「ミ゛ィィィィィィ!」
公園にタブンネの絶叫が聞こえる
声の主であるタブンネは砂場でうずくまっている
かろうじてまだ戦える状態だ
「キリキザン、もう一度峰打ちだ!」
キリキザンがタブンネに向かって駆ける
ザンッ!
「ミ゛ッギィィィィィオォォォ!」
剣の舞によって攻撃力を最大まで高めた峰打ちが腹部に叩き込まれる
タブンネはくの字に折れ曲がり後方へ飛んでいく。それでもタブンネは戦闘不能にならない
峰打ちとは必ず体力が1残る技だ
しかし体力が1になる技ではない
限界まで体力が減ったとしても戦闘不能にならないだけで体への負担は増える
「ミギャァァァ!」
さらに峰打ちが叩き込まれる
タブンネの中で体力よりも減ってはならないものがすり減ってゆく………
そして64回目の峰打ちが終わった
タブンネはない頭で数えていたのか64回目の峰打ちが終わると安堵の表情を浮かべた
それをよそにキリキザンはヒメリの実を食べる
「ミ?ミギュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ」
顔面にキリキザンの鋭い峰打ちが打ち込まれる
それでもタブンネは戦闘不能になれない
そして…
「ミミィ………ミミッ♪」
媚びた。小首を傾げて両手を口元にもって行き盛大にあざとさ全開で媚びた。
ザムッ
媚びのポーズのせいでノーガードになった鳩尾に峰打ちが食い込む
ちなみにうちのキリキザンはメスだ
「さあ、まだまだ峰打ちは続ぜ!まだ後ろに五匹も控えてるんだから早く立てよ!」
タブンネの顔が絶望の色に染まった
ドムッ
キノガッサの尻尾を使った峰打ちがタブンネの手をようしゃなく叩き潰す
「ミ゛ギュァァア゛ァアァァァォ」
タブンネの絶叫の声も枯れてきた
シュッシュ
「ミギャ!ヒギャァ!」
峰打ちが鳩尾に連続技のようにリズミカルに叩き込まれていく
そろそろ峰打ちのPPが尽きかけてきた
「さて、そろそろ終わりにするか」
ぼろ切れのようになったタブンネを持ち上げてキノガッサに投げつける
「ミィィィィィィー」
ドゴスッ!
勢いをつけた峰打ちがタブンネの顔面に突き刺さり、今度は最後の一回を温存していたハッサムの元へ飛んでいく
グシャッ!
ハッサムの鋼鉄の鋏から放たれる峰打ちが背骨に食い込んだ
「デギャァァァァア!」
ボキボキボキと骨の砕け散る音がした
ドガッ! グチャッ! メメタァ!
まるでバレーのトスのようにタブンネが宙を舞う
「キリッ!」
ズバァァァァア!
タブンネの背中にキリキザンの峰打ちが打ちつけられる
「ミギャャャャャャャヤァ!」
タブンネはそのまま俺のところに飛んでくる
「よっしゃあ!いくぜぇぇぇぇ!」
ダッとタブンネに向かって走っていく
ゴシャアッ!
タブンネの胸部に拳がめり込む
いや、正しくは手に持ったモンスターボールが胸部にめり込んだ
「タブァァァァァアァァァ」
タブンネの肋骨が折れ胸部に拳が沈み込む
しかし絶命する事はない
「ミ、ギャ?」
「安心しろ、峰打ちだ」
パンッと胸部に沈み込んだモンスターボールがそのまま開く
「ミギャャャャャャャヤ」
傷口を広げながらモンスターボールが完全に開いた
そのモンスターボールは黒く高貴な輝きをしていた
「こんなに虐げられたのにこいつで捕まったらお前は俺に懐くのかねぇ?」
ゴージャスボール、それは捕獲したポケモンを急速に懐かせるボールだ
「ミ…ギャァァ…ァ……」
いやいやと力無く頭を振るがその姿はやがてゴージャスボールに吸い込まれていく
数日後
「ミッミミィ~」
そこには元気に走り回るタブンネの姿があった
「まさか記憶を全て失うなんてなぁ…」
これがボールの効果なのか、タブンネの最後の抵抗なのかわからない
それもまた面白い
俺は新たなゴージャスボールを握りしめた
最終更新:2014年09月29日 18:11