料理大会

「準決勝のお題は『タブンネ』です。」

「タブンネ…」
「タブンネだと」

これは有望な若手料理人の集まる大会であり、準決勝まで残った者は
皆精鋭と言っていい。
しかし、その精鋭たちが皆戸惑っていた


悩んでいる彼らを他所に客席でどうにもとっぽい料理人らしき少年が
一緒にいるベテラン料理人らしき男に聞いている

「あのー、タブンネって聞いたことないんですがどんなものなんですか」

「おや、知りませんか
タブンネと言うのはイッシュに棲むポケモンで結構美味い肉が取れるん
ですが厄介な点がありましてね」


ミィィィ ミィィィ

「なんだ、あのポケモン
あんなの初めてみたぜ」
「でも、結構かわいくねえ?」

会場内に檻に入れられたピンク色のポケモンが何匹かおり、それを見た
客達がいろいろ言い合っている

「えー、これがイッシュに棲むポケモンでカントーには生息しておりません
でもってここにこのポケモンの言葉を翻訳する機械があります
これをこうしてこうして…」

『うるさい人間どもだミィ、さっさとかわいいタブンネちゃんにオボンの実をよこすミィ』

「うわ、これがあのポケモンの本性かよ」
「なんだかあの顔が憎らしくなってきたぜ」

客席のざわめきを無視して司会の男が解説を続ける

「えー、このポケモンはカントーではあまり知られていませんが、イッシュでは一般的なポケモンで繁殖力が高く、その肉は美味で滋養に満ちていると言われています
そんなわけで準決勝進出者の皆さんにカントーの人たちの舌にあったタブンネ料理を造りだして頂きたい」

テーブルの上に野菜などの食材とともにパック詰めされた肉が並べられている
「こちらにタブンネの肉を一通り用意して…」

「カカカカカカカカ!
こんな屑肉使えるかよ
俺にそこのタブンネを捌かせろよ」

「そうね、タブンネは苦痛と絶望を与えられて〆られた個体が味が良くなるはず
こんな麻酔をかけて楽に殺されたような肉じゃまともなタブンネ料理は造れないわ」

(く、こいつらやっぱり知っておったか
これならこいつらをハメられると思ったのに)


「厄介な点というのはこれですね
タブンネは苦痛と絶望を与えられると肉の味がよくなるのですが、逆に言えば、限られた制限時間内に効率的に苦痛と絶望を与える必要があるわけでこれがうまくいかないと料理の味に悪影響が及んでしまうのです」

「へー、変わった性質をもつポケモンもいたもんですね」


続かない
最終更新:2014年09月22日 20:21