外にある置いてある組み立て式の木棚にタブンネが巣をつくっていた。
とても仲の良い親子のようで仲良く散歩している姿をよく見かける。
警戒心はそれなりにあるのか、人の足音がすると子どもを連れて棚の中に隠れてしまう。
しかし、こっちはどこに隠れているか知っているわけで。
俺はドテッコツをを連れて、タブンネの巣になっている木棚に向かった。
木棚の方からは「ミィミィ」「チィチィ」とタブンネ親子の声が聞こえてくる。
俺が棚のすぐ近くに来ると、鳴き声はぴたりと止んで静かになる。
この距離に接近されてから静かにしても意味はないと思うぞ。
こっちはお前たちがここにいることは知ってるしね。
「ドテッコツ、この木棚をこわせ」
そう指示を出すと、ドテッコツは持っている鉄骨を振りかぶり、木棚に思いっきり叩きつける。
木棚がグァーンと音を立てて半壊し、タブンネの「ミィィィ!」という鳴き声が聞こえてくる。
え、なんでローブシンにしないのかって?
……通信してくれる友達がいないんだよチクショウ。
ドテッコツが壊した木棚ではタブンネ親子が抱き合っていた。
大人のタブンネが1匹と子どものタブンネが4匹。
みんなおびえた顔で俺とドテッコツを見上げている。
持っていた革のベルトをタブンネたちの体に振り下ろす。
パァン!と音が響くたびに「ミィィ!」「チィィ!」とタブンネたちが悲鳴を上げる。
子どもを守ろうと親タブンネが必死に子タブンネを抱き寄せて体の下に隠す。
しかし、どれだけ頑張って隠そうとしても、子タブンネ4匹を完全にガードするのは不可能だ。
親タブンネの体からはみ出している子タブンネを狙ってベルトを振り下ろす。
「チィ!」と悲鳴を上げる子タブンネを体の下に隠そうと親タブンネは体を移動させる。
しかし、それによって別の子タブンネがはみ出してしまう。
そして、その新たにはみ出した子タブンネに狙いを変える。
親の体からはみ出した部分を革ベルトで打たれる子タブンネ。
体を子どもの盾にして革ベルトで打たれる親タブンネ。
タブンネたちの悲痛な声があたりに響く。
ある程度したところでベルトを振るのをやめる。
親タブンネの体の下では子タブンネたちが「チィィ…」と弱々しい鳴き声を上げている。
親タブンネのほうは「ミフッ…ミフッ…」と肩で呼吸をしている状態だ。
体を盾にして子タブンネをベルトから守っていたのだ。
その体はところどころ腫れ上がっているのがわかる。
「子どもがそんなに大切か?」
親タブンネにそう聞くと親タブンネは顔を上げてこっちを見る。
「子どもだけなら見逃してやってもいいんだぞ?」
俺の言葉に親タブンネはしばし考え込んでいた。
やがて「ミィ…」と言ってうなずくと、子タブンネを1匹1匹ギュッと抱きしめる。
子どもに別れを告げるのを終えると、親タブンネはうつろな顔でこっちに来た。
お前の気持ちを尊重して子タブンネは見逃してやるよ。
ただし、見逃すだけだ。
親を失った子タブンネだけでは野生を生き抜くのは難しい。
さらに、最近ではウォーグルが近くの森に住みついている。
子タブンネが1匹でも生き残るのはほぼ不可能だろう。
タブンネを家の中に入れると、ドテッコツに押さえつけてもらう。
タブンネといえど本気で暴れられたら面倒くさいが、力の強いドテッコツならば楽に制圧できる。
がっしりと押さえつけられ息苦しそうにタブンネがもがく。
しっかりと固定されていることを確認し、タブンネの目の前でライターに火をつける。
何するのと不安げなタブンネの足側に移動し、左足を押さえつける。
今から自分が何をされるか分かったのだろう。
「ミィー!」と必死にもがくが、ドテッコツのパワーの前では何の意味もなさない。
そのまま、タブンネのトレードマークの一つであるハート形の肉球をライターで炙っていく。
「ミッガ! ミッヒィ! ヒァアァァアァァァアァァッ!」
自分の身が焼かれる痛みに絶叫する。
自由にうごく両手をバタバタと動かし、必死に苦しみから逃れようとする。
そんなタブンネにはお構いなしに、肉球が炭化するまでライターの火を当てる。
炙り始めて約5分。
タブンネの左足の肉球は真っ黒に焦げている。
タブンネはというと「ミフーミフー!」と荒い息を吐いて、どうにか痛みに耐えようとしている。
まだ終わりじゃないぞ。足はもう1本あるんだぞ。
タブンネの右足を押さえるとタブンネの体がビクンと震える。
ライターの火を肉球に近づけていくと「ミ゛ィ…」と涙声でやめてと訴えてくる。
やめるわけないだろ。
自分からついてきた時点でこれぐらいは覚悟しておけ。
タブンネの残った肉球を焼くためにライターの火を当てる。
「ミッグヤァァァァァァァァァ!」
タブンネの絶叫とともに、肉の焦げるにおいが広がる。
肉球が黒く焦げていくにつれてタブンネの動きが弱くなっていく。
右足の肉球が完全に炭化するころにはタブンネは失神していた。
体はぴくぴくと痙攣し、だらしなく開かれた足の間からおしっこを漏らしている。
掃除しないとな。
俺はバケツを取りにその場を離れた。
肉球を炙るときに気付いたのだが、このタブンネはとても力が弱い。
そうでないと、足1本とはいえ野生のタブンネを簡単に抑えることなどできない。
これだけ力が弱ければドテッコツの力を借りる必要もないだろう。
ドテッコツに部屋に戻っていいことを伝えると、ウキウキしながら戻っていった。
近くに住む野生のドッコラーちゃんとのデートに持っていく鉄骨を吟味するらしい。
それはさておき、気絶しているタブンネの頭の近くにバケツを置く。
「いつまで寝てんだ。さっさと起きろ」
グッタリとしていて重たいタブンネの体を持ち上げると、その顔をバケツの中に突っ込む。
1秒、2秒、3秒…………
10秒ほどすると「ガボッ」と音を立ててバケツの中に泡が発生する。
「グボッ、ブボッ、ガボボボボボボ」
大量の泡が水を波立たせ、タブンネの短い手足がバタバタを動き始める。
息ができなくなったことで目を覚ましたタブンネの顔をバケツから出す。
目と口を大きく見開き、ぜいぜいと息を吐きながら逃げようとする。
しかし、立ち上がろうとした瞬間「ミフッ!?」と声を上げて転ぶ。
両足の肉球がきれいに焼け焦げているのだ。
まともにバランスをとれないだろうし、痛みだって相当だろう。
そんな状態で立ち上がれるわけがない。
自分が逃げられないとわかったのか、スンスンと泣くタブンネ。
泣いてるひまはないぞ。
タブンネの頭をつかみ、こいつが漏らしたおしっこに押しつける。
自分の不始末は自分で掃除しないとな。
「ミッキュ! ピキュウ!」
タブンネの抗議の声は無視して床を拭きつづける。……よし、きれいになった。
仕上げにタブンネの尻尾部分で乾拭きをして水気をとる。
汚くなってしまった体が嫌なのか、毛づくろいを始めるタブンネ。
俺がきれいにしてやるよ。
タブンネの耳を引きずって家の裏に連れて行く。
タブンネは不服そうにしていたが、自分で歩けないならしょうがないだろう。
蛇口をひねってホースから水を出し、タブンネの体にかけていく。
最初はおびえる素振りを見せていたが、出ているものがただの水だとわかると、
「ミィ♪」と笑顔になって体を洗い始めた。
水を足の裏にかけてやると、リラックスして「ミフ~」と息を吐いている。
肉球が焼けたところだ。水で冷やされるのは気持ちいいのだろう。
タブンネの体を洗い終わるり、タブンネを家の中に入れる。
と、その前にバスタオルでタブンネの体を拭く。
濡れた体のまま家に上げるわけにはいかないからな。
頭から順にワシワシと拭いてやると「ミッミッ♪」と楽しげな声が聞こえてくる。
体をきれいにしてもらい、濡れた体も拭いてもらえる。
もうひどいことはされない、とでも思っているのだろう。
その考えは甘いぞタブンネ。
タブンネをうつぶせにすると、尻尾がふわっふわになるように整える。
自慢の毛並みが戻ったことでタブンネはすっかりご機嫌になっている。
そんなタブンネの足の裏。
焼け焦げて真っ黒になった肉球をグイグイと力を入れてこする。
「ミッヒィ!?」
突然の痛みに大きくエビ反りになるタブンネ。
かまわずにグリグリと肉球を圧迫していく。
「ミヒャア! ミイィ! ミィヤァ!」
涙を流し、痛みを訴えるタブンネ。
知ったことではない。
そのまま肉球を削るようにガシガシとこすり続ける。
そろそろのはずだが……
そのとき、べろっという感触とともに、タブンネの焦げた肉球が剥がれる。
剥がれたところは真っ赤な肉が露出している。うえ、気持ち悪い。
さて、もう片方の足も同じようにしないとな。
「ミクッ…ミフッ…」
タブンネが短い悲鳴を上げながら床の上をゆっくりと歩く。
そのあとには赤いものが点々と続いている。
俺はソファーにすわってその光景を眺めている。
「おい、床が汚れてるぞ。きれいにしろよ」
俺からの指示が飛ぶと、床に両手をつき、自分の足の裏からの出血で汚れた床をペロペロとなめる。
屈辱か、恐怖か、痛みか。
体は小刻みに震えて、目からは涙を流している。
床をなめ終わると、また歩き出す。
少し進んでは床をなめ、少し進んでは床をなめ。
さっきからこれの繰り返しだ。
見てる方としては飽きてきた。
何かほかに遊び方はないだろうか。
そんなことを考えていると、タブンネの体がぴくっと震えた。
どうした? トイレか?
表情を見てみると、どことなく嬉しそうな顔をしている。
変なものに目覚めてしまったのだろうか。
「チィ」
かすかにタブンネの鳴き声が聞こえてきた。
どこだ、と見回すとガラス戸越しに子タブンネが家の中を覗き込んでいるのが見えた。
さっき見逃してやったうちの1匹か。
自分の親の様子を見に来たということだろうか。
馬鹿な奴だ。
せっかく見逃してやったのに、のこのこと現れるとは。
「ミッヒィ!」
タブンネが大げさな声を上げて大げさに倒れ込む。
俺が子タブンネに気付かないように、自分に注意を引き付けようというのだろう。
残念ながら、もう気付いてるぞ。
床に倒れてからも「ミィミィ!」と大きな声を出して悶えている。
すると子タブンネが覗き込むのをやめて姿を消してしまった。
タブンネが出していた鳴き声に何らかのメッセージが含まれていたのだろう。
……面白いことを考え付いた。
「おい、タブンネ。このソファーまで歩いてこれたら休憩していいぞ。
ただし、床を汚したらどうなるかわかってるな」
タブンネにそう伝えると、おれはあるものを取りに部屋を出る。
俺が戻ってくるとタブンネはさっきの場所で横になったままだった。
そこで休憩していいとは言ってないんだが、まあいい。
これからは休憩なんてものはできないんだからな。
「やるぞ、ゴーリキー」
俺の隣に立っているゴーリキーは「ウム」とうなずく
ゴーリキーがタブンネを押さえつけ、俺がタブンネの頭を輪になったロープに通す。
タブンネは抵抗したところで無駄だとわかっているのか、されるがままになっている。
ゴーリキーにタブンネを持ってもらい、外に運び出す。
タブンネ1匹が約30kg。人間が持ち上げるのはしんどい。
ゴーリキーを連れてきたのはそのためだ。
え、カイリキーのほうがパワーがあるって?
だから、友達がいないんだって。
ゴーリキーにタブンネを持ってもらったまま、適当な太さの枝にロープを結びつける。
途中でほどけないようにしっかりと。もちろん、高さは調整する。
「ありがとうゴーリキー」
そう言うとゴーリキーは「もういいよね」という顔で戻っていった。
明日のデートに履いていくパンツ選びに戻るのだろう。
うちのポケモンたちは何やってんだよ。
気を取り直して観察開始だ。
タブンネはロープをつかんで、必死に首が絞まらないようにしている。
どうにか自分の体重を支えることはできているのか、苦しそうではあるが、
呼吸ができていない様子はない。
まあ、そのうち力尽きるだろうが……お、きたきた。
タブンネの足元に子タブンネが集まってきた。
あれ、3匹しかいない。1匹はもう死んだのか?
どうでもいいか。
ロープは子タブンネがギリギリ届く長さにしてある。
さあ、こいつらはどうするかな?
子タブンネ3匹が「チィチィ」「チィチィ」と何かを話し合っている。
すると、1匹がタブンネの体に飛びついた。続けてもう1匹。
自分たちの親を降ろそうとしてるのだろうが、まったく意味がない。
それどころか、子タブンネ分の重さが増えたことで、親タブンネへの負担が増えている。
先ほど以上の苦しい表情を見せている。
1匹は頭がはたらくのか、どうにかして親タブンネを持ち上げようとしている。
しかし、1匹の力で持ち上がるはずもなく、すぐにあきらめてしまった。
そのとき、親タブンネの足の裏の状態に気付いたようだ。
傷を治そうと、足の裏をペロペロとなめる。
しかし、親タブンネがひときわ強く暴れると、足をなめていた子タブンネを蹴り飛ばした。
肉がむき出しになっているところをなめられたのだ。当然の反応だろう。
子どもの重さの分だけ首が絞まり、刺激に敏感になった足裏をなめられる。
親である自分のために子どもがとった行動がタブンネを追い詰めていく。
目は裏返りかけて、口からは泡を吹いている。
足先はピクピクと痙攣を始めている。もう持たないだろう。
命が消えるまでの残り少ない時間、子どもに殺される絶望を味わうといい。
(つづく)
最終更新:2015年02月18日 20:29