飼っているタブンネに子供が生まれた。なかなか可愛い。
しかしこのベビンネ、どうも体が弱くてお乳を上手く飲めないらしく、
母親のタブンネも困っているようだ。
ここは飼い主として、面倒を見なくてはいかんだろうな。
授乳用の注射器と、細いチューブを買ってきた。
ミルクを与えても飲む力が弱くて喉に詰まらせてしまうような赤ん坊には、
チューブを飲みこませて、胃に直接送り込んでやるのだそうだ。
早速ミルクを温める。火傷しないように、ぬるくしないとな。
そしてチューブをつけた注射器から吸い上げる。ちゅうぅーーーーーってね。
さてとベビンネくん、ちょっとお口を開けてね。
「チィチィ…」
嫌がってるけど、しばらく我慢してくれ。チューブを口の中から、そっと胃まで差し込む。
「チィ!…チィチィ!」
胃カメラ飲むようなもんだから気持ちいいもんではないだろう。
手をパタパタさせて可愛らしく抵抗するが、辛抱だよ、辛抱。
注射器を押して、ちゅうぅーーとミルクを胃の中に送り込んだ。
「チィ……チィ……♪」
お腹が膨れていくのはわかるようで、抵抗が少し弱まった。
ゆっくりと注射器の中身を全部注入し終わって、チューブを抜く。お疲れさん。
「チィチィ♪」
ふう……気を遣うなあ………
食事が終わったら、今度は下のお世話だ。
生まれ立ての子は自力排泄するのが難しいので、刺激を与えて排泄を促してやらないといけないらしい。
ティッシュを丸めて、下腹部をぽんぽんと叩いてやる。
優しく、そっとね。
ぽんぽんぽん、ぽんぽんぽん、ぽんぽんぽん…
「チィチィ…♪」
おしっこがチョロリと出てくる。根気の要る作業だ。もう一叩き、ぽんぽんぽん…
「チィ♪」
ティッシュがだいぶ黄色く染まると、スッキリしたのか気持ちよさそうな顔をしている。やれやれ……
次は便も出させなくては。尻尾を持ち上げて、新しいティッシュで肛門の周辺を同じように刺激する。
とんとんとん、とんとんとん、とんとんとん…
「チィ…チィ…」
しばらく叩いていたら、とろりとした便が出てきた。赤ん坊らしい軟便だ。
「チィチィ♪」
拭き取って、ウェットティッシュできれいにする。結構疲れるわ、これ……
「チィ、チィ」
あれ、もうお腹空いたのかな。ちょっと待っててね、準備するから。
「チィ、チィ」
それともおしっこを出し足らなかったかな、わからないからまずは授乳にしよう。
「チィチィ…」
はいはい、ぐずらないでね。さっきみたいにもう1回チューブ入れるからね。
「チィ!チィー!」
我慢我慢、チューブ入れるよ、はい、そーっと、そーっと……
「チィチィ!」
おとなしくしててってば、ミルクをちゅうぅーーー、ちゅうぅーーー……
「チィチィチィ!」
ちゅうぅーーー…………
「チィィーーー!!」
………って、ああああああああああああ!!やってられるかああああああああああああああ!!!!!
「このガキャア!!人が下手に出てりゃあいい気になりやがって!!俺は本来短気なんだよ!!
カップラーメンも3分待てずに1分くらいで半固形のまま食っちまうくらいなんだよ!!
チィチィじゃねえ!!ミルクくらい自分で飲みくされ!!」
キレた俺はベビンネを頭からミルクの鍋に突っ込んだ。ベビンネは手足をバタバタさせてもがく。
「チビィ!!ゴボボボゴバァ!!ピィィ!!」
「飲め!!死にたくなかったら飲まんか!!」
俺の怒声が聞こえたかどうか知らんが、ゴクゴク飲んでいるらしい感触がある。
やればできるじゃないか、ふはははは!!
「チヒィ……ヒィー……ヒィー……」
引き上げると、全身ミルクまみれのベビンネは青息吐息だ。泣いているようだが顔面が真っ白だからわからん。
「よし、たっぷり飲んだな。そんじゃトイレに行くぞ!」
俺はベビンネをトイレに持っていった。さっきみたいに優しくしてはやらん!
「いいか!男たるものションベンやクソくらい人様に頼るんじゃねえ!!
丹田に気合を入れて力め!!こういう風にな!!」
そう言いながら、ベビンネの腹を前後から絞るようにぎゅーっと押してやった。
「チビィィーッ!!」
大量のミルクを飲まされた直後にそんな強烈な刺激を与えられてはひとたまりもない。
ジョロジョロジョロジョロジョロ!!ドバババババババババババババ!!
洪水のようにベビンネは小便と大便を垂れ流した。
「もう一押しいっとくか!!」「ピィィーーー!!」
もう一度ぎゅーっと押すと、残っていた大小便が搾り出された。さすがにさっきほどの勢いはない。
あらかた出尽くしたようなので、水を流す。俺までスッキリした気分だ。
「チヒヒィ……」
ベビンネは脱水症状でも起こしたかのようにぐったりしていた。
顔はまだミルクでベタベタ、下半身も排泄物で汚れている。これでは部屋に戻せんな。
「よし、ここで洗おう!!」「チィッ!?」
俺はベビンネを便器に放り込んだ。驚くベビンネを尻目に水を流す。
「チギャアアアーーーー!!」
水流に翻弄され、洗濯物のようにくるくる回るベビンネ。大丈夫、お前が流れるほどその穴大きくないから。
「ピギャアーーー……!!」
ほうら泳げ泳げ!!世の中に出ればもっと厳しいことが待ってるぞ!!
しかし水が弱まり、ベビンネの上半身が便器に吸い込まれ、足がピクピクしているのを見て俺は我に返った。
しまった、ついやりすぎた!カッとなると後先考えず無茶をするのが俺の悪い癖なのだ。
すまんすまん、許してくれ!俺は溺死寸前で半失神状態のベビンネを引きずり出し、水を吐かせた。
風呂場できちんと体を洗って乾かしてやる。本当にすまん。
そこに散歩に行かせていた母親タブンネが帰って来た。
育児疲れもあるだろうから、俺が面倒を見ている間、気晴らしに散歩にでも行っておいでと外に行かせていたのだ。
「ミッミッ♪ミィ?」
赤ちゃんの具合はどう、だって?う、うん、ちゃんと面倒見てたよ………たぶんね。
それ以来ベビンネはぐずってお乳を飲まない時も、俺がミルク鍋を見せれば必死で飲むようになったし、
耳元で「トイレ行こうか」とささやくと、目の色を変えて自力排泄できるようになった。
母親タブンネは俺に感謝しているようだが、ベビンネのひきつった笑顔には気づかないようだ。
……ま、いいか。
教訓:力づくでも何とかなる!
(終わり)
最終更新:2015年02月11日 15:21