戦力外タブンネの末路

とあるポケモントレーナーのボックスに一匹のタブンネが居ました。
元々は野生での生活を送っていたのですが、トレーナーにゲットされ、共に旅をしていたのです。
野生で生きていたポケモンが捕まって人に使役されると言うのは一見不幸な事のようですが、タブンネに限ってはそうでもありませんでした。

攻撃に使う鋭い爪や牙を持たず、身を守る毛皮や甲羅も持たず、短足で歩き難い肉球の所為で俊敏性にも欠け、明らかに自然の風景から浮いているピンクの体。唯一の取り柄は優れた聴力ですが、とてもこれらの欠点に見合うものではありません。
こんなタブンネにとって野性での生活など、生きた地獄以外の何物でもなかったのです。
事実、このタブンネも、肉食のポケモンから逃げ惑い、素早いポケモンとの食べ物の奪い合いに敗れ、敗北者としての生活を送っていた所をトレーナーにゲットされる事によって救われたのです。タブンネにとってはトレーナーは生きた神様のような存在だったでしょう。
ゲットされてからのタブンネの生活は、毎日の食べ物を確保され、傷ついてもすぐに治療してもらえ、広いイッシュ地方をトレーナーやその仲間達と共に旅する事が出来、まさに天国でした。
旅が進むにつれ、他の仲間達がどんどん成長して行きいつしかタブンネは外に出る事が無くなりボックスに篭る毎日となってしまったのですが、タブンネはそれでも満足でした。ただ何もする事が無い退屈な日々でも、生きた地獄に比べれば何倍もマシだったのです。

ですが最近タブンネの居るボックスが騒がしくなって来ました、トレーナーが沢山のポケモンをボックスへと送ってきたのです。それも揃いも揃って同じポケモンばかり。
と言うのも最近トレーナーは卵を大量生産しては、卵から孵ったばかりのポケモンをボックスへ入れると言う行為を繰り返しているのです。
「う~ん・・・ボックスが埋まってきたか・・・」その声は間違いなくトレーナーのものでした。
「そろそろジャッジに見てもらうか・・・ん?コイツは・・・」そう言ってトレーナーは、タブンネの能力を調べ始めました。

「せっかちな性格で13-4-14-2-4-20・・・使えない・・・か」意味不明な数字を読み上げるトレーナーですが、タブンネには全く意味が分かりません。ただ、使えないと言う言葉だけは理解でき、その言葉はタブンネにこれ以上に無い不安を与えました。
「ばいばい、タブンネ」そう言ってトレーナーはパソコンの操作をしました、するとタブンネが今座っている場所に穴が開き、そのまま落下していきました。

気が付くとタブンネは草むらに倒れていました。此処はジャイアントホールです。
何が起こったのか分からず途方に暮れているタブンネでしたが、急に空腹に襲われます。ですが、辺りに木の実は見当たりません。
止むを得ず食べ物を探し歩くタブンネでしたが、辛うじて他のポケモンが食べた残骸が見つかった程度です。ですが贅沢は言っていられません。
「うぅ・・・。まずいよぉ・・・。新しいきのみが食べたいよぉ・・・。」タブンネは必死に木の実の残骸を貪りました。

翌日、いつの間にか寝ていたタブンネですが、大きな爆発音で目を覚まします。
辺りを見回すと、ポケモントレーナーがタブンネを大爆発で葬っては新しいポケモンの経験値を稼いでいたのです。
ここは危ない。そう思って逃げようとしたタブンネですが、立ち上がった瞬間足を滑らせてしまい、倒れこんでしまいます。
「草むらが揺れた!?またタブンネが出たか!」トレーナーはタブンネの方に向かってきます、タブンネは慌てて上手く立ち上がる事が出来ません。
「タブンネ発見!しかもレベルが高い!こりゃツイてるぜ♪さっそく爆殺してやる」そう言ってトレーナーはメタグロスをだして大爆発を指示しました。
大爆発をモロに受け、タブンネは体を焼かれるような激しい痛みに襲われ、吹き飛ばされます。
「うお!経験値大量♪」自分のポケモンが一気に成長する姿を満足げに眺めるトレーナーでしたが、ふとタブンネが目に入りました。
爆発により、体は焼けて皮が捲れ、手足が圧し折れています。

「あ~あ~、お前そんな体じゃもう助からないな。慈悲深い俺が止めを刺してやるよ。」そう言ってトレーナーはウルガモスを呼び出し。火炎放射を発動させました。
ウルガモスが放つ灼熱の炎に全身を襲われ、タブンネは苦痛に満ちた表情で声にならない悲鳴を上げます。しかし、どんなに苦しもうと自分を炙る炎が消える事は無かったのです。
こうして、タブンネは全身を焼かれて殺されてしまいました。元の飼い主だったトレーナーがそれを知る事は一生ありません。
最終更新:2014年11月05日 13:23