魑魅魍魎 美食の宴_第二章0-3

KARASU(2006-11-15)

≪魑魅魍魎 美食の宴≫ 第二章 天狐

さて。
物語というのは、それを動かす者がいて初めて存在できるのである、とは言わずもがなの事である。
後に「天狐の乱」と呼ばれるようになる今回の事件にも当然、動かす者がいる。
天狐と名乗る者?
いや、そんな小さな話ではない。
この事件を動かす者はジョー○と呼ばれており、七変化を繰り返して包囲の手を逃れてきた。
実はこの妖怪、「新・妖怪党」という、政治結社とも裏組織ともつかぬ団体を引っ張っているのだが、最近は怪しい実験と煽動活動で忙しく、真面目に働く妖怪党の面々を恐れさせている。
これはそんな妖怪党のある日、あるアジトでの出来事である。
河童漬けをつまみに、新・妖怪党は会議を行っていた。

「最近のあの方の行動は目に余りますねぇ・・・」

とぼやくのはhyousen。
ひょうりん亭の旦那という愛称で呼ばれる、猫又界の重鎮である。
普段は俳句を吟じたりする芸術家肌の妖怪だが、・・・いや、これ以上言うと殺されそうなのでやめておく。

「そろそろ州霊を呼び出して、進めていかないととんでもない事になるんじゃねえのかい?」

そう危惧するのは、shion。
気風の良さで、多くの妖怪を従える。
穏やかな性質に見えるが、その本性は推して知るべし。

「nanakiの旦那方は、何を見たってんだィ?」

居眠りをしていたcyuが、そう問う。
付喪神界を束ねるcyuだが、今回の事件にはあまり関わっていないので興味が薄いのだろうか。

「これを見てくれ」

と、nanakiは「ぱそこん」を立ち上げる。
nanakiは妖狐界でもトップクラスに位置する狐だ。
尻尾は・・・七本。

現れた映像と数字の羅列を見た新・妖怪党の面々から、嘆きとも感嘆とも付かない溜め息が漏れた。

「まずい・・・まずいぜェ」

cyuがはっきりと目を覚ました。

「これをどうすれば良いのさ」

shionが項垂れた。

「あの方の計画には我々も織り込み済みなんだ」

恐ろしい事に。

「KARASUさん、貴方さっきから黙ってますけど、何か考えをお持ちでは?」

呼ばれて暗がりから現れたのは、新・妖怪党最年少のKARASU。
化け烏界の爪弾き者として追放されふらふらしていたが、何を思ったか新・妖怪党に入党、今では幹部になっている。

「考えといいやすか・・・」

KARASUは言葉を濁したが、やがてくいっと顔を上げた。

「党首があっしらを計画に織り込み済みなら、逃れる術はありやせん。・・・今は大人しく、話を動かす手伝いをするのが無難かと・・・」

それは誰もが感じていた事だったが。
言葉した途端、悲痛な沈黙が落ちた。


続く?


行き詰まった時はジョージさんをいじるのが一番だな。


最終更新:2016年08月05日 21:56