第1話 「ああ!奇跡の出会い!」





 一人は仲とに巨獣と対。
 騎士取り、仲間を守るために盾となって巨獣の攻撃を一手に引き受けていた。
 騎士が巨獣が繰り出す凶腕の薙ぎ払ている間騎士の仲間達は
 武器を手に巨獣に向かう者、魔法を詠唱する者、呪歌を歌う者、矢を射掛ける者、傷を癒す者、と
 彼ら各々に与えられた役割を果たし、「絆」で繋がれた力は一つの巨大な力となり巨獣に対し獅子奮迅していた。

 追い詰められて最後の灯火を燃え上がらにその巨大な力の中心となっていつ騎士に向かい突進した。
 手にした禍々しい風貌の剣で受け流そうと体を捻らせたが予想以上の衝撃により剣は騎士の手から弾た。

 剣け一瞥した後、再び巨獣に目を向け盾を構えたが巨獣はすでに息絶えていた。
 仲間の魔道士の古代魔法の詠唱が完了しており、巨獣の遺体とていた。

 事が終わった事を確認した騎士は落とした剣を拾いに向ちでその花を土ごとそっと引き抜き、腰に充てたかばんにそっと仕舞った

 その瞬間、


 気がした


 ―


 うしろ士きて


 声を聞士


 ―――くきて


 彼を呼ぶ声騎士


 ―私の使い魔はやて!!


 少女の悲痛なると気付き辺りを見回し再び正面に振り向きなおした瞬間
 騎士の前に突咄嗟に盾を構えたが甲斐も無く一人の騎士は鏡に吸い込まれていった






◆         ◆          ◆         ◆


 時同じくしてハルケギニア大陸トリステイン王国トリステイン魔法学院
 ここでは学院生徒二年生による春の使い魔召喚の儀式が行われていた。
 学院の側にある広場に集まった生徒たちは自分と生涯を共にする使い魔との初めての出会いに、
 一人、または、
 幾度となくサモンサーヴァントの呪文を唱えたが、
 爆発によって地面が抉れるのみで一向に使い魔が現れてこないのだ。
「早くしろよ"ゼロ"のルイズ
「"ゼロ"が何か召喚するまえに広場が爆風でなくなっちまう」
「何をやらせてないんだな」
 皆召喚を終わらせ、ルイズ一人のために待たされている生徒達の心無い野次が飛び交いはじめた。
「…ミス・ヴァリエール、・」
 ルイズの肩にそっと手をのせたのは今年の召喚儀
「ミスタ・コルベールお願いです!もう一度だけチャンスをください!」
 ルイズはその目に涙を浮かべながら必死に食い下がった。
 コルベールは知っていた、魔法が使えない彼女がこの日のために、
 毎日幾度となく召喚の儀式に関する事を他の生徒の幾数倍も勉強していた事。
 "ゼロ"と他の生徒に馬鹿にされつつも、彼女は自分ができる事を期待以上にこなしていた事。
 しかし運命は残酷な事にひたむきで努力家である彼女にたった一つ肝心な要素、
「魔法」の才能を与えてくれなかったらしいのである。
 コルベールとて教え子の中でも一番熱心に授業に受けていた彼女の
 メイジとしての未来を閉ざしてしまう事には不本意であった。
 しかしまた学院の教員の一人として使い魔召喚の儀式ができない生徒は退学させなければいけないのであった。
「ではミス・ヴァリエール、深呼吸をして、気を落ち着かせてからもう一度だけ試しなさい」
 そういってコルベールはルイズの肩をぽんぽんと叩いた。
「落ち着いてまだ見ぬ使い魔の事を強く念じながら呪文を唱えなさい」
 そう言われル吸い、はぁーと吐き、再度杖を構え、
 ―――お願い!なんでもいいから 私の使い魔はやくきて!
 と念じながら声を高らかにあげ呪文を詠唱した。
「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ! 神聖で美しく、そし心より求め、訴える! 我が導きに、応えなさい!!」
 途端、今まで以上の爆音が学園中を響き渡り広場は前が見えないほど濃い砂煙に覆われてしまった。
 ルイズと共に他の生徒も咳き込み、煙を振り払ってるうちに煙が晴れ上がり、爆発した箇所の中心にきらきらと光る鏡の様なものが浮かんでいた。
(やった!サモン・ゲートよ!ついに召喚に成功したんだわ!)
 と砂埃で汚れた姿なっていた事も忘れて喜ぶルイズは小さく杖を持つその手をぐっと握り締めていた。
 サモンゲートは使い魔を召喚した主の下へと送り届ける空間転移魔法である。
 どんなメイジであれ基本中の基本であるこの魔法を唱える事自体は簡単とされていた。
 しかしどういうわけか使い魔がすでにいる状態ではゲートを作る事はできず、
 また主側から使い魔の所へは通れない一方通行の門なのである。
 一度サモンゲートが開いたのであれば必ず使い魔が必ず現れてくると言う所まではメイジ達の間でも知られている。
 しかしそれ以外の詳しい原理は謎に包まれたままで『そういうものである』と言う認識の下で使われている魔法でもあった。

 学院二年生達に囲まれ、期待込められた目でルイズがゲートを見つめ佇む中
 その期待に答えるようにゲートはきらきらと光るだけであった。
 しばしの沈黙の間ゲートが水面のように揺らいで、「何も起きない」とルイズを含むその場に居合わせた者全員が思いはじめたとき、
 ぽつりぽつりと様子を見物していた生徒達は口を開いた。
「おい、使い魔は?」
「爆風で吹き飛ばされたんじゃないのか?」
「さすが"ゼロ"のルイズ!召喚するものも"ゼロ"だ!」
「"ゼロ"は蟻んこを召喚したかもしれない、皆足元気をつけろよー」
 いつもの"ゼロ"を馬鹿にする嘲笑が始まっている時、
 教師であるコルベールはこの「前例が無い」事態に関して様々な考えを巡らせていた。
(ゲートは開いたと言うことは使い魔呼び出されているという事だ、しかし一向に使い魔らしき存在は見当たらない)
 コルベールは以前変わり無く揺らめくゲートを全方向から観察し、確かにサモン・ゲートであると確認した
(だが生徒達の言うように姿が確認できぬほど小さい使い魔だとしても、
 ゲー何かを召喚したのであれば役目を終えたゲートはもう閉じているはず。)
 そして一度開いたゲートは必ず使い魔を召喚する事である事も踏まえ、
 コルベールが達した結論は『この空中に浮かんだ鏡はまさに』ということであった。
 ルイズもその事に気づいたのか、それとも中々姿を現さない使い魔にあせったのか、
「も、物凄い使い魔が召喚されて…そう、ちょっと準備に時間かかっているだけなんだから!」
 と周りの嘲笑に対し弁明するかの様に答えていた。

 一方コルベールはこの事態の対処に悩んでいた。
 サモン・ゲートが開かれたのであれば若きヴァリエール家の三女は「召喚の儀式ができなかった」訳ではなかった。
 しかし使い魔との契約を済まさなければ「召喚の儀式が完了した」とも言えなかった。
 とにかく使い魔が現れるまで待つしかないのだ。
「えー、とりあえず皆さん使い魔の召喚おめでとうございます。
召喚を終えた者達は自分の使い魔の事をもっと知りたいと思っているでしょうから本日の授業はここまでとし、解散して結構です。私はミス・ヴァリエールの儀式が完了するまで付き添います。」
 そうコルベールが言い終えたのを聞き、
 一時は面白がって見ていた生徒達も何も変化が起きない状況に飽きてきていたので、
 各自<フライ>の魔法を唱え、使い魔と共に思い思
 その内の一人が「お前は歩いてこいよ"ゼロ"のルイズ!」と暴言を吐く者までいた。
 そうしてルイズは教師のコルベールと共に静かに煌き輝くサモン・ゲートの前に立っていた。
「ミス・ヴァリエール、気を落とさないで・ゲートが現れたのですから貴方の使い魔は必ず出てきます。」
 などと残されたルイズを励まそうとするコルベールであったが、
 ルイズは心中穏やかではなかった。
 いままで基本的なコモンマジックでさえ『一度』も成功した事が無かったルイズである。
 今日行ったサモン・サーヴァントでさえ最初の数回は明らかな失敗であった。
 ならばこのサモン・サーヴァントも失敗しているのではないか?
 時間が経つにつれ、ルイズの心は自分の無力さを呪う気持ちがじわじわと広がっていった。
 その気持ちに対抗するかの様にルイズは無意識につぶやいた。

――はやくきて

 使い魔がサモン・ゲートから現れてくる事を願ってひたすらつぶやいた。

――はやくきて!

 四半刻も過ぎた頃、ルイズの中で不安が限界まで溜まり、そして『叫び』という名の濁流となって泣け叫んだ!

「はやくきて!私の使い魔はやくきて!!!!」
 それに呼応するかの様にサモン・ゲートが眩く光り、白く輝く一人の『男』が引き摺りだされる様に現れた。
 200サントは超えるであろう長身痩躯の『男』は王宮の衛兵が着ている様な白い板金鎧の上に同じく白いサーコートをかけていて、
 その左手には落ちかけた太陽の光でさえ眩しく反射する金縁で彩られた蒼い金属の盾が『男』の顔を遮る様に構えられていた。
(まさか人間が召喚されちゃうなんて!?)
(まさか人間が使い魔として召喚されるとは!?)
 不意に現れた予想外の使い魔に二人は驚愕した。
 『男』の全身が引き出されると、役目を遂に終えたサモン・ゲートは見る見ると萎み、そして消えた。
 そして自分がいた場所とは違う所に連れてこられた事に気づいた『男』はその掲げた盾を降ろし、辺りを見回し、
 目前にはポールのような杖を携えた頭髪がやや寂しい男性とマントを羽織った少女の姿を見た。

 『男』は直感的にその少女が自分が聞こえた声の持ち主であると感じ、少女をじっと見つめた。
 『男』その顔は肌色やや浅黒く、端整な顔立ちに物静かにルイズは鋭く釣り上がり、
 首元まで伸びている長髪は着ているものを反映しているような煌く白い銀髪であった。
 そしてその頭髪から突き出るように伸びた両の耳・・・
「「え、エルフ!?」」
 ルイズとコルベールは同時に二度目の驚愕をした。
 人間が使い魔として召喚される事は今まで無かった。
 ましてやハルケギニアの人々にとっては天敵とされているエルフが召喚されるなどあってはならない事である。
 ハルケギニアの人々が信仰する始祖ブリミルが遂に聖地奪還を果たせなかった最大の原因とされているのが、
 っていたと言われる現在は失われし「虚無」魔法でさえ梃子摺ると言われた、
 「先住魔法」を自在に操る種族がエルフなのだ。
 メイジが何人いようと対抗手段にすらならないエルフの力は、
 ハルケギニアの人々にとっては『畏怖』を飛び超え、純粋に『恐怖』の対象とされていた。

「おいィ?一体誰だおまえ?」
 『亜人』のドスが聞いた突然な発言に、生徒を守る立場であるコルベールは咄嗟に杖を構えたが、
 相手がエルフであれば彼一人ではなす術も無いことは明らかだった。
 必要以上に相手を刺激する事は無いとコルベールは判断し、杖を元の通りに持ち直した。
 コルベールはメイジとしての経験と勘でこのエルフと直接やり合うのは無謀であるだけではなく、
 傍にいる教え子を悪戯に危険へと巻き込んでしまうだけと判断した。
「ほう、俺を強いと感じてしまってるやつは本能的に長寿タイプ」
 一方ルイズの方は自分が呼んだ使い魔の姿に困惑していた。
 今まで実際のエルフを見た事は無かったとは言え、ルイズが座学で学んでいたエルフのイメージ像とはずいぶんかけ離れていた。
 エルフが扱うとされている先住魔法の一つ、<カウンター>はいかなる系統魔法も物理攻撃をも防ぐと言われている。
 その様なエルフはわざわざ重量がある金属鎧を着る必要がないのである。
 確証はされていないが、金属はむしろエルフが扱う先住魔法の精霊の流れを悪くすると言われている。
 なのに、目の前の『男』は武器を手に持って戦う剣士のような出で立ちで、
 まるで昔読み聞かされた事とある絵本の勇者の様に勇壮なかつ純白に輝く神々しい姿をしていた。
 判らない事だらけだったが、ルイズは一つだけ確信していた。
 この『亜人』こそ自分が呼んだ使い魔だ、という事を。

「あなたを召喚した私の名はヴァリエール公爵家が三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ。あんたは?」
「俺か?―――」
 ピンク髪の少女の目をじっと見つめて『
「――――俺はブロント。ただのブロントだ。」



/    各話一覧     /   第2話 「異界の使い魔」


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2024年04月26日 01:09
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。