初夏になると子タブンネ達の育成が始まる。
ここでは、子タブンネ達に十分なオボンのみを与えつつ、適度な運動をさせている。
初夏の心地良い日差しが指す中、子タブンネ達は群れをなして毎日遊び呆けつつ、腹が空けばオボンのみをたらふく食べて、
夜はふかふかの牧草の中ですやすやと眠っている。
悪天候の日は屋内で遊び、まさに子タブンネ達にとっては天国と呼ぶに相応しい生活だった。
やがて秋になると、子タブンネ達は成体へとなる。
このタブンネ達は最適の環境下で十分な餌を食み、運動をすることができたため、
野生のタブンネはおろか人間の下で育ったタブンネよりも大分発育が良い。
現在、タブンネ達は狭いところに押し込められ、十分な運動ができない状態となっている。
毎日のように遊び呆けていたタブンネにとって、これは大きなストレスとなっていた。
「ミィィ・・・」と皆一様に不満な鳴き声をあげている。
初夏にはサファイアのように輝いていた青い瞳も、今となっては濁りきっていた。
やがてタブンネ達の給餌の時間となった。
がちゃり、とドアの開く音がするとタブンネ達は皆ガタガタと震え始めた。
部屋の中の通路を、衛生着を着けた若い男とそのパートナーのゴウカザルが歩き出した。
男は白いペーストが詰まったじょうごをその手に抱えている。
餌はモコシのみを消化のよいように柔らかくなるまで蒸したものだ。
先頭のタブンネの口にパイプを突っ込むと、タブンネは逃げ出そうと暴れ始めた。
タブンネの頭部をゴウカザルが殴りつけ、抑えつける。
その間に男はタブンネの胃におよそ5キロもの餌を流し込む。
餌を吐き戻すことのないように、こうした給餌の時以外はタブンネの口にタオルを巻いている。
そのタオルは吐瀉物により薄い灰色に染まっている。
吐き出そうとしてもタオルに胃に押し戻され、小さな鼻の穴から苦しそうに逆流した汚物を流している。
そのため息苦しいのか、喉のあたりには薄いかき傷が残っている。
タブンネの喉は給餌のパイプによって傷つけられ、またタブンネ自身の数が多すぎるため、
その傷は放置されるのが常である。先程の給餌でも、パイプにより喉が傷つき、
出血を起こしているタブンネがいた。出血はなかなか止まらず、
タブンネはその痛みにより「ミ゛ィィ・・・」と唸り続けていた。
敏感な喉に傷がつき、その傷は酸性の吐瀉物により侵される―その痛みは凄まじいものだろう。
翌朝、喉の傷の痛みに魘されていたタブンネは冷たくなっていた。辺りにはタブンネの口より生じた、血の海ができていた。
ここではそうした出血多量により死ぬタブンネは珍しくない。
タブンネは肥大しきった肉体と内臓のせいで、立ち上がることは困難となり、
常に横たわっているような状態となっている。
タブンネには多大なストレスが生じ、自分の毛を毟り取る。
どのタブンネも毛がところどころ抜け落ちており、かつてはふかふかだった毛並みは今となってはボロボロであった。
時にはそうしたストレスによる共食いも生じ、タブンネの残骸が転がっていることもある。
「ミィ・・・ミィ・・・」
このタブンネはあちこちを子ミネズミ達によって齧られている。
子ミネズミはタブンネよりもずっと小さいが、肥大しすぎたために身を守ることもかなわず、
弱々しく鳴き声をあげて抵抗することしかできない。タブンネは生きたまま肉体を貪られるのである。
弱り切ったタブンネは叫び声をあげることもままならず、ただミネズミ達が満足するのを待ち続ける他ない。
このタブンネにとっての地獄はおよそ一ヶ月続く。
一ヶ月が経つと、タブンネの胴体と頭部の境目はなくなり、水平な姿勢しか取れなくなる。
タブンネの肝臓は平均的なものの十倍以上に肥大する。
この状態になるまでに多数のタブンネが命を落とす。
ここで育つタブンネの致死率は他の養タブ場で育つタブンネに比べておよそ10倍となっており、
タブンネの死骸には致命的な喉へのダメージや、身体を支えきれなかったことによる骨折が見受けられる。
生き残ったタブンネは屠殺場へと連れていかれる。
タブンネ達は自身の運命が分かっているのか、最後の力を振り絞って抵抗の叫び声をあげる。
「ミィアアアアアアアアア!」「ミギャアアアアアアアアア!」「ミガアアアアアアアアア!」
など、多種多様な絶叫が部屋内に響き渡る。
この作業はとても忙しく、ポケモン達も総出でこれを手伝う。
叫ぶタブンネ達をチラチーノのビンタやゴウカザルの拳によりおとなしくさせた後は、
タブンネの足にドリルで穴を開け、その穴に棒を順に通していき吊るし上げる。
吊るされたタブンネは足に走る激痛よりもこれから訪れる死の恐怖に怯え続けている。
光を失った瞳からは涙を逆流させ続けている。主である男がジャノビーにはっぱカッターの指示を出すと、
タブンネの身体には深い切り傷がついた。ゴウカザルがその切り傷からベリベリとピンク色の肉を剥がす。
タブンネはその激痛より白目を剥き泡を吹いて失神していた。
やがて内臓が顕になると、男はゴウカザルを静止した。男は出刃包丁をもち、
余分な神経や脂肪を除いていく。タブンネはビクビクと痙攣し、口からは黒ずんだ血が溢れ出していた。
ひと通り取り除き終わった後は、肥大しきった肝臓に入刀をする。
肝臓とタブンネを繋ぐ管を取り除くと、タブンネの口からは血が噴水のように吹き出した。
肝臓を取り除き終わったタブンネは廃棄場に投げ落とされる。
この時生命力の高いタブンネはまだ生きており、
そうしたタブンネは空っぽとなったタブンネの死体をぼんやりと見つめ続けながら、その生涯を終える。
取り除かれた肝臓は冷水で締められてやがて出荷される。
一連の作業は非常に手間のかかることから、これは非常に高級食材とされている。
すべての作業を終えた男はパートナーのゴウカザル、チラチーノ、ジャノビーと共に来年の夏まで休みをとるのであった。
最終更新:2014年09月29日 17:43