かさタブンネ

むかしむかし、あるところに心優しいおじいさんとおばあさんが住んでいました。
しかし2人は貧乏でろくに食べるものもありません。
「はあ、もうすぐ正月だというのに食べるものがないなんてさびしいのう」
おじいさんが悲しそうにいいました。
「そうですねえ、しかしうちにはお金がありませんからねえ」
おばあさんが答えます。
「そうじゃ、かさをつくって町に売りに行こう。売れれば食べ物が買える」
おじいさんがそう提案すると
「いいですねえ。さっそく作りましょう」
とおばあさんはかさをつくりはじめました。

おじいさんが鳴き声のほうを向くと、そこに6匹のタブンネがいました。
「どうしたんじゃ?こんなところで」
おじいさんはタブンネの頭に積もった雪をはらいながら聞きました。
するとタブンネは「ミイィィ…」といいながらおなかをさすりました。
「そうか、お前たちも食べ物がなくて困ってるのか。
すまんのう、分けてやりたいのはやまやまじゃがわしも食べ物がないんじゃ」
おじいさんが申し訳なさそうにいいます。

「そうじゃ、このかさをかぶるとよい。少しじゃが雪から身を守れるじゃろう」
そういいながらおじいさんはタブンネたちにかさをかぶせてあげました。
しかしかさは5つ、1匹分足りません。
そこでおじいさんは自分のかぶっていたてぬぐいをかぶせてあげました。
「わしの汚いてぬぐいで勘弁してくれ。
それじゃあ達者での」
そういっておじいさんは家に向かって歩き出しました。
そんなおじいさんにタブンネたちは
「ミイ!ミイ!」と叫び続けていました。

そしておじいさんは家に帰りました。
おじいさんはかさが売れず、野生のタブンネにあげたことを話しました。
その話をきき、おばあさんは
「それはいいことをしましたね。タブンネも喜ぶことでしょう」
と笑顔でこたえました。

その日の夜、おじいさんとおばあさんが休もうとすると、
戸をたたく音がしました。
「こんな夜に誰じゃ?」
2人が戸を開けるとそこには近所の猟師さんがいました。
「ほらよ、これをやるぜ。」
そういって猟師さんはおいしそうなお肉と毛皮を
2人に差し出しました。
「こんなおいしそうなお肉をどうして私たちに?」
おばあさんが聞くと猟師さんは
「夏に大ケガしたときじいさんたちには助けられたからな。
いつか礼をしたいとおもってたんだ。
あったかくしてうまい肉食って正月を過ごしてくれよ」
猟師さんが照れくさそうに言うと
「ありがとうございます。本当にありがとうございます」
おじいさんとおばあさんは何度も頭を下げました。

ちなみにこのお肉と毛皮はおじいさんがかさをあげたタブンネたちのものです。
おじいさんと別れたあと、タブンネたちは保護してもらおうと
おじいさんの足跡をたどって追いかけました。
その途中猟師さんにみつかり、狩られてしまったのです。

しかしおじいさんとおばあさんは
これがタブンネの肉だと知らずおいしく召し上がり、
楽しい正月をすごしましたとさ。

(タブンネ以外は)めでたし めでたし
最終更新:2014年09月20日 00:24