nanaki(2006-11-30)
一方、妖怪狐連盟の組織・銀次組がやられたとキツネ亭オーナー・宗旦狐はクダから聞き、驚きを隠せないようだ。
キツネ亭は3凶潰しという状況下に置かれながらも、昼間は通常の営業をし、込み入った話は夜にするようにしている。
宗「そうか…あいつらが…まさかな…」
ク「オレはまだお目にかかってはいませんが…その…」
宗「銀次組かい? あいつらはね、僕が若い頃に…世話をね。少し…」
ク「世話!?」
宗「クダ君にはいつか言おうと思っていたんだが…」
宗旦狐は、クダに今まで話す事のなかった過去を話した。
ク「…そうだったんですか…」
宗「僕はその組織の次期組長候補だったんだ。で、当時の…」
ク「…銀次組の頭・銀が若頭…」
宗「そう…。でも解散してしまってね」
ク「解散…」
宗「うん。当時の組長の息子が、組織に代々伝わる、ある食材を持ち出して逃げたんだ」
ク「食材…でやすか…」
宗「組長はショックで亡くなり、若頭だった銀も自分の責任だとかで失踪。僕だけが残った。だけど僕は組織を捨てキツネ亭を開業した」
ク「じゃぁ、あの時オレを拾ってくれたのは…」
宗「丁度、組織を捨ててどうするか放浪していた時期だったんだ。烏天狗の森の麓でうずくまってる仲間を見れば助けるのが普通でしょ?」
ク「…」
宗「クダ君も分かると思うけど僕は何かを守るとか筋を通すとか、そういうのは苦手なんだ。僕はそういう事より、僕が作った料理を沢山の妖怪に食べてもらって、喜んだり笑ったりしている…それを見るのが一番好きなんだよ」
ク「宗さん…」
宗「ああ…すまないね。柄にもなく語ってしまったよ…懐かしい名前を聞いたせいだね」
ク「名前…伝…」
宗「まぁ、彼の話はまだ早いかな」
ク「そうでやすか…すいまへん。詮索してしまって…」
宗「いいよ。いつか話さなければならなかったんだしね」
それにしても…
宗旦狐はそう呟きながら窓の外を見た。
「…伝吉…あいつ、今度は何を…」
最終更新:2016年08月05日 21:42