「もうつかれた!あそびたいよ!」
「坊や、わがままを言っては駄目よ。みんな一生懸命働いてるんだから」
ママはいつもそうやってボクをがまんさせようとするけど、それっておかしいよ!
ボクまだこどもだもん、おとなといっしょにはたらかせるなんてへんだよ!
「そんな大きな声を出さないで……みんな呆れて見てるじゃない。
ここではみんな働くのが決まりなの、働かないとご飯が食べられないのよ」
「しらないよそんなの!やだやだ、もうやだもん!」
ボクのこえをきいてマスターがやってきた。やさしくていいひとだけど
ごきげんとろうとしたってムダだからね!
「なあママンネ、君はそのまま仕事を続けてくれ。俺が言い聞かせるよ。
子タブンネちゃん、ちょっとこっちに来てくれないか」
「お願いします…」
ママがせなかをおすから、しょうがなくボクはマスターのあとをついていった。
こっちだっていいたいことがたくさんあるんだもんね。
おうちのうらのがけのあたりで、マスターはぼくにはなしかけてきた。
「子タブンネちゃん、ここではみんな働いて自分のご飯を得ているんだよ。
遊びたい気持ちはわかる、でもそれがルールなんだ。
君には決して難しいことをやらせているつもりはない、そろそろわかってくれないか」
だからしらないもん。ルールなんてマスターがきめたんじゃないか。
どうしてボクがしたがわなきゃいけないの?やだよ!
マスターはオレンのみをとりだして、ボクにわたした。
「ほら、このいつも何気なく食べてるオレンの実だって、みんなが苦労して作った結晶なんだ。
汗水流して作ってみればわかる、きっと格別美味しいはずだよ」
こんなものでごまかされないよ!どうせくれるならオボンのみをくれればいいのに。
なんだいこんなもの!えいっ!
ボクはオレンのみをふんづけてやった。そしたらマスターがみるみるこわいかおになったんだ……
「そうか、よくわかった……そこまでして働きたくないんだな? だったらどこへでも行っちまえ!!」
マスターはボクのからだをつかむと、ボクをおもいっきりほうりなげた。
「わあ――っ!!………」
もりのなかにおっこちたボクは、そのままきをうしなっちゃった……
………きがついたら、ボクはもりのなかでたおれてた。
あいててて……マスターったらひどいよ……ママにいいつけてやるから……
でも、ここどこだろう……
まわりはたかいきがたくさんはえてて、そらもほとんどみえない。
きっとおうちのうらての、もりのなかだ。ずいぶんとおくまできちゃったんだ……
「ママー!ボクここだよー!たすけてー!!」
さけんでみたけど、ママのへんじはきこえない。だれのこえもきこえない。
どうしてボクがこんなめにあわなくちゃいけないんだよ、マスターのバカ!!
……おなかすいてきちゃったなあ……さっきマスターがくれたオレンのみ、たべとけばよかったなあ……
だんだんあたりがくらくなってきちゃった。もうよるになっちゃう、かえらなきゃ……
ボクはひっしでがけをのぼりはじめた。
はぁっ、はぁっ、はぁっ……どれくらいのぼったんだろう。それでもぜんぜんうえがみえないよ。
さっきからあめがふってきてる。それにどんどんくらくなってきてるよ。
てからちがでてるし、あしのうらのハートのにくきゅうもきずだらけになっちゃった。
どうしてこんなことになっちゃったんだろう……
こんなことなら、マスターのいうことをちゃんときいておけばよかった。
ママをこまらせたりするんじゃなかった。
ごめんなさい、ママ。ごめんなさい、マスター。ボクがわるいこだったよ。
もうわがままいいません、ちゃんとはたらくよ、だからたすけて……
あめがつよくなってきて、すごくさむくなってきた。はがガチガチなってる。
このままここにいたらしんじゃう。のぼらなきゃ、つらくてものぼらなきゃ……
ぼくはなきながらのぼった、ひっしでのぼりつづけた。
あ……みえた、おうちだ!やっとたどりついたんだ。
からだじゅうビショビショで、てあしがかじかんじゃってるけど、ぼくはおうちにはしった。
おうちのなかはくらくなってる。もうみんなねちゃったのかなあ。
「ママ!マスター!ぼくだよ、あけてよ!」
ひっしでガラスをたたいたけど、だれもきづかないみたい……
「ごめんなさい、わがままいってごめんなさい!だからあけてよ!おねがい!」
やっぱり……だれもきづいてくれない……
「あけてよ……なかにいれてよ……さむいよ……ママ……」
なんだか…めがみえなくなってきた………それに……ねむくなってきちゃったよ……
ごめんなさい……ママ……マスター……きっといいこになるから…………
なかに……いれてよ…………さむいよ…………さむ……い…………
(終わり)
最終更新:2014年12月31日 20:07