街の外れの野原にたくさんの粗末な墓がある。全部
タブンネの墓だ。今日も悲しい声のレクイエムが響く。
「ミィ~~~~~~ミィミィ~~~・・・」「タブタブネェ~~~~」
20匹のタブンネが歌の本を持ち、白いベレー帽と襟巻を着けて悲しげに歌っている。
歌を歌ってるのはミィミィ合唱団。歌うことが好きなタブンネ達が大小問わず所属している。
本来の結成目的は皆に楽しい歌を聴かせることだったが、いつしか同族の葬式に借出されては、鎮魂歌を歌う。
そんな日々が続いていた。
しかし、ある日思わぬ依頼がミィミィ合唱団に届く。近くに住んでいるタブンネカップルが2日後に結婚式を開くという。
ミィミィ合唱団にはそのお祝いの歌を歌って欲しいという。喜び勇んだ合唱団はすぐさまカップルに結婚式の準備も
引き受けると言って、いそいそと式場の準備を始めるのであった。
―2日後、結婚式が始まった。タブンネカップルは、ミィミィ合唱団手作りのタキシードとドレスに身を包み、照れくさそうにしている。
ミィミィ合唱団は赤いバージンロードの横に台を置き、3列体制で並び、笑っている。久しぶりに楽しい歌が歌える。皆、喜びに満ちていた。
しかし、会場はなんと道路のド真ん中!夜中の間に式準備をしたのだが、今は朝。通る車は迷惑極まりない。
式の見物客や式場周囲を守り、車を誘導するSPタブンネ。ざっと50匹ぐらいのタブンネがいた。
車のクラクションがけたたましく鳴る中、式は始まった。「タブタブ~~~♪タブタブ~~~♪」「ミミミミ♪ミミミミ♪」「ミミミミ♪」
周囲の通行人がうるさいと缶やゴミを投げるが、タブンネたちはライスシャワーと勘違いしてるのか、「ミィミィ」エキサイトし、騒ぎ出す。
「ミミミミミィ~~~~~♪」合唱隊の歌もエスカレートしていく。
そのころ、後ろには巨大なタンクローリーがあった。運転手は「あ~、残業つれーよ。眠い…」かなり疲れている。
結婚式の渋滞で、車はなかなか進まない。そんな中、運転手はつい、眠ってしまう・・・。
いよいよ、新郎新婦タブンネの指輪を交換する。その時、渋滞中の車が動き出す。
SPタブンネの交通整理によって、車は避けながら通過するが、一台、曲がらずに直進する車があった。
居眠り運転のタンクローリーである。「ミッミッ!」SPタブンネは注意するがタンクローリーはゆっくり進む。そして、
「グビャァァァァァァァァァァアア!?」SPタブンネの断末魔が響き渡る。運転手は慌てて飛び起き、止まろうとしたが、間違えてアクセルを踏んでしまった。
ギュィイイィン!タンクローリーは凄い速度で発射し、式に来たタブンネを引きつぶしていく。
「ミギュァ!?」「ミブォ!」「ビャァアア!?」「グビィ!?」あっという間に20匹ぐらいのタブンネが死んだが、タイヤにひき肉が詰まってトレーラーは転倒。
横向きにガリガリ暴走する。奥にいた合唱隊も耳や手足を引きずり込まれ、死んでいく。
タンクからは油が漏れ出す。新婚タブンネは逃げようとしたが、新婦ンネのハイヒールが折れてしまい、足を挫いてしまう。
そんな時、漏れ出した油が発火した・・・。
油に着いた火は瞬時に発火し、タンクローリーごと爆発した。「ウビャァァァァァァァァ!!?」
新婚タブンネはあっという間に爆死した。「ウギィイイィイイ!?」「ミッジィイイィ!?」
手足や下半身がグチャグチャに轢き潰されたが、まだ息があったタブンネ達も爆死していく。
タブンネ達は皮膚を溶かされながら断末魔の声をあげた。
「ウビャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアア!!?」
さながら一種のコーラスのようにも聞こえた。
すぐに消防車の消火活動が始まるが、油の火事はしぶとい。水では消えないのだ。
30分後ようやく、火が消えた時には骨組だけのタンクローリーと、黒い豚の炭人形が大量に転がっていた。
全員しんだ。そんなように見えたが、まだ1匹、息があった。
最後に残ったタブンネ。タンクに下半身を引き潰され、石油爆発で右半身が完全に炭となっていたが、
なお、生きていた。焼け千切れたベレー帽から合唱隊のタブンネだった。「ブヒューブヒュー」目は白く濁り、もう長くなかった。
そんななか、黒焦げの合唱隊タブンネは歌い出す。
「ミガァ~~~~~ガガ~~~~ギゴゴォ~~~~~ダブダブネェ~~~ダブネェ~~~♪」
醜い歌声だが、死んでしまった多くの仲間に弔いの歌を歌っているのか。
合唱ンネの脳裏には、今までの自分の人生を回想してるのだろう。
始めて合唱隊に入った自分。皆と楽しく歌う自分。そして、この惨劇・・・。
「ダブダ~~ブネ、ダブダ~~ブネ~~~♪ダブダ」その瞬間、タブンネの脳天に何処からかタネマシンガンが命中する。
それでも、タブンネは最期まで歌う「ギィゴ~~ネ・・・」そして、ゆっくり死んでいった・・・。
ミィミィ合唱団はこうして滅亡した。
おしまい。
一言。運転手は前進に火傷を負い、重傷でしたが、ハピナス院長の
決死のオペで半年後、無事に復帰しました。
めでたしめでたし。
最終更新:2014年10月07日 22:36