ピピピピピピピピピピピピピ。
【効果音:時計のアラーム】
耳障りな電子音で目が覚める。
【場所:徹の部屋(ぼんやり)】
視界はボンヤリしていて、頭もハッキリしない。
とりあえず音を止めようと腕時計のボタンを滅茶苦茶に押した。
大きなあくびをすると、少しずつ体の熱が冷めてくる。
少しボーっとしたあと、時計を見ると針は7時32分をさしていた。
もう一度あくびをしてベットから出た。
ドアを開け、周りを見ると他の部屋のドアは閉まっていた、皆まだ寝ているのだろうか。
ロビーへの集合は8時のはずだけど・・・・。
そういえば、部長の部屋は・・・?。
反対側のドアを見てみると部長のドアは開いたままだった・・・どこ行ったんだろ。
ロビーへ行き、紙コップを一つとって炭酸飲料を注ぐ。
【効果音:水をくむ音】
ジュースの冷たさと喉への刺激で気だるい体に締まりを入れた。
少し外の風に当たろうと玄関のドアを開けると。
【画像:霧】
徹「うわぁ・・・・」
ドアを開けると、そこには三歩先も見えなそうな程濃い霧が漂っていた。
徹「夏の朝一番の神秘って奴かな」
しかし、部長が外に出ているとしたら大丈夫だろうか。
まさか朝早くに出ていったら霧が出て帰れなくなったなんてないよな。
椅子に座り、持ってきていた漫画をパラパラと読んでいると二階のドアが開く音がした。
【効果音:ドアが開く】
誰か起きたかな。
トン トン トン
【効果音:階段を下りる音】
一定の軽いリズムで階段を下りてくる。
おそらく女性だろう、なんとなしに階段のほうを見る。
降りてきたのは深町先輩だった。
徹「おはようございます」
とりあえず、朝の挨拶をする。
【立ち絵:深町(普通)】
深町「おはよう、徹君は朝早いのね。」
徹「そんなことないですよ」
ビニールの中からコップをもう一つ出す。
徹「何か飲みますか?」
深町「ありがとう、じゃあオレンジジュース貰えるかしら」
言われたとおりオレンジジュースを注ぎ、先輩の前にコップを置いた。
【効果音:みずをくむ音】
徹「どうぞ」
また僕が漫画を読み始めると、先輩は無言でジュースを飲んでいた。
静かな部屋に漫画をめくる音だけがする。
正直、かなり気まずい。
チラリと見る、先輩は眠たそうに目を細めていた。
そういえば、深町先輩とはあんまり話をしたことがない。
というか静かな人なのであんまり意識をしたことがなかった。
いつも部長の影にいるというか、表には出ない人で滅多に意見を出さない。
まぁ、村野さんみたいにマシンガントークする人よりは良いけど。
ふと、先輩と目が合った。
慌てて視線を漫画に戻した。
もう一度先輩を見ると先輩はニコリと笑っていた。
気まずいのでとりあえず口を開く。
徹「そういえば、先輩は部長知りませんか?」
まさか先輩の部屋で寝てるとかはないよな。
深町「部長?知らないけど」
徹「いや、なんか朝早くからいないみたいでどうしたのかなぁと」
深町「変ね、外かしら?」
深町先輩が玄関のほうを見る。
徹「そう思うんですけど、今外を見てみたらすごい霧なんですよ。」
深町「何も言わずに外に出るとは思えないけど・・・・きっとしばらくすれば戻ってくるわ」
徹「ですかね・・・」
深町先輩がゆっくりと椅子から立ち上がった。
深町「私、皆を起こしてくるわ」
徹「ああ、僕も手伝います。昨日あれだけ騒いだらそう簡単に起きないでしょう」
腕時計を見ると時間は八時十五分だった。
【立ち絵:深町を消す】
一番左のドアをノックする、長野先輩の部屋だ。
まだ寝ていると思っていたが、直ぐにドアが開いた。
長野「徹か、わざわざおこしに来たのか?」
【立ち絵:長野(普通)】
徹「あ、はい。そろそろ時間なんで」
長野「準備が出来たら行く」
そう言ってドアを閉めてしまった。
なんだか素っ気ないなぁ。
続いて綾の部屋をノックする。
返事は帰ってこない、深町先輩に頼んで起こしてきてもらう事にした。
その間に村野さんの部屋のドアをノックする。
すると、中から普段から整っているとはいえない髪型をさらに乱した村野さんが出てきた。
【立ち絵:村野(寝起き)】
村野「ん~、徹君、どうしたん?」
眠そうに目をこすっている。
徹「朝ですよ、そろそろロビーに来てください。」
村野「ああ、わかったわ」
そう言うとドアを閉めた。
とりあえず、全員起こし終わったけど・・・
開きっぱなしの部長の部屋を一応覗いてみる、ベットの上には誰もいなかった。
部長の部屋を見渡しているとドアの開く音がした。
部屋から出てみると、長野先輩が着替えて部屋から出てきたところだった。
【立ち絵:長野】
長野「何してるんだ?」
徹「いえ、部長が朝早くからいないので」
長野先輩は部長の部屋を見て少し眉を寄せた。
長野「・・・・散歩か何かだろ、ロビーに行くぞ」
そう言うと先輩はさっさと行ってしまった。
僕も直ぐにロビーへと向かった。
ロビーでは綾と深町先輩が楽しそうに雑談していた。
適当に空いている席に座ると同時に二階のドアが開く音がした。
村野が出てきたようだ、パタパタと階段を下りる音が聞こえてくる。
【効果音:階段を下りる音】
まだ寝ぼけ眼の村野が席に座ると、それが合図のようにみんな椅子に座った。
【画像:四人の一枚絵】
綾と「どうする?」と目を合わせる、先輩にどうするか聞いてみようか・・・。
すると、長野先輩が椅子から立ち上がって前へ出てきた。
長野「・・・・長谷川がどこに行ったか判るヤツはいるか?」
誰も返事をしない。
長野「じゃあ、長谷川を最後に見たのは?」
深町「あ、はい。たぶん・・・私です。」
深町先輩が声をあげた、みんなが深町先輩に注目する。
深町「昨日・・・と言うか今日の朝方に水を飲もうとしてロビーに行こうとしたら、川卓く・・・部長が部屋から出るのを見ました。」
長野「そうか・・・昨日の夜ってワケじゃないんだな。なら、暫くすれば戻ってくるかも知れないな。
今日は取りあえず長野が戻ってくるまで自由行動にしちまうか。」
以外とすんなりまとまったな、と思った。
先輩達は「もしも」のことを考えないのだろうか、昨日部長は危ない所もあると言っていたはずなのに。
それとも何か思い当たるふしでもあるのだろうか?
取りあえず、意見をあげてみる。
徹「先輩、今日は霧が濃いですし。部長も迷ってるかもしれませんよ。」
すると、長野先輩は考える様子もなく答えた。
長野「だから余計に危険なんだ、俺達まで迷ったら意味がないだろ。それにあいつだったら去年も来てるし、大丈夫だろ
霧が晴れれば戻ってくるよ」
探しに行くつもりは無いらしい。
- 何故長野先輩はこんなに余裕なんだろう、何か知ってるのかな?
まぁ・・・いいか、部長に限って迷うなんて事無さそうだし。
それに二度寝も出来るし、部長には申し訳ないけど。
そんな事を考えていると、向かいに座っている村野が目に入った。
なぜか落ち着かなく、忙しなく目を泳がせている。
なんだ?何か言いたいことでもあるのだろうか。
しかし、長野先輩は気にする風もなく解散にしてしまった。
なんだか・・・不自然な気がする。
不思議に思いながらも僕は部屋へと戻った。
【場所:徹の部屋】
【音楽:合宿所(のほほん)】
ウォークマンで音楽を聴きながらベットの上でコロコロと転がる。
申し分無いほど暇だ。
一度起きてしまうとなかなか眠れない体質の自分が恨めしい。
外に出られない上に娯楽は持ってきたウォークマンと既に読み飽きた漫画本だけ。
誰かと話でもすればいいと思うけど、みんな部屋に居るので声をかけづらい。
ウォークマンを持ってきて正解だと思った、これで無音だったら修行僧だって気が狂う。
しかし、三曲目に入ったところで唐突に音楽が途切れた。
ヘッドフォンが抜けたのだろうか?いや、付いたままだ。
見てみるとウォークマンの電源の赤いランプが消えている。
再生ボタンを押すとランプが弱々しく光り、すぐ消えてしまった。
なるほど・・・・・機械のプロで無くてもいったいなにが悪いかがよく判る。
つまり――――――――――
徹「電池切れだ・・・・・・」
頭をガクリとうなだれる。
充電器は持ってきていない、三日間充電をし忘れていたのが悔やまれる。
何か暇つぶしになるものは・・・っと。
【効果音:ガサガサ】
鞄の中を探る、しかし世間一般の人達が「娯楽」と言えるのはトランプしかなかった。
神様は僕にトランプを一人でやれと言ってるのだろうか、そもそも何で僕はトランプを持ってきてるんだ?
自分で持ってきたんだろうか・・綾に言われたんだったかな?
たぶん綾に言われたのだろう、何故なら僕はウノ派だからだ。
なぜトランプよりウノなのか、ウノはトランプの用に多彩に遊べるわけでなく、ルールも人によって違ったりする。
しかし、相手の色を読む心理戦はどんなテーブルゲームより勝る(と思っている)。
基本ルールは簡単、ただ他人より早く減らすだけ。
しかしその単純明快なルール中に人間関係をぶち壊すほどの陰謀と策略が秘められている。
自分と親しい人物でも勝負がこのゲームになると自分を陥れようと目を光らせている。
信じていた人物にカードを数十枚も引かされるという経験は誰にでもあるだろう。
ちなみに学校行事などでの旅行では必ずウノを持ってきてる奴がいる。
そして無謀にも僕に勝負を挑んでくるわけだ。
極めた僕が負けることは当然無い、修学旅行では三人がかりで勝負を挑まれたが完勝。
その際に「ウノ白虎隊」という称号まで付けられた・・・・・・・事はどうでもいい!
ついつい熱くなってしまった・・・・。
とりあえず現状をどうするかだ。
しょうがない・・・背に腹は代えられない、綾の所でも行こう。
部屋を出て綾の部屋をノックする。
パタパタと音がしてドアが開いた。
「徹君?なに?」
【立ち絵:綾(普通)】
徹「暇だからさ、何かない?」
綾「残念なことに、私も暇なのよ。」
綾がため息をついた、僕も頭をかく。
徹「参ったなぁ・・・・・・・」
このまま部屋に戻ってもやることが無いわけだし。
綾「あ、じゃあ展望台に行きましょう!」
徹「ん、展望台?今日外に出ちゃ駄目なんじゃないの?」
ロビーで長野先輩に『危ないから今日は外に出るな』と念を押されていた。
「展望台なんてすぐ近くよ、外の内に入らないわ」
徹「ええ~でも・・・」
綾「とにかく行きましょ!」
『面倒くさい』と言う前に綾ははんば強引に僕の手を引いて展望台へと引きずっていった。
少し昔を思い出して唇がにやけた。
すかさず綾がつっこみを入れてくる。
綾「徹君、なに笑ってるの?気持ち悪いわよ」
徹「いや、なんか子供の頃を思い出して。よく綾は僕のこと引きずって外に遊びに連れていったじゃないか。
あと、気持ち悪いは余計だよ」
綾「だってそうでもしなきゃ徹君外で遊ばないじゃない、あんまりみんなの中に入ってこないし。」
徹「ん~そうだったかなぁ?最近はそんなでもないと思うけど。」
綾「そうだったのよ!私がいなかったら徹君なんか観葉植物みたいになってたわよ。」
なるほど、観葉植物とはうまい例えだ。だけど綾、観葉植物だって好きな人は好きなんだぞ。
【場所:展望台】
【音楽:少し和風な感じ】
あたりにはやはり霧が漂っている。
霧で閉ざされた孤島・・・まさにミステリーだ、いや、メルヘンかロマンチックかな?
徹「なぁ・・霧広まってない?」
綾「そうかしら?・・・気のせいよ」
そういって望遠鏡をのぞき込むと、すぐに目を離した。
綾「あーあ。やっぱり何も見えないわね。」
綾がつまらなそうに言って、端の壁の上に腰を下ろした。
徹「そんな所に座ってると危ないよ。」
そう言いつつ僕も望遠鏡を覗いてみる・・・・・・・
徹「あれ?」
視界の中にうっすらと本当に少しだけ何かが見える、木のような、立っている人のような。
綾「何か見えたの?」
綾が猫のようにこちらに近づいてくる。
綾「片方見せて」
僕の顔を押しのけて、片方の穴を覗き見る。
長いポニーテールの尻尾がうなじに触ってくすぐったかった。
綾「・・・何も見えないわ」
徹「ん~さっきは見えたんだけどねぇ~」
もしも他の人が見たら馬鹿みたいに思われるだろうな。
綾はまた壁に飛び乗った。
僕も望遠鏡から目を離し、綾を見る。
霧で見えない海の方向を見ている。
薄い霧をおび、髪が揺れている姿は幻想的、そして儚い感じがした。
時たまの風に目を細めている表情は、淫猥でいて、とても悲しそうに見える。
ハッと我に返り、見惚れていた自分を馬鹿にするかのように。悪ふざけを始めた。
望遠鏡で綾を覗く。
徹「ほほぅ~」
綾「徹君・・・・・どこ見てるの?」
徹「誰かの背中・・・・・いや、これは胸かな?薄っぺらでよく判らないな」
照れ隠しでセクハラ全開&助平オヤジのような発言を繰り出す。
すると視界が白くなった、と思った次の瞬間。
後頭部を綾におされた・・・・となると当然――――――――
ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
【効果音:どごーん】
島中に響き渡る叫び声。
僕は太陽に当てられた吸血鬼及び、サスペンスドラマの最初の被害者のオヤジのような声を挙げた。
綾「自業自得よ!」
頭からプンスカと音を出してそうな表情の綾が言う。
徹「非道すぎる・・・・失明したらどうしてくれるだよぉ・・・・」
目を擦りながら声を出す、実に情けない声だ。
綾「そんな曲線も見えない目なんか潰れちゃえばいいのよ!」
徹「曲線・・・・・?それはこの望遠鏡の事か?」
足を思いっきり踏まれる。
【効果音:ギュウギュウ】
綾「徹君、そんなに紐無しバンジーをやりたいの?勇気があるわねぇ」
徹「いたい!いたい!ごめんなさい、ごめんなさい!!・・・・・いったぁ~~~!
綾が全体重を乗せて足を踏んだら足が・・・・・なんでもないですごめんなさい」
綾「大丈夫よ、足が使えなくなったらこの島に置いていってあげるから。」
うう・・魔女め・・・
僕も足を引きずりながら綾の後を追って階段を下りた。
綾が玄関を開けると、長野先輩がロビーで待っていた。
長野先輩はこっちに顔を向けると、僕たちを睨み付けた。
長野「さっきの声はなんだ?お前等、何処にいってたんだ」
【立ち絵:長野】
僕が言葉を言う前に綾が先に口を開いた。
徹「ちょっと、展望台に・・・・・さっきの声はちょっとふざけてて・・・・」
長野「お前等、俺の言ったことを聞いてなかったのか?」
うわ、まずい。
徹「いえ、聞いてましたけど・・・ちょっとそこまでならと思って・・」
取りあえず、言い訳をしてみる。
長野「・・・・・・・・まぁいい、長谷川は企画者だし前に来たことがあるからいいが、お前等までいなくなったらどうする。
判ったら今度こそは外に出るなよ」
はぁ・・・何とか難を逃れた。
徹「じゃ、部屋に戻ってます。」
綾を後ろから押して、いそいそと階段を上る。
取りあえず僕の部屋に入り、床に腰を下ろす。
徹「いやぁ、危なかった。」
【立ち絵:綾】
綾「ごめんね、私のせいで怒られちゃって。」
珍しく綾が素直に謝ってきた。
徹「いや、いいよ、もう慣れっこだから。それにしても何で先輩あんなにピリピリしてるんだろうね」
綾「慣れてるって何よ。・・・でも、ホントにやけに外に敏感よね」
それに、長谷川部長も気がかりだ。
時計を見ると、時間は一時過ぎだった。
徹「長谷川部長はさっきの長野先輩の言い方だとまだ戻ってきてないみたいだね」
綾「みたいね、いくらなんでも遅すぎるわ」
徹「まぁ、僕らが気を使っても仕方がないことだけどね」
ハァ、とため息を付く。
そうだ、僕らが考えてもしょうがない。
綾「一時ね・・・これからどうするの?」
あ・・・・そうだった。
徹「二人でトンランプしても面白くないしなぁ」
すると、綾が散らかした荷物の中から最悪の物を取りだした。
綾「じゃあ、これをやりましょう」
徹「宿題か・・・・・・」
悪夢だ・・・。
それから三時間程、地獄の責め苦を味わった。
徹「ふぅ・・・・これで数学の宿題終わりっと」
綾が数学の宿題を閉じる、ちょうど僕も最後の問題の答えが出た。
【効果音:ポクポクポクチーン】
徹「あーーーーー、疲れたぁ!」
隣には数学の前に解き終わった世界史の問題集(むろん宿題)が落ちている。
我ながらよくこんなに長く集中できたもんだ。
綾「もう、私たち高校生なんだからもっと勉強してもいいくらいよ」
徹「へぇ、頭の中が二次関数やら一神教やらで一杯だよ」
手を挙げて降参のポーズをとる。
綾「なんて、私もそうなんだけどね」
綾はそう言って笑ったあと、大きくのびをした。
徹「ん~、頭がこんがらがってる。少し冷たい物でも飲もう」
綾「そうね」
僕たちは階段を下りてロビーへと向かった。
窓から外を眺めると、霧が少し晴れ、夕日が顔を出していた。
徹「長谷川部長、そろそろホントにまずくない?」
綾「うん・・・先輩達、どうするつもりなのかしら」
ギィッ
そこで、ドアが開く音がした。
【効果音:ドアが開く音】
階段を下りてくる音がする。
階段から姿を現したのは深町先輩だった。
深町「二人とも、どうしたの?」
徹「いや、勉強の息抜きに。先輩は?」
深町「二人とも勉強家なのね、私は夕飯を作ろうと思ってた所よ」
夕飯・・・・実に不穏な響きだ。
綾「あ、先輩。私も手伝いますよ」
ゴーン!
【効果音:どーん】
またか!二度目の危機!
最終更新:2006年09月15日 22:28