあぁ!なにこれっ!
タブンネが草を揺らしていばしょを教えようとしたらいきなり頭の上から網が落ちてきたの!
びっくりして逃げようとしたんだけど網がからまって抜けられないよぅ…
タブンネがもがいてたら今度は大きな手が入ってきてタブンネのことをつかんだの、助けてくれるのかな?
…えっ、もしかしてタブンネのことつかんでるのって…人間さん?
大変!人間さんはタブンネ達のことをいじめるこわい生物だってママが言ってた!すぐに逃げなくちゃ!
でも人間さんはがっちりタブンネのことつかんでて、どんなに暴れてもはなしてくれないの…
しかも人間さん、タブンネの大切な触角をつまんで引っ張るの!
いたいっ!やめてよぉ!触角はタブンネにとって気持ちを読み取る大切なところなんだよ!
ぐす…引っ張られた触角を押さえて泣いてたら人間さん、タブンネのことを小さな箱の中に入れたんだ。
壁が全部透明の狭い箱…タブンネ、すっごく不安な気持ちになったの…
それで泣きながら人間さんに何度もここから出してよぅってお願いしたんだけど、人間さんは全然聞いてくれないの。
タブンネ、これからどうなっちゃうの…?ママ、早く助けにきてよぅ!
…うぐぅ…いたいよぅ…人間さんがタブンネの入った箱を持ったまま乱暴に走ったからいっぱい頭をぶつけちゃった…
タブンネの頭にまるでダグトリオさんみたいなコブがたくさんできてる…
ママにいやしのはどうしてもらいたいよぅ…ぐすん
やっと人間さんが止まってくれたと思ったら、そこは大きなお家の中だったの、この人間さんの住んでるお家みたい…
お家の奥で女の人が忙しそうにしてる、あれがきっと人間さんのママね。
人間さんのママを見たらね、タブンネ、ひらめいたんだ!
いくら恐い人間さんでも、ママなら優しいはずだってね!だってタブンネのママもすっごく優しいもん。
きっとこの人間さんにタブンネのことを出してくれるように言ってくれるはず!
そう思って、タブンネは人間さんのママに向かってかわいく鳴いて助けを求めたの。
…でも、人間さんのママは見向きもしてくれなかったの…
そのうえタブンネのことを「虫」って言ったの…ひどいよっ!タブンネは虫なんかじゃないよ!
人間さんは一旦タブンネを入れた箱を外に置いてお家の中に戻っていったの。
そのあいだにここから出ようと思って透明な壁をひっかいてみたけど、カリカリ音が鳴るばっかり…
同じ透明な氷ならすぐに割れるのにどうしてぇ…
そうしてる間にも人間さんが戻ってきちゃった…
戻ってきた人間さんは何か本みたいのを読んでるの、何の本だろう?
そんなことを考えてたらタブンネのお腹が急にキュルキュルって鳴ったんだ。
そういえばお腹がすいたな…朝木の実を食べてそれっきりで何も食べてないもんなぁ…
ねぇねぇ人間さん、お腹がすいたよぅ、なにかタブンネにたべものちょうだいよぉ!
タブンネ、人間さんにもわかるようにお腹を押さえて訴えたんだ。そしたら何とか人間さんにも伝わったみたい!
あれっ、人間さん、草をぬいてどうするの?
…えっ、どうして中に入れるの?
うぐっ、ペッ!ペッ!おめめに根っこについた土が入っていたいよぉぉ…お口の中にも入っちゃった…
ぺっ、ぺっ!変な味…
えっ、もしかしてこれを食べろっていうの…!?だってこれ草だよ?こんなの食べられないよ!
ママが草なんか食べたらお腹を壊しちゃうって言ってたもん!
あ…人間さん、またお家に戻っちゃった…
しかたないからタブンネ、のどもカラカラだったから人間さんが草と一緒に入れてくれたお水を飲むことにしたんだ。
でもお水の入った入れ物を覗いてびっくり!土がまざってて茶色ににごってるの!
タブンネ、いつもきれいな川のお水を飲んでるからこんな汚いお水飲めないよぉ…
シャク、シャク…
タブンネが困ってたらきき覚えのある音がきこえたの、タブンネのお耳はママと同じで小さな音でもとってもよくきこえるんだ。
それで音のする方を見てみたら、人間さんが木の実を食べてたの。
あれはタブンネの大好物のオボンの実、人間さんはとってもおいしそうに食べてるの!
人間さん、タブンネそれが食べたい!オボン、タブンネにちょうだいよぉ!
あ~っ、何で全部食べちゃうの!?ひどいよぅ!
木の実を食べ終わった人間さんが戻ってきたからタブンネ、諦めないでオボンをちょうだいってお願いしたんだけど、
人間さんは全然わかってくれないの。
それどころか草を持って無理やりタブンネに食べさせようとするの!
いやだっ、草なんか食べたくないよっ、やめてぇ!
いたいっ!草がおめめに当たっちゃった…おめめが痛……エッ!?いやっ…エグッ!?草をお口に入れないで!!
うっ、うぇぇぇぇぇっ!おぇぇぇぇっ!
うぅ、吐いちゃった… うわぁ!
人間さんはタブンネのことをタブンネが出しちゃったものの上に落としたの…
朝にママがせっかくととのえてくれた毛並みがベトベトになっちゃった…
うわぁ…すっごくすっぱくて臭いよう…この臭いいやだよぅぅ…
でも人間さんが手を放した今なら逃げられるかも!
そう思って走ろうとしたけど、すべって転んじゃった…ぐすっ
また人間さんに捕まってバケツの中に放り込まれちゃった。
人間さんはタブンネのことを洗ってくれるって言ってるけど、何だかすごく不安だよぅ。
つめたいっ!
人間さんがバケツを地面に置いたと思ったら上から雨みたいにお水が降ってきたの!
お水はどんどんたまっていくよ、このままじゃおぼれちゃうよ!
タブンネ、バケツから出るために一生懸命ジャンプしたけど、どうしてもとどかない…
そうしてる間にもお水がたまっていって、ジャンプもできなくなっちゃった。
ガッ!ガバッゴボッ苦しいよぉ!プハッ、助けてぇぇ!!
あんよがバケツの底につかなくなって、タブンネ、お魚さんみたいにうまく泳げないから必死になって人間さんに助けを求めたんだけど、人間さんはじっと見てるだけなの。
見てないで助けてっ!ゴボゴボ…!パッ!
あんよに力を込めてせっかくお水の上に出てもすぐに沈んじゃう、
大声で鳴いたらお口の中にお水がガバガバはいってくるよぅ…
もうダメ、死んじゃう!って思ったらやっと人間さんが助けてくれたの…
いっぱいお水を飲んじゃってタブンネのお腹からたぷたぷ音がするよ…
タブンネ、息が苦しくてそのまま動けなくなっちゃった…
…ぅう、あついよぉ…
しばらく横になってたらやっと動けるようになったけど、さっきまで雲に隠れてたおひさまが顔を出してすっごく暑いの。
風も全然こなくって周りの空気もあつくなってきたよう…
いつもならママが大きな葉っぱを使ってタブンネのことをあおいでくれるのに…
汗がいっぱい出てきて何だかまたのどがかわいてきちゃった。
お水はさっきたくさん飲んだのにな…お水飲みたいけどここには汚いお水しかないし…
人間さん、あついよぅ!のどがかわいたよぅ!って壁をたたいて鳴いたけど、やっぱり人間さんは気付いてくれない…
人間さんは涼しそうにしてぐっすり眠ってる…あのお部屋の中は涼しいのかな?
タブンネはこんなに暑い思いをしてるのに…
仕方がないから人間さんの入れてくれた葉っぱの下に入ったの、ここならおひさまが隠れるから少しでも涼しくなるかなって思って。
でも、それでもムンムンするよぅ…ママ早く助けにきて…
二日目
朝がきたみたい…、でもタブンネ、夜ほとんど眠れなかったよ…
だっていつもはフカフカの干し草でできたベッドで寝てるんだもん、
こんな固い床の上でなんか眠れないよ…早くここから出たいよぅ…
キュルル…キュルル…
あ、お腹が鳴ってる…お腹がすいたよぅ…おいしい木の実が食べたいよぅ…
しばらくして、人間さんが起きてお家から出てきたの。人間さんはまだタブンネが草を食べると思ってるみたい。
人間さん!タブンネは虫ポケモンさんみたいに草なんか食べられないの!オボンをちょうだいよぅ!
昨日から何度も何度も言ってもわかってもらえなかったけど、今度はタブンネの必死な思いが伝わったのか人間さんもわかってくれたみたい!
タブンネの食べ物をさがしてくれるって言ってくれたんだ!
さっそく人間さんはタブンネの入った箱を持って草むらの中を歩いて食べ物をさがしてるの。
はやく木の実を見つけてほしいな。
少ししたら大きな道に出たの、人間さんはそこを渡ろうとしたんだけど、何でか足を止めたんだ。
どうしたんだろう?って思ってタブンネも人間さんと同じ方を見てみたら、おせんべいみたいにペシャンコになって潰れてるフシデさんが目に入ったの。
タブンネ思わず目をおおっちゃった、だってすごく気持ち悪かったんだもん…
でも人間さんはずっとフシデさんのことを見てるの、タブンネ、何だかいやな予感がしたから触角を壁に当ててみたんだ。
触角を通して人間さんの考えてることが頭の中に流れてくる。
『コイツ、もしかしてこれ食べるかな…』
タブンネ、頭の中がパニックになっちゃった。
人間さん、草の次はフシデさんをタブンネに食べさせようとしてる!
タブンネそんなのたべられないよぅ!いやだぁ!!
…あれっ?人間さん、おててを押さえてどうしたの?何だかすごく痛そうにしてる…
あっ、そうか、人間さんはフシデさんの毒の棘でけがをしちゃったんだ。
きっとタブンネにひどいいじわるばっかりしたからバチが当たったんだね。
ママもわるいことをしたらバチが当たるって言ってたもん!
これでフシデさんを食べさせられずに済みそう!
パァァ…
そう思ったんだけど、タブンネのいやしのこころが人間さんの毒を治しちゃったの…
人間さん、また元気になっちゃった…
人間さんはタブンネに毒を治したのはお前なのか?って訊いてきたよ。
もしかしてお礼にここから出してくれるかも!って思ってタブンネ、うんってうなずいたの。
そしたら人間さん、すごいってタブンネのことほめてくれたけど、箱からは出してくれなかったんだ…
それどころか、フシデさんの一部を千切って箱の中に入れたの!
信じられないよ…タブンネは人間さんのことを助けてあげたのに…
どうしてこんなことばっかりするの…?
タブンネがフシデさんを食べるかどうか人間さんずっと見てる…
タブンネ、フシデさんなんて食べられないのに…
フシデさんに触るとさっきの人間さんみたいに毒の棘でおけがをしちゃうもん。
…そういえば、前に一度フシデさんの棘でおけがをしちゃったことがあったっけ…
その時はママがいやしのこころでタブンネの毒を治してくれたな…ママ…
夜
ママが助けにきてくれるまでの辛抱だって、ずっとがまんしてきたけど…
もうお腹ペコペコでげんかいだよぅ…のどもカラカラでお口の中がカピカピする…
このままじゃ、タブンネ死んじゃうよぉ…
でも…ここにあるのは汚いお水と葉っぱとフシデさんの一部だけ…
どれもお口に入れたくないものばかりだよぉ…
でも…でももう、がまんできない!
タブンネ、生まれて初めて汚れたお水を飲んだんだ。
うぅ…まずい…じゃりじゃりしててはぐきのすきまにいっぱい細かい砂が入ってくるよ…
まるで水たまりを飲んでるみたい…
でも、のどがカラカラだから、飲むのが止まらなっくていっぱい飲んじゃった。
それで今度は草も食べたの、これしか食べるものがなかったから勇気を出してお口に入れたんだ。
タブンネ、すごくみじめで悲しくて、まずくて…ポロポロ涙の粒を落として泣いちゃった…
こんなまずい草じゃなくて甘くておいしい木の実が食べたいのに…
三日目
朝になってね、タブンネ、お腹が痛くて目が覚めたの。
い、いたい…まるでお腹を冷やされたみたい…!
あぁっ…何だかうんちが出そう!
うんちをもらしちゃうなんて恥ずかしかったから一生懸命頑張ったんだけど、泥みたいなうんちがいっぱい出ちゃった…
ぶりゅぶりゅっていやな音がしてお尻に生温かい触感がして気持ち悪かったけど、それよりお腹が痛くっていたくって…
やっぱりママの言った通り草は食べちゃダメだったんだ…
何でタブンネがいつもこんな目にあうの…?
人間さんはいつタブンネを解放してくれるの…?
そんなことを考えてたらまた人間さんの手がタブンネをつかんで箱から出したんだ。
今日は何をするのかな…?タブンネ、こわくて震えが止まらなかったの…
でも、人間さんはタブンネのうんちで汚れちゃったお尻と尻尾をちょっと乱暴だけどきれいに拭いてくれたんだ。
もしかしたら解放してくれるのかな?
タブンネが期待してたら人間さん、昨日のあれで熱を治してってタブンネに言ったの
えっ、昨日のあれってなんのこと?ねつってなぁに…?
あれ、人間さんはタブンネをお部屋の中に入れたよ?
お部屋の中はまるで冬がきたみたいに涼しくて気持ちよかったの、タブンネこんなのはじめて!
お外はジトジト暑いのに中はヒンヤリしてるなんて不思議!
プゴッ!?
人間さんはいきなりタブンネのことを白くてモフモフした何かに入れたの!
目の前がまっ暗になってタブンネ、びっくりしてすぐに出ようとしたんだけど、人間さんの手が押さえつけるの!
モゴモゴ…あつくていきもできくってくるしいよ…
この白いのいや!出たいよぅ!人間さんやめ……うっ、またお腹が痛くなってきちゃったよ…
またうんちが出そうだよぉ…
そしたら人間さん、今度は、汚すなよ!ってタブンネのお尻の穴に何かを詰めたの!
汚してほしくないなら何でタブンネを入れるの!?
お尻に何か詰まってるなんて気持ち悪いよぉ…とってよぉ!
うんしょ、うんしょ…おててを伸ばしても全然とどかなくってとれないよぉ…
うぁ…お腹の中で何か暴れてるみたいにいたい…!
もうもらしちゃってもいいからお尻の中のものをとらなくちゃ!
でも、やっぱりおててが届かないし、白いモフモフが邪魔をしてとれないよぅ…
それに…なんだか…頭が…クラクラしてきた…よ…
タブンネ、そのまま気を失っちゃった。
目が覚めたら、夜になってて、いつのまにか箱の中に戻されてたの…
もうタブンネの邪魔をするモフモフはなくなってたから、何とか体を丸めてお尻の穴につまったものをとったんだ。
ドピュ、ピババババ…
たまってたうんちが滝みたいにたくさん出ちゃった…
タブンネのピンクの体…もうドロドロでボロボロ…
体を葉っぱで拭こうとしたけど…もう…うごくこともできないよぅ…
体が…熱くなってきて…目の前がぐるぐるする…
タブンネ…もう死んじゃうのかな…?最後に…ママに会いたかったよぅ…
「ミィ!」
…あれっ、何だかなつかしい声がきこえたよ…
この声…とってもあたたかい気持ちになるやさしい鳴き声…もしかして…
タブンネ、声のした方を見てみたんだ。
ママ!
おめめがよく見えなかったけど、見まちがえるはずのない、ママの優しいお顔が見えたの…!
ママ…助けにきてくれたんだね、タブンネ、ずっと信じてたよ。
ママのお顔を見たら嬉しくって、タブンネ少し元気が出たよ!
ママはすぐにタブンネを箱から出して、ペロペロなめて体の汚れを落としてくれたんだ。
それでいやしのはどうもしてくれたの。
ママの魔法の波動でタブンネ、すごく楽になったよ。
ママはもうぜったいタブンネのことをはなさないからねって抱きしめてくれたの。
ふわふわであったかいママの匂いがするよ。キャハハ、何だかくすぐったいな♪
タブンネもママのことをはなさないよってギュッとママのことを抱きしめたの。
そのあとママにだっこしてもらってタブンネ、ひさしぶりにタブンネのお家に帰ったんだ。
お家にはママの集めた木の実がいっぱい!やっとおいしい木の実が食べられる♪
タブンネがママに木の実を食べさせてもらおうとしてたら、お外で何かズシ、ズシ、って足音みたいのがきこえたの。
何の足音だろうって思ってたら、とつぜんお家の中に大きなポケモンさんが入ってきたの!
あれはたしかペンドラーさん!何でペンドラーさんがタブンネのお家に!?
ママはタブンネを後ろにしてペンドラーさんを威嚇してる…タブンネ、恐くってママの尻尾にお顔をうめてぶるぶる震えてたの。
「ミビャァァァアア!!!」
そしたら急にママの体が持ち上がったの!よく見たらペンドラーさんの角がママに突き刺さってる!
そんな、ママ!どうして!?ママぁ!!
ママはペンドラーさんの角に串刺しになってぐったりしてるよぉ!
タブンネがママに向かって泣いてたら、ペンドラーさんが恐い目で睨みつけながら言ったの。
「あなたね…うちの子供を踏み潰して殺したのは…」
えっ…なんのこと?ぜんぜんわからないよ…
「とぼけないで…じゃあ何であなたから私の子供の匂いがするの…?」
え…もしかして、ペンドラーさん、あのフシデさんのママなの…?
ち、ちがうよ、フシデさんは最初から潰れてたんだよ!匂いがついてたのは人間さんがタブンネと一緒の箱にフシデさんの一部を…
きゃ、やめてっ!助け…きゃあああああああっ!!!!!
おわり
最終更新:2014年09月12日 01:45