Aはメスのタブンネを持っていた、と言ってもAのタブンネではない
Aの購入した家の裏の物置小屋に住みついていたのだ
これ幸いと、Aは虐待を開始した
殴る蹴るは当たり前、時には熱湯を浴びせたり一晩中大音量のラジオを流したりした
しかしふとAは思った、無抵抗すぎやしないかと
Aがどれだけ虐待を加えても、タブンネは抵抗は一切せず殴られっぱなしでいた
何かあるのではないか・・・そう思ったAは、翌日の昼に考えを実行に移した
「タブンネちゃ~ん」
「ミィ!?」
タブンネは部屋の隅のダンボールからさっと離れ、震えながらAと対峙する
「今日はいじめないよ、それよりプレゼントを受け取ってくれるかな?」
Aはオボンの実をタブンネの足元に転がした
「ミッ!」
Aはタブンネがオボンにかじりついている隙に、ダンボール箱へ向かった
そして中から小さなタブンネをつかみ出した
「なんだこりゃ・・・」
「チィ!チィィィィィ!!」
タブンネはオボンを放り出し、Aに土下座した
「ミィ・・・ご・・・ゴメンナサイ、出て行くから、ソノ子ニハ何もシナイデ・・・!!」
タブンネは能力をフル動員して人間の言葉を話し、子供の命乞いをした
「あ~、気持ち悪い!!」
ベシャ!!
Aは力まかせにベビンネを床に叩きつけた
ベビンネは床に一回バウンドすると、目を見開いたままピクリとも動かなくなる
「ミフィヤァァァァァァァァアァァァァァァァァァアアアアアアアアア!!」
タブンネは絶叫するとベビンネの死骸に飛びつき、ペロペロ舐め始めた
Aはこれまでにない爽快感を得ながら小屋を後にした
翌日、Aは小屋に向かった
ベビンネはあれ一匹だけではないかもしれない
もしかしたらまだいる可能性もある、それをどういただから・・・
「ミジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
無抵抗だったタブンネが口を大きく開けて踊りかかってきた時、完全に油断していた
とっさにAはタブンネの両肩をつかみ、噛みつきを回避する
タブンネは全身の毛が真っ白になり、目は真っ赤に充血し、その形相は鬼のそれに変貌していた
何かの血に染まった歯をガチガチ鳴らしながら、タブンネはAの首に噛みつこうとする
Aはタブンネの頭の両側面に手を移動し、一気にタブンネの頭をひねった
ポキリと頸椎の外れる手ごたえがして、タブンネはその場に倒れる
Aはタブンネの死骸を蹴飛ばすと、小屋を出て行った
Bは清掃員だ、Aの依頼で物置小屋の清掃に向かった
これまでにもタブンネ虐待の痕跡の清掃を行った経験があった
Aからは「物置小屋に住みついていたタブンネ親子を殺した」と説明を受けていた
これまで受けてきた依頼内容の中では珍しくも無いケースだ
BはAから小屋の鍵を受け取り、物置小屋へと入った
ひどい臭いに顔をしかめる
小屋の中央にはタブンネの死骸が転がっていた
「臭いの原因はこれか」
Bはタブンネの死骸に近づき・・・ふと、それが抱きしめているベビンネの死骸に気付いた
どういうわけかそれは、あちこちが食い千切られていた
ベビンネに手を伸ばした次の瞬間、バタン!とドアが閉まった
「!?なんだ・・・驚かせやがって・・・」
Bはドアへ近づいた、換気を良くするためにドアは開け放しておいた方が良い
「ん?」
ガチャガチャ
Bがドアノブをいくらひねってもドアは開かない
「・・・・・・・・」
Bは背後の気配に気づいた、ヒヤリとしたものがBのすぐ後ろに立っている
「チガウ・・・オマエジャナイ・・・」
Bは勇気を振り絞って声の主を振り返った
ぶるかでAの頭はいっぱいだった
翌日、Bはドアのすぐ傍で倒れているのをAに発見された
Bの黒かった髪は何があったのか、白髪になっており、目が覚めても口もきけない状態だった
その日の夜、Aは物置小屋ドアを開けた
中は臭い、恐らくタブンネの死骸の腐臭だろう
AはBがこの死骸の頭を踏んで転んだのだと結論づけた、しかしそれだけでああなるものなのか?
まぁいい、事故が起きてしまった以上自分でやるしかない
Aはしぶしぶ死骸へ近づく
フッと、電気が消えた、バタン!!と音を立ててドアがしまる
「?おかしいな、故障か?」
Aはドア付近に移動し、
スイッチをいじる、だが電気はつかない
そして気づいた、元々この小屋の電灯は電球を外してあった
灯りは窓から差し込む太陽の光のみだ
電灯の明かりなど、この小屋にはありえない
じゃあ、何の光で自分は照らされていたのだ?
その理由を思いつく前に、背後から何かがAの肩をつかんだ
「ミィツケタ・・・」
(完)
最終更新:2015年02月11日 15:39