ハツネちゃん その3 後編

「できましたリード先生」
副支部長さんがリードさんを呼んだよ。
そこには大きなミキサーができてたの。
「ご苦労だったな、コジョンド、あの雌豚をぶちこめ」
指示を受けたコジョンドさんはモモカさんを持ち上げてミキサーの中に入れたの。
「フフーーーッ!!!」
オーディンさんは助けに行こうとするんだけど……起き上がることもできないよ。

「ああっ、オーディンさ……って何これ!?出してよ!」
あれっ?ミキサーの中のモモカさんが目を覚ましたよ、死んじゃったと思ってたのに。
「麻酔銃の効果が切れたか」
ガンマさんがつぶやいてるよ、じゃあモモカさんは眠ってただけなのね。
早く出してあげないと……
「お前たちにあの2匹は助けられない。一歩でも前へ出たり
技を出すそぶりを見せた瞬間私がお前たちを殺す」
だけどコジョンドさんがハツネたちの前に立ちはだかるの。
ううっ、モモカさんたちが苦しんでるのに何にもできないなんて……

「ハツネ、何やってるのよ、早く私をだし……うっ」
モモカさんが大声を出して助けを求めてたら急に吐いちゃった。
「このミキサーは何十匹ものタブンネをジュースにしてきたからな。
そいつらの死肉、血、糞尿などのにおいが充満している。
この中にぶちこめばどんなタブンネも目を覚ますさ」
リードさんがミキサーから出ているチューブを持ちながら
オーディンさんのところに行くよ。
「なんだまだしっぽを味わってるのか。
ならば鼻からジュースを飲ませてやろう」
そしてリードさんはオーディンさんの鼻の穴にチューブを詰め込むよ。
「うっ……」「フーッ!フーッ!」
オーディンさんもモモカさんもとっても苦しそう……

「じゃあメインディッシュの時間だ、よく味わえよ。
バチュル!ミキサーを動かせ!」
指示を受けたバチュルさんはミキサーに飛び乗って電気を流したの。
『ウイイイイイイン!!!』
それと同時にミキサーが動き始めたよ。
「ギャアアアアアア!!!!!」「フーーーーーーーーッ!!!!」
トレーニング室にはミキサーの音と一緒に
オーディンさんとモモカさんの声が響いてるよ。
ううっ、そしてモモカさんがどんどんミキサーでなくなっていくよ。
足が、おしりが、おなかがミキサーでなくなっていくよ……
そしてミキサーのチューブからは真っ赤な液体が流れて
オーディンさんのところに流れていくの。
液体を飲まされているオーディンさんのおなかがどんどん膨らんでいくよ。
そして……
 ・
 ・
『パァン!!』
オーディンさんのおなかが破裂しちゃった……
そしてモモカさんは全部液体になっちゃった……
なんでこんな目に合わなきゃいけないの…?
テイルさん、早く帰ってきてよぉ……

「戦士オーディン、食いすぎにより死亡か……みっともない最期だったな」
リードさんは変わり果てたオーディンさんを見て平然としてるよ。
タブンネは死んでるのが当たり前のように思ってるなんて
ハツネはとっても悲しいよ……

「あ~~~っ!!おとうさまとおかあさまをよくも~~っ!」
その時子供たちがリードさんにむけてめざめるパワーを撃ったよ!
『バン!』『バチッ!』『ゴガァン!』
リードさんのところから煙があがってるよ……
「よし、つぎはおかあさまをうったあのにんげんだ!
わるものはあいつみたいにみんなぼくたちがやっつけよう!」
お兄ちゃんがお姉ちゃんたちに話しかけたよ。
「おとうさまとおかあさまのかたきうちよ!」
「このひのためいっぱいれんしゅうしたんだ!」
お姉ちゃんとぼうやもはりきってるみたい。

子供たちがめざめるパワーの準備をし始めた時、リードさんのところの煙がはれてきたよ。
えっ?ハツネたちはビックリしちゃった。
何とコジョンドさんが間に入ってめざめるパワーを全部受けていたの。
しかも全然ダメージを受けている様子がないの。
「これは何だ?まさかこんなパワーで私たちを倒せるとでも思っていたのか?」
コジョンドさんは手をブラブラさせながら子供たちに話しかけるよ。

「ぜんぜんきいてないよ……」「ぼくおとうさまみたいにつよくなったのに……」
お姉ちゃんとぼうやはダメージがほとんどないことがショックでふるえだしちゃった。
「はあっ!はあっ!はあっ!はあっ!」
一方お兄ちゃんはあきらめずにめざめるパワーをコジョンドさんに何発も撃ちだしたよ。
お兄ちゃんの攻撃は昨日よりもっと速くなってるよ。
だけどコジョンドさんはもっと速い動きで
お兄ちゃんの攻撃を全部避けちゃうの。
「動かない的相手に特訓していたようだが実際のバトルでは相手は動くのだぞ?
お前たちは私たちを倒す特訓をしていたようだが無駄な努力だったな」
そんな……あんなにがんばって練習してたのに……

コジョンドさんは避けながらちょっとずつお兄ちゃんのところへ寄ってきて
ついにお兄ちゃんの目の前に来ちゃった。
「この距離なら当てられるだろう。さあ、撃ってみろ」
コジョンドさんがお兄ちゃんを挑発するよ。
「はあぁぁぁぁ」
お兄ちゃんはめざめるパワーの準備をしているよ。
『パシッ!』
だけどコジョンドさんは準備をしているお兄ちゃんのお顔を腕の体毛でたたいたの。
お兄ちゃんは後ろにふっとんで後頭部をぶつけちゃった。
「パワーをためるのが遅すぎる。
そんなゆっくり溜めていたのでは実戦で使えないぞ」

「うわぁぁぁぁ!!おかおがいたいよぉ~~~!!
あたまもズキズキするよぉ~~~!!」
吹っ飛んだお兄ちゃんはお顔をおさえながら泣き出しちゃった。
「なんだ受け身や防御の練習はしていないのか。
訓練の際は普通身の守りから学ぶものなんだがな、
まあめざめるパワーの溜め方をみるかぎり素人の我流バトルのようだが」
「いたいよぉ~~!!ちがいっぱいでるよぉ~~!!
いやしのはどうをしてよおかあさま~~!!」
冷静なお兄ちゃんが泣き叫んでるよ。

「これが戦士オーディンの息子か、情けない。
戦士はダメージを受けても泣き叫んだり死んだ者に泣きついたりしないものだ。
まあタブンネなど攻撃、防御、補助、何をやらせても3流の役立たず。
周囲の足を引っ張る役立たずが戦士を名乗ることのなんとおこがましいことか」
コジョンドさんはお兄ちゃんをみながらつぶやいてるよ。

「まあいい、ポケモンの繁栄を害する役立たずは始末してやろう」
そう言ってコジョンドさんははどうだんのかまえをとったの。
お兄ちゃん!はどうだんがくるから逃げてえぇぇぇ!
ハツネはお兄ちゃんに叫んだよ!
「うわあぁぁぁ!!こわいよぉ!!てんごくにいきたくないよぉ!!」
お兄ちゃんは逃げようとするんだけど腰が抜けちゃったのか
はって逃げてるよ。
足元をみるとオシッコで床がぬれちゃってる……
「短い生涯を終えてしまうわけだが私を恨むなよ。
恨むならタブンネに生まれてしまったこと、
妻に気をとられてサイコキネシスを撃たなかった父親を恨むんだな」
そういった後コジョンドさんはお兄ちゃんにはどうだんを撃ったの。
『ドガァァァン!!』
 ・
 ・
煙がはれたあと、全身がつぶれちゃったお兄ちゃんだけが残ってたの……
ううっ、みんなどんどん死んじゃうよぉ。
夢ならはやくさめてよぉ。

「オーディンめ……あのとき私をサイコキネシスで攻撃していれば
この子供は死なずに済んだのに大事な局面で判断を誤りおって……
いや、私が倒れたとしてもリード先生たちが殺しにいくのだから
寿命が数分かわっただけか」
コジョンドさんは死んじゃったお兄ちゃんをみながらいろいろ考えているよ。
だけど反省してる様子や罪を悔いる様子は全然ないよ……

「お、おにいちゃん……」
ぼうやはボロボロになったお兄ちゃんをみてへたり込んじゃった。
「おにいちゃ~ん!!うわあ~~ん!!」
お姉ちゃんはお兄ちゃんのところに駆け出して泣き始めたよ。
こんな小さな子供まで殺すなんてひどい、ひどすぎるよ。
「うわあああん!!うわああああ『パン!』……」
だけどタブデッドはお姉ちゃんも殺そうとしたの。
「耳障りなんだよ!」
お姉ちゃんはのどを鉄砲で撃たれちゃって血がいっぱいでてるの。
お姉ちゃんもこのまま死んじゃうの……?

ダメだよ!今この子たちを守れるのはハツネしかいないんだよ。
とにかくテイルさんが帰ってくるまでこの子たちを守らなきゃ!
もう誰も死なせない!
勇気を出すのよ!ハツネ!!

ハツネはお姉ちゃんのところに行っていやしのはどうをしてあげたの。
「いやしのはどうかよ。
そんなことしたって死んじまうのに無駄なあがきだなハハハハハ!」
ガンマさんが笑ってるよ。
だけどハツネのしてることは無駄じゃないよ。
お姉ちゃんを治して、そしてお姉ちゃんとぼうやはハツネが守るんだから!
ハツネはハートにそう誓ってお姉ちゃんののどを治してあげたよ。
幸いにもお姉ちゃんののどの傷はふさがったよ。
これで一安心………
 ・
『コトッ』
だけどお姉ちゃんは動かなくなっちゃった……
お姉ちゃんのハートの音を聞こうとしたんだけど、聞こえないの……
いったいどうして?

「おいおい銃弾取り出してからいやしのはどうをしてやれよ。
出血ふさいだって窒息したら意味ねーだろバ~~カ!」
「いえいえガンマさん。不器用なタブンネに銃弾を取り出すなんて無理ですよ。
他の血管なども傷つけてしまいいやしのはどうをする前に死んでしまいますよ。
こんなおバカさんがナースをつとめるなんてポケモン医療の将来が心配ですねぇ」
ううっ、お姉ちゃんまで死んじゃったよぉ……
せっかく癒しの力があるのに何もできなかった自分が悔しいよぉ……

「さて、残りは2匹か……次はその子供にするか」
そう言いながらコジョンドさんがぼうやに近づいてくるよ。
この子は、この子だけは死なせないんだから!!
ハツネはぼうやの前に立って手を広げたよ。
「どくんだ」
コジョンドさんはハツネに怖い顔でそう言ったよ。
だけどハツネはここから動か……『バシッ!!』
 ・
気づいたらハツネはコジョンドさんに殴られて吹っ飛んじゃってたよ……
ううっ、ほっぺが痛いよぉ。
だけどぼうやを守らないと……
ハツネは起き上がってぼうやのところに行こうとしたよ。
だけどぼうやはコジョンドさんに頭をつかまれちゃった……

「さて、この子供はじわじわと激痛を与えて殺すとするか。
まずは両腕の骨を折ってやろう」
コジョンドさんはハツネにそう言ったの。
「えぐっ……いたいのはやめて……」
ぼうやも涙を流してお願いしてるよ。
おねがいコジョンドさん、これ以上罪を重ねるのはやめて!
『ポキッ』
「うわぁぁぁぁぁ!!」
だけどコジョンドさんはぼうやの右腕を折っちゃった……

「どうした?次は左腕を折るぞ。
この子供がどうなってもいいのか?」
ううっ、よくないよぉ。
だからやめてってお願いしてるんじゃない……
『パキッ』
あっ……左腕も折られちゃった……
ぼうやは痛みのあまり気を失ったみたい……

「私たちがお前の説得を受け入れないのはわかっているはずだ。
なぜ私のもとへこないのだ?」
だってハツネはバトルしたことないし……
それに、ルールのない暴力っていけないことだと思うの。
コジョンドさんだって殴られたりしたらイヤでしょ?
ポケモンも人間さんもみんな平和に仲良くすごせるようにしようよ。
「……次は耳を引き裂く。これは腕を折ることの何倍もの激痛がするから
気絶したこの子供も目を覚ますだろうな」
何で話をきいてくれないの?ハツネは暴力で解決なんてしたくないよ……

『ビビッ ビリリリッ』
「ミギュワギュァァァァァワャァァァァ!!!」
それなのにコジョンドさんはぼうやの右耳を引き裂いたの。
ぼうやはお顔が血で真っ赤になってるよ……
こんな小さい子供になんでこんなひどいことを……

「ひどい?ひどいのはお前の方だろう。
なぜこの子供を取り返しにこない?」
ハツネは暴力をふるうなんてできないし嫌なの!
だからお願いしてるってさっきも言ったじゃない。
「なるほど、自分が戦いたくないからこの子供は見殺しにしてもいいと……
とんでもなく自分勝手なポケモンだな。
タブンネというポケモンは大概そうだ。
自分はいやしのこころを持つ優しいポケモンだから戦いたくない。
危険なことは他のポケモンや人間にまかせて自分は後ろでサポートや補助をするだけ。
それでいて危険を冒した者が成果をあげると自分のおかげだと声高に主張する。」
違うよ!ハツネはぼうやを死なせたくないよ!
だけどハツネはバトルなんてできないから……

「何が違う!お前は今子供の命より自分の意思を優先しているではないか!
本当に優しいのならバトルができなくても命を守るため立ち向かうはずではないのか?
自分の事を第一に考えるお前は優しいのではない!
ただ自己中心的なだけだ。
ほら、こうしてる間にもこの子供はどんどん衰弱していくぞ。
左耳を引き裂いたらもう死ぬだろうな」
そう言ってコジョンドさんはぼうやの左耳に手をかけたの。

やめて………やめてえぇぇぇぇぇ!!!!
あああああああああああああああぁぁぁ!!!!

ぼうやを!ぼうやを返して!
どうすればいいかわからなくなったハツネは
気が付いたらコジョンドさんを攻撃していたの。
攻撃する自分も攻撃を受けるコジョンドさんも見るのがこわいから
目を閉じていたけど……
コジョンドさんを攻撃するたびハツネの手とハートが痛くなるよ……
なんでみんなこんな苦しいことを楽しそうにできるの?

はぁ、はぁ……これでいいのよね?
さあ、ぼうやを返して……
ハツネはようやく目を開けてコジョンドさんにお願いしたよ。
「わかった、受け取るがいい」
そう言ってコジョンドさんはハツネにぼうやを返してくれたの。
待っててねぼうや、今ハツネがいやしのはどうをしてあげ……えっ?

ハツネはぼうやを治してあげようと思ったの。
だけどぼうやはもう死んじゃってたの。
ぼうやの体はいっぱいアザができててはれちゃってたよ。
コジョンドさん、なんで、なんでぼうやにこんなことするの?
「私のせいにしてもらっては困るな。
自分でその子供を何発も殴っていたではないか。
自分の手を見てみるんだな」
ハツネは両手を見てみたよ。
ハツネの両手はぼうやの血で汚れていたの。
まさかハツネがぼうやを……?

「そうだ、お前が殺したのだ。
憎しみのこもった攻撃だったぞ。
私ではなく前に差し出したその子供を何発も攻撃するなんてよほど憎かったのだな」
そんな……ハツネが殺しちゃったなんて……
「まさか我々の手伝いを本当にしてくれるとは思いませんでしたねぇ。
そもそも我々がこうしてオーディン達を殺せたのは
このタブンネが私を家に入れたからです。
私を入れなければこの5匹は
今日死なずにすんだのにあなたは取り返しのつかないことをしましたねぇ」
そうよ……ハツネのせいでみんなが……
ハツネがみんなをこんな目に……
ううっ、ハツネのハートがとっても痛いよ……

「なんだこのリボン?放心してるぜ?
自分がみんなを死に追いやったのがよっぽどショックだったみたいだなハハハ」
「リボンは我々に危害を加える技をもっていないようだな。
ならばこの最後に残ったリボンの始末を新人に任せるとするか。
実戦デビューだ、今までの訓練の成果を存分にふるってやれ」

リードさんの指示を受けてフードをかぶった人がハツネのところに来たよ。
とうとうハツネが殺される番なのね……
ハツネはぼうやを殺しちゃったから天国にいけないよね。
だから天国へ行ったオーディンさん達に謝ることができないのが残念だな……
「ハツネ……」
えっ?その声は……
「会いたかったわハツネ」
フードをとったその人はママだったの。
ママ……ハツネも死ぬ前に会えてうれしいよ。
誘拐されてからママのことを考えない日はなかったよ。
でもどうしてここにいるの……?

「あら?私がなんでここにいるのか不思議がってるみたいね。
それはね……アンタに復讐するためよ!」

『バチン!』

え……復讐?どうしてハツネが復讐されなくちゃいけないの?
オーディンさんとのお見合いが失敗したことがそんなにいけないことなの?
「アンタのせいで私がどれだけひどい目に合わされたか……
これを見なさい!」
そういってママは数枚の写真を見せてきたの。
その写真はハツネがミカエルさんとデートしている写真だったよ。

「アンタがミカエルとデートした日の夜、これらの写真がネット上に流れたの。
タイトルは【糞豚害獣タブンネ】
内容は公園で糞を垂れ流し、きのみを盗み、あげくの果てに交尾までするアンタたちの
醜い姿を写した写真が何枚も載ってたわ」
違うよママ!誤解だよ!
ハツネはウンチなんかしてないしきのみも全部ミカエルさんが…
それにハツネは襲われただけだよ!信じてよママ!
「何言い訳しようとしてるのよ!このハートのリボンはアンタでしょ!
この手作りのリボンをつけてるのは世界中でアンタだけよ!
このリボンのせいで写真に写っているのはアンタだと特定され……
そして、その非難は全て私に向けられた!」

『ブチッ』
痛いよ!リボン引っ張らないで!
お耳の毛が抜けちゃうよ!
『バン!』
あ……ハツネの宝物のハートのリボン……
何でママがグシャグシャに踏みにじるの……

何悲しそうな顔してるのよ!悲しいのはこっちよ!
写真が流れてから家のパソコンには
ハツネちゃんに幻滅した』だの『トレーナーのしつけが悪い』だの非難するメールが
何千通も流れてくるし
なかには嫌がらせに汚物や食べ残しなんかを家に送りつける人もいたわ!
おかげで私はパソコンがこわくなったうえマンションをでていく羽目になったの!
どれもこれもアンタたちのせいよ!!」
ママの顔……とっても怖いよ……
「そして私は決心したの!
醜い本性をもつタブンネを根絶やしにするって!
そのためにタブデッドに入ったのよ!
そして……今日からすべてのタブンネを抹殺するわ!
最初のターゲットは私が最も嫌いなタブンネハツネよ!」
そんな……ハツネのコト嫌いにならないでよ。
ハツネが赤ちゃんのころからあんなにかわいがってくれたのに……

「アンタにはすっかりだまされちゃった……
家ではお手伝いもすすんでやるいい子だったのに……
私がいないところじゃとんでもないワルだったのね」
『パァン!』『パァン!』『パァン!』『パァン!』『パァン!』
痛いよ!ハツネのほっぺぶたないで……
「それにここでアンタを見てたけどとんでもない無能だったのね。
タブンネ自体が無能なクズのはタブデッドで勉強して知ってたけど……
判断力のなさ、頭の悪さ、小さい子供まで戦ってるのに何もしない無責任さ……
こんなクズを優秀だと思って可愛がってた自分がムカついてしょうがないよ!!」
『バキッ!』
ううっ、お鼻が痛いよぉ……
鼻血が止まらないよぉ……

「あら?そういえばアンタしっぽはどうしたの?」
しっぽは社長さんにとられちゃってもう生えてこないんだって……
「アンタはシャンプーしてもらうのが大好きだったわねぇ。
アンタにシャンプーしてあげようと思ってたけどこれじゃあできないわね。
だから私がアンタに新しいしっぽをプレゼントしてあげるわ」
プレゼントって何……?手術しないとしっぽは生えてこないんだよ……
だけどママはうつぶせで倒れているハツネのしっぽがあったところをなでなでして……

『ブスッ』
いやぁぁぁぁぁぁ!!
「あら大声出すほどうれしかったのね。あと2本あるからね」
『ブスッ』『ブスッ』
ぎゃあ!いやあぁぁ!あぁぁぁ!!
「どう?ドライバーでつくった新しいしっぽよ。
赤・青・黄色と3色でとってもカラフルね♪
ドライバーをしっぽにしたポケモンなんてアンタくらいなものよぉ。
この姿をタブンネだいすきクラブにおくったらみんな大喜びね♪」
ううっ、痛いよぉ……抜いてよママ……
ハツネじゃ手が届かないよ……

「抜かないってことは気に入ったのね。
このしっぽはシャンプーしなくても形が崩れないからいいわよねぇアハハハハ」
こんなのママじゃないよ……
もとの優しいママに戻ってよ……

「はっ?私は今まで何をしていたの?」
その時ママの様子が変わったの、急に驚いて……どうしちゃったの?
「ああハツネちゃん!私はハツネちゃんになんてことをしてしまったんでしょう!
こんなひどいことをして……私はダメなトレーナーだわ」
あれ?ママがようやく正気に戻ったの……?
「ごめんなさいねハツネちゃん、痛かったでしょう。
だけどもうしないわ」
ママ……本当にもうしない?優しいママに戻ってくれるの?
「私が信じられないの?信じられないのなら私のハートの音を聞きなさい。
そうすれば私が嘘をついてるかどうかわかるでしょ?」

どうやらママは本当に戻ったみたい……
つらいことがいっぱいあってちょっと我を忘れてただけなのね。
ママ……ハツネはうれしいよ。
ハツネはママのところへ行ったよ。
「こっちに来てくれてうれしいわ……」
そう言ってママはハツネを抱きしめてくれたの。

ママに抱きしめてもらったのはいつぶりだろう?
小さいころはママのハートが奏でる優しい音を聞きながら眠っていたことを思い出したよ。
そして今もママのハートからは優しい音が…………あれっ?

『ビビビビビビビビビッ』
きゃあぁぁぁぁ!!!
「まったく本当に学習能力がないわねアンタは、
私がアンタへの復讐をやめるわけないでしょ。
この服はね、タブデッドが開発したせいでんきが流れる服よ。
警戒心ゼロのバカなアンタたちとスキンシップをはかり
完全になついたところで動きを止める。
自分たちのバカさを理解させるのと裏切りのショックを同時に与える素晴らしいものよ」
ううっ、体がしびれちゃって思うように動かせないよぉ……

「さて、アンタへの復讐はまだ終わらないから……ねっ!!」
『ドゴッ!!』
ぐっ、ハツネのおなかにするどい痛みがするよぉ……
でもどうして?昔ママに蹴られた時より何倍も痛いよ?
「そうだ、そこがタブンネのレバーだ。
そういった急所を的確に攻撃すれば子供や女性でもタブンネに大ダメージを与えられる」
「この日のために私はタブンネのこといっぱい勉強したのよ。
習性や生態はもちろん、弱点や攻撃してきたときの対処法などいっぱいねぇ!」
『ドンッ!』
ぐはっ…おなかが破裂しそうだよぉ……
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
ぐっ、やめ、てよ、いた、いよ、マ、マ……
だけどママはハツネのおなかを何回もふみつけるの。
ハツネの口からは血や朝ごはんのきのみがいっぱいでてきちゃったよ……

「はぁ、はぁ……たっぷり苦しんだみたいね……?
そろそろ……とどめを……さしてあげるからね……」
ママは汗びっしょりで息を切らせながらするどい爪のついたグローブをはめたよ……
ハツネは痺れと痛みでもう動けないよ……
アバラ骨も折れちゃってるみたい……

「アンタへのとどめは……ミキサーとか……いろいろ考えたんだけど……
私は一応アンタの育ての親だから……アンタにふさわしい死を……
考えてあげたのよ……」
ハツネにふさわしい死……?

「アンタの名前…【ハツネ】私がどういう意味でつけたか覚えてる?」
覚えてるよ……ハートの……音って……

「タブンネの特技……ハートの音を聴く能力から……つけた名前よ。
アンタが赤ちゃんのころ……私のハートの音を……聞きながら……
眠ってたわね……」
そういってママはハツネの左胸に手を乗せたよ。

『グスッ』
えっ?
『ブチッブチッ』

「見えるかしらハツネ……?これが……アンタのハートよ。
きれいなピンク色じゃないのね……?
それに……こんな奇妙な形をしてるのね……
アンタの…性格がねじ曲がってるから…こんな形をしてるのかしらね?」
これが……ハツネのハート……こんな気味の悪いものなの……?

「いまから私がアンタのハートを握り潰してあげるわ。
最期の最期に自分のハートが潰れる音をきいておやすみなさい」
そんな……やめてよ……いやだよ……マ……



―――ブシュッ
最終更新:2015年01月03日 00:50