魑魅魍魎 美食の宴_第二章0

KARASU(2006-10-16)

≪魑魅魍魎 美食の宴≫ 第二章 天狐

「太郎そば」には、近頃おかしな客が来るようになった。
髭面の客、夜行。顔の大きな老婆。居酒屋「やなき」の主で、やはり姿を晒すのが恐ろしいらしく頬かむりをしている。
この年老いた妖怪達は、連日「太郎そば」にやってくる。
二人だけの事もあるし、鬼婆が一緒の事もあり、はたまた狐が同席していたりとメンバーは常に違うが、取りあえず鳥蕎麦二つ、というのだけはいつも同じだった。


「そろそろ、あの娘を呼び戻しましょうか・・・」
「ああ、そうだのう。もう少し、羽根を伸ばさせてやりたかったが・・・」


いつも何をしているのだろうという興味が湧いて、太郎はつい聞き耳を立ててしまう。
聞こえてきたのは切れ切れで意味の分からない会話。
と、がらっと個室の戸が開いた。


「店主殿、何をしておるのかな?」
「あ、いえ、その、お水を持って来やした・・・」


夜行は口元にこそ笑みを乗せているものの、その目には憤怒が浮かんでおり、本当の事を言ったら殺されるのではないかと思うほどの迫力がある。
さしもの太郎も腰を低くするしかなかった。


「取りあえず、鳥蕎麦二つ」


夜行はいつもと同じものを、お品書きを見ずに注文する。
太郎も慣れたもので、言われる前に既に伝票に鳥蕎麦二つと書き込んでいた。


「あの娘も今では店を持っていますが・・・」
「仕方あるまい、暫く休みじゃ。子供は主が世話しておけ」
「はい、そのように・・・」


話が終わったのか個室は静かになる。
そしてまた戸が開いた。


「店主殿、電話を借りるぞ」
「はい、どうぞ」


夜行が回した電話番号は、龍球ナンバーだった。



あ、あれ、これはアリなのか!?
無しだったら直しますから教えて~。


最終更新:2016年08月05日 22:02