ベビンネハンター

今日も街中で一匹また一匹と捕まっては、無残に殺されていくタブンネたち、瞳に涙を浮かべ、
たまたま通りかかった僕に必死に助けを求めるも、屈強な男達に体中を切り刻まれ、殴られ、千切られ息絶えるのを見ると、
己の無力さを嘆かずにはいられない。

「あ、あの…」
「ああん?なにか用か?」
「いえ…なんでもないです」
こんなやり取りは何度目だろうか、いつもいつももう一つ踏ん切りがつかない、あの鋭い眼光にさらされると、
どうしても体が言うことを聞かないのだ。結局その日は諦め,家路についた
家についても僕の頭の中は先程のことでいっぱいだった。
彼らがもしタブンネではなかったら、普通のポケモンのように幸せな一生を送れただろう
しかし現実は残酷だ。彼らはタブンネである。その他のポケモンにない可愛らしさ故につけ狙われ、
力無き故に、容易に捕まり殺されてしまう。世の中とはもしかしたら地獄より過酷なのかもしれない。
そうだ、このまま何ら行動を起こさずに、ただタブンネたちが非業の死を遂げるのを座して見ているだけでいいのか?
違う、僕にはやるべきことがある。明日こそ、日頃の思いを彼らにぶつけよう。

翌日、家の近くを歩きまわっていると、丁度タブンネ親子が捕まっている場面に遭遇した。
捕まえたのは昨日と同じ男達だ。何という僥倖、僕はありったけの勇気を胸にその男達へと近づいていった。

「あの…」
「何だ兄ちゃん、今こいつらを締めるところだから手短にな」
親タブンネの可愛らしい耳を鷲掴みしている男がこちらを振り返りもせずに答えた。
いつもならここで怖気付いてしまうところだが、今日は違う!僕はその男へ向かって意を決して叫んだ。
「ぼ…僕も混ぜてください!」
「ああいいよ、じゃあそいつ頼む」ドサッ
そういうと男は僕の足元に小さなピンクの塊を投げた。ベビンネだ。まだ生まれてまもないのだろう、あたりをきょろきょろ見渡している。
「ミィィィイイイイ!!!!」バタバタ
親タブンネが男の腕の中で必死に暴れまわっていた。しかし当のベビンネはチィチィ♪と笑いながら親タブンネの方へ手を伸ばしている。今の状況を理解出来ていないのだ。
僕はそのベビンネへ近づくと、そのムカツク尻尾を持って宙吊りにした。
「チィッ!?チィチィチィ――!!」
やっと危険を察知したのか、手足をバタバタさせて親タブンネに助けをもとめている。毎日街中から聞こえる不快な声、これを間近で聞かされて我慢できる者ははいないだろう、

僕は手に力を込めてそのタブタブしたベビ耳を千切り取った。
「チビャアアアアアァァァァアアア!!!!」
「ミギャアアアアアァァァアアアアア!!!!」
途端に響く二匹の悲鳴、耳の無くなったベビンネを地面に押さえつけられている親タブンネに見せつけた。
「ミビィッ!ミギャアッ!」バタバタ
「兄ちゃん中々エグイね、才能あるよ」
暴れるタブンネを澄ました顔で抑えている男が僕を高評価してくれた。少し照れて視線をベビンネに移すと、
ベビンネは虚ろな目から涙を流し、「フィィィィ」と蚊の鳴くような声を挙げながらぐったりとしていた。
その後、徹底的にベビンネを傷めつけてから親タブンネの口にケツから押しこみ、二匹仲良く焼却してやった。
焼かれる直前、親タブンネの口から文字通り顔を出しているベビンネを見てその場にいた全員が爆笑した。

その事を境に僕はその男達の一員となり、様々な経験をしながら今ではベビンネを専門としたベビンネハンターとして名を馳せている。
これを見ている君も街中でタブンネが狩られていたら気軽に参加してみるといい、自分の新しい可能性が見つかるかもしれない。

最終更新:2014年09月22日 20:21