偽典落語「すねこすり」

2006年12月1日、あったら嫌な妖怪に附色風狸(ふしょくふぅり)という四字熟語のおまけとしてhyousen氏が書き込んだ落語。 (あったら嫌な妖怪 0649)

本文内容

 むかしむかし、唐の国で
 倭国から輸入された「すねこすり」が大ブーム!!
 上は王宮の君子官女から、下は長屋の陳さん李さんまで
 「おはぐろべったり」ならぬ「すねこすべったり」で、

 すりすりの技巧、毛並の珍奇などを競う「摩臑競」などは
 ひと月の内に全国各地で何十何百と行われる有り様。


 中には一匹の価に、山が五十個は買える程の高額がつけられる
 「すねこすり」も現われるようになりまして、
 セレブや投機家はこぞってこれを買い求め
 世はこれ「すねバブル」の活況を見せておりました。


 そんなところに眼をつけて、
 こいつでひとやまあててやろぅ――と考えたのが
 唐の国、ちんぷん州の裏店に住む
 「百眼銭」(ひゃくがんせん)という名のムカデの妖怪。

 近所に住む漢学の先生から
 「すねこすり」と「風狸」は毛色こそ違えど割と似ている、
 と聴き出した「百眼銭」は、南国から「風狸」を捕ってきて、
 その毛の色を染め替えて、にせ「すねこすり」を作って大儲け。

 ところがひょんなことからこれが大発覚。

 (すねこすりを食べようとした某公主様が
  すねこすりを切ろうとしたところ
  まったく切れなかった=風狸は刀などで切れないし、焼けない)

 お裁きにかけられた「百眼銭」は身代没収&遠島となりました。
 にせ「すねこすり」にされていた「風狸」さんたちも
 無事に開放されて、一件落着となりました。


 …その後、「百眼銭」が島から帰ってくると
 「すねこすり」ブームは沈静化し、世は新たに「かっぱ」ブーム真っ盛り。

 百 「せんせぃ、ごめんくだせぇ、またイロイロとお訊ねしたいことが…」 
 先 「なんだ、また懲りずに【附色風狸】な商売をはじめる気か」
 百 「いぇいぇ、ふうりはもぅ結構、
    今度売るのは、きゅうりでございます」


 ――偽典落語「すねこすり」(作/莱莉垣桜文)より



最終更新:2016年08月05日 15:25