今イッシュ地方で流行のポケモンミュージカル。ポケモン達が着飾り、各演目ごとのテーマに沿って演技をする娯楽の一つである。
そのミュージカルを俺はタブンネと共に観にライモンへやってきた。
「楽しみだね、タブンネ」
「みぃ♪」
チケットを二枚購入し席に着く。暫く経つと幕が上がり、今回の演目『もりでおさんぽ』が始まった。
キュートなイメージが女性に人気のこの演目。舞台に上がったポケモン達も可愛らしいポケモンばかりだった。
少々恥ずかしい気もするが、俺は可愛いポケモンが好きなのだ。
「あのドレディア、可愛いな。でも隣のエルフーンやエモンガも…」
「…みぃ………」
俺は隣のタブンネの事をすっかり忘れミュージカルに釘付けだった。その事に気付いたのも終わった後である。
ミュージカルホールを出ると、寒い風が吹き付けてきた。風邪をひくかもしれないのでボールを取り出しタブンネを呼ぶ。
しかしタブンネは先程から俯いて俺の言葉に返事を返してくれない。ずっとほったらかしにしていたから拗ねているんだろう。
「ごめんよ、タブンネ」そう何度か謝ってもなかなか機嫌は直らない。これはひょっとして…。
「タブンネが一番可愛いよ」
「! みぃ…?」
タブンネは俺が自分より他のポケモンの事ばかりを見ていたから嫉妬していたようだ。そういう所がいじらしくて可愛い。
「大丈夫だよ、俺はタブンネの事が一番好きだからね」
「みぃ、みっみぃ!」
「その可愛い声が悲痛な響きに変わるのが好き。その可愛い顔が苦しみに歪むのが好き。そのぷにぷにの体がボロボロに傷付くのが好き」
「…!?」
「じゃあ、帰ろうね」
そう言って俺はタブンネをボールに戻して帰路に就く。家に帰ったらうんとタブンネを可愛がってやろうと思う。
最終更新:2014年06月18日 03:12