タブチュウ

我が家のタブンネはとても利口だが引っ込み思案だ
最近タブンネが何か悩んでいるようだったので夢の中を覗いてみた
すると夢の中でタブンネはピカチュウの格好をして俺と遊んでいた
そういえば最近、俺はピカチュウが欲しいとたびたび言っていた
タブンネはそれで関心が自分以外に向けられるのが怖かったのだろう
「そうか、タブンネはピカチュウになりたかったのか」
自分の何気ない言葉に悩まされていたタブンネのなんと健気なことか
「よ~し、わかったぞタブンネ お前をピカチュウにしてやるからな」
こう見えて俺は昔シェルダーやコイキングをミュウにしたこともあるのだ
ピカチュウくらい造作もないだろう

まずは特徴的な耳の再現だ
タブンネの耳たぶ辺りから上に切っていき軟骨の辺りに届いたら余った皮をくるっと巻く
そして縫合したうえで布で巻いて固定する
触角はピカチュウには無いし気持ちや心音を知る必要もない
次にほっぺの電気袋だ
これは筒にジャストなサイズの棒を挿して作った器具でほっぺを吸引する事で再現する
鬱血してほっぺがピカチュウみたいになるまでこれを繰り返す
そして尻尾をギザギザな形に整髪料を使いながら無理矢理整える
そして最後に熱した金属でピカチュウの鼻を再現する
ジュッ
ピカチュウの鼻の形に切り出した金属を加熱してタブンネの鼻に押し当てる

タブァォァァァァァァォォォォ!」
感覚器官である鼻に熱した鉄を押し当てられた痛みは半端なものではないだろう
むしろ今まで起きなかったのが奇跡のようなものだ
タブンネがパニックのうちにキノコの胞子を嗅がせ眠らせる
あとは鬱血と鼻焼きを毎日行いながら手術跡がなくなるまで眠らせる
スリーパーやムシャーナの力を借りてタブンネの夢の中にも入り込み洗脳を行う
一週間後タブンネはやっと夢からさめることができた
「タッタブネー(ピッピカチュウ)」
「タッブー(ピッカー)」
ぽてぽてとタブンネがこちらに駆け寄ってくる
声は完全には再現出来なかったが、見た目はピンク色のピカチュウに見えなくもない
俺はこれはいけると思った

「これが私のベンチャービジネスのきっかけです。卑しいタブンネ達は人気者になりたいという潜在欲求がありますからね」
「なるほど害獣の卑しさを上手く利用しているのですね」
「はい、そうです。イッシュ地方ピカチュウはいないですからね ピカチュウの形をしているだけで害獣でも売れるんですよ(笑)」

インタビューを受ける俺の傍らにはピカチュウがすやすやと眠っていた
最終更新:2014年09月22日 20:27