ラリンネ

散歩中に揺れる草むらを見つけたのでのぞき込んでみるとお昼ご飯を食べようとしているタブンネちゃんがいた
今日のお昼はオレンの実みたいだ

タブンネちゃん相手ならポケモンを出す必要すらないぜ!

俺のどろぼう 攻撃!

野生のタブンネからオレンのみを奪い取った

タブンネちゃんは目に涙を溜めて「返して~」と言わんばかりに手を伸ばしてピョンピョンとはねている

その姿をみたらさすがにちょっと可哀想になってきた
「タブンネちゃんイジワルしてゴメンね?はい、これ返すね」
奪い取ったオレンの実を差し出す
「ミィ!」
タブンネちゃんは嬉しそうにオレンの実に手を伸ばした
その瞬間、俺はそのまま腕を高く振り上げた
タブンネちゃんはその光景を理解出来ていない
ブンッ!

俺の なげつける 攻撃!

高々と挙げられたら俺の腕が振り下ろされる
オボンの実が手を離れ、タブンネちゃんの顔のど真ん中に吸い込まれるようにしてめり込む
「ミギュィ!」
手を前に出したまま顔面にオボンの実をめり込ませたタブンネちゃんは不思議な鳴き声をあげた後、パタリと後ろに倒れた
ぐぐぅ~
俺の腹が鳴る
そういえば昼飯を食べていなかった
とりあえず俺は顔面にオボンの実をめり込ませたタブンネちゃんを引きずって家まで持ち帰った


自分でやっておいて何だが一応オレンの実をタブンネちゃんの顔から外しておく
どうやらめり込んだのではなくオレンの実が潰れただけのようだ
俺が怪我を消毒する準備をしていると
「ミィィィ」
プルプルと頭を振りながらタブンネちゃんが目を覚ました
「はい、染みるからね~痛いよ~」
覚醒一番にそんな事を言われても反応出来ないし痛みに耐える準備も出来ないだろう
「ギュヒィィィィ」
おおよそタブンネからは出ない絶叫を上げる


とても辛い事で有名なオッカの実をベースにした消毒液だ
「ほら!暴れるな!治療出来ないだろ!」
あまりにも理不尽な怒声にタブンネちゃんは怯えるようにおとなしくなった
それでも治療してくれたと理解したのかその後は俺に擦りよってきた
懐かれたようだった
オボンの実を全力で顔面に食らったというのにまったくタブンネは理解できない


3日が過ぎた頃には
タブンネちゃんは俺にべったりになっていた
正直鬱陶しい
だがそれも今日までだ
俺は今日もタブンネちゃんの顔に薬を塗りつける
毎日この薬はすべて天然素材で出来ているからタブンネちゃんが舐めても大丈夫だ
ちなみに今日はモモンの実がベースだ
塗り終わりしばらくするとタブンネちゃんは突然錯乱し始めた
「ミイッ!ミミミミミィ?ミ?ミ?ミ?」
ハラリハラリと体毛が抜け落ちていく
これが俺が作りたかった薬だ
「ミィィィミィィィミィィィミィィィ」
わんわんと泣き出したタブンネをそのままに電話をする
「もしもし、食材研究課の………ええ、はい。出来ましたよ肉体にストレスを与えず、精神的に痛めつける事でタブ肉の旨味を引き出す薬が!ただですねぇ……」

くるりと振り返りタブンネをみる
「ミッミッミミミミーミッミミ☆」
そこには虚ろな目で陽気に踊る壊れたタブンネがいた

この薬の副作用…それは精神崩壊
だがそれ以上にタブンネは忘れようとしているようにも見えた
俺に裏切られたことを…

「精神崩壊すると管理が面倒だから……えっあ、はい……ですよねー☆」

タブンネの犠牲は全く無駄だった
最終更新:2014年09月22日 20:26