三つの鎖 16 後編

413 三つの鎖 16 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/02/19(金) 22:17:30 ID:hcjZui0x
 病院を出るとまだ曇ってはいるけど、雨はやんでいた。
 洋子さんと雄太さんは迎えに来たそれぞれの会社の人の車で帰った。
 送って行こうという雄太さんの申し出に洋子さんは頭をはたいた。
 「父親なら娘に気を使え」
 雄太さんは肩を落として僕を見た。
 「加原君。娘を頼むよ」
 そう言って二人は去って行った。
 僕と夏美ちゃんは病院を出てゆっくり歩いた。
 「あの、お兄さん」
 夏美ちゃんは僕を見た。すぐに恥ずかしそうにうつむく。
 「本当にありがとうございます。お兄さんのおかげで久しぶりにお父さんとお母さんと一緒にお食事できます」
 「僕は何もしていないよ」
 実際、あの様子だと二人とも日本を出る前に夏美ちゃんに会いに来た気がする。そして家族でカレーを食べたに違いない。
 夏美ちゃんの指と僕の指が触れる。僕は夏美ちゃんの手をつかんだ。小さくて温かい手。夏美ちゃんも握り返してくれた。
 嬉しくて気恥ずかしくて頭が爆発しそうだった。夏美ちゃんの顔を見ると真っ赤だった。僕と同じことを考えているのかもしれない。
 マンションまで夏美ちゃんを送った時、お昼前だった。
 「お腹すいちゃいました」
 朝から林檎しか食べていないらしい。
 僕は冷蔵庫を確認した。牛肉、ジャガイモ、ニンジン、玉ねぎ…。カレーの材料しかない。
 仕方がない。肉じゃがにしよう。
 キッチンを見回すと、流しの中に使った食器が置いてあった。洋子さんは洗わずに病院に向かったようだ。鍋は見事に空っぽだった。
 僕は手早く材料を切り鍋に放り込んだ。調味料を足し、味見をしながら煮込む。
 後は煮込めば大丈夫という段階で僕は火を弱めキッチンを出た。
 「夏美ちゃん。後はしばらく煮込めば完成するよ」
 そう言って僕は帰る準備をした。今は昼前だ。今から出ればお昼休みには学校に着く。
 「あの、お兄さん。その、えっと」
 夏美ちゃんが寂しそうに僕を見つめた。僕も見つめ返す。やあって夏美ちゃんは目を伏せた。
 「いえ、何でもありません。今日はありがとうございました」
 僕は夏美ちゃんの言いたい事は分かっていた。
 今まで何度もこのマンションに来て料理を作ったけど、一緒に食べた事はない。いつも僕か梓が家の料理を作っていたから。
 「お勉強頑張ってくださいね」
 夏美ちゃんそう言って笑った。その笑顔には隠しきれない寂しさがにじみ出ていた。
 「夏美ちゃん。今週の金曜日を楽しみにしている」
 その日に夏美ちゃんのご両親も含めて初めてこの家で食事をする。
 「私も楽しみです」
 「お大事に」
 僕はそう言ってマンションを去った。
 外はいまだに曇りのまま。どんよりとした空。遠くで雷の音が聞こえる。
 夏美ちゃんの笑顔を脳裏に浮かべる。明るくて見ているだけで幸せになれそうな笑顔。思い浮かべるだけで胸が温かくなる。
 僕は夏美ちゃんの傍にいたい。
 それでも、すぐに学校に向かったのは春子と話すためだ。物心ついたときから一緒だったいちばん身近な女の子。いつも僕の世話を焼いてくれたお姉さん。
 春子の泣いた顔が脳裏に浮かぶ。僕をだれにも渡したくないと泣く春子。思い出すだけで胸が締め付けられる。僕には春子を恨む理由も権利もあると思う。説得なんて考えないで脅されている事を村田のおばさんにでも伝えればそれですむかもしれない。
 でも、できない。そんな不幸な結末は考えたくない。
 別に誰もかもが幸せになればいいなんて思ってない。そんなことは不可能だ。
 どれだけ一緒にいた時間が長くても、どれだけ好きでも、どれだけ一緒にいたいと願っても、どんな形であれ別れは絶対に来る。
 僕と夏美ちゃんにもいつか別れは来る。それは男女の別れなのかもしれないし、連れ添ったうえでの死別かもしれない。どんな形であれ、別れは必ず来る。それは僕と春子も同じだ。
 春子に対して僕は以前と同じ関係を望んでいた。以前のようにお姉さんぶった春子にからかわれながらも平穏に過ごす関係。徐々に大人になり子供じみた関係は少しずつ無くなっていく。そんな普通の幼馴染。
 でも、もう無理だ。僕たちは前の関係にはもう戻れない。お互いのすれ違う気持ちを知った以上、姉と弟にはなれない。例え僕がどれだけ望んでも。
 それでも、脅迫し脅迫される関係で終わりたくはない。春子を恨んで終わりたくない。
 僕は春子が好きだ。それは幼馴染としてであって、一人の女性として愛していない。何を言われようと何をされようと、それだけは変わらない。
 春子に伝えないと。僕は春子を一人の女性として愛していないと。こんな関係はもうやめようと。


414 三つの鎖 16 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/02/19(金) 22:19:43 ID:hcjZui0x
 そんな事を考えながら歩いていると知っている顔が近付いてくる。
 遠くで雷の音がした。
 「どうしたの兄さん。難しい顔をして」
 梓。
 なんでここに。学校は。疑問は浮かび上がるけど、口にできなかった。
 「兄さん」
 そう言って梓は僕に抱きついた。嬉しそうに僕の胸に頬ずりしてくる。
 「ねえ兄さん」
 引き離そうとした瞬間に梓は僕の耳に囁いた。
 「夏美は大丈夫だったの?」
 梓を引きはがすのも忘れて僕は安心した。梓も夏美ちゃんの事を心配している。
 昨日、あれだけ喧嘩をしたから気まずいままかと思った。本当に良かった。
 「大丈夫だったよ。もう退院した」
 ここまで言って、僕は気がついた。気が付いてしまった。恐怖に背筋が寒くなる。全身に鳥肌が立つのが分かる。
 なんで梓は知っている。夏美ちゃんが入院した事を。
 今日の朝、僕は梓に何も言わずに屋上から病院まで来た。梓は何も知らないはず。
 「平気だったんだ」
 そうだ。洋子さんが学校に連絡したのかもしれない。そして夏美ちゃんの担任の先生がHRで告げた。そう考えれば納得できる。
 「どうしたの兄さん」
 梓は僕を不思議そうに見上げた。
 「夏美が無事なのがそんなに不思議なの」
 うっすらと笑う梓。背筋の寒くなるような笑み。
 「階段から突き落としただけだもん。死にやしないわよ」
 僕は固まった。全身の血液が凍りついたような恐怖。
 梓は僕の背中にまわす腕に力を込めた。まるで逃がさないというように。振りほどこうと思えば振りほどける、はず。どれだけ技があっても梓は女の子だ。腕力は僕の方がはるかにある。それなのに振りほどける気がしない。
 「ふふっ、ふふふっ。いい表情ね。兄さんのその表情、嫌いじゃないよ」
 梓はうっとりと僕の頬を撫でた。梓の指が信じられない熱を帯びている。
 その熱に頭が焼けそうに感じる。
 「ねえ兄さん」
 梓は僕に囁いた。耳元にふれる吐息が熱い。
 「家に行きましょう。話したい事があるの」
 僕は梓の顔を見た。梓は嬉しそうに笑っていた。その笑顔に背筋が凍る。梓は本当に嬉しそうに笑っていた。
 近くで雷が落ちる音がした。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 玄関を閉めた瞬間、梓は抱きついてきた。
 僕の背中に細い腕をまわし胸に顔をうずめる梓。梓の体から信じられない熱さの体温が伝わる。
 「好き。大好き」
 梓は幸せそうにつぶやき僕の胸に頬ずりしてくる。
 僕は梓の両肩に手をかけて引き離そうとしたけど、離れない。
 「梓。離れて」
 「やだ。ずっとこうする」
 梓は腕を離さずに僕に頬ずりを続ける。
 「僕たちは兄妹だよ。こんな事をして許される年じゃない。離れて」
 「関係ないわ」
 梓は顔を上げた。嬉しそうな表情。梓の瞳が奇妙な光を放つ。
 「兄妹だからなんて関係ないわ。兄妹でも女として愛せるし、愛される事が出来るよ」
 紡がれる言葉に鳥肌が立つ。梓はなんて言った?
 「僕たちは兄妹だ。男女の関係にはなれない」
 「なれるわ」
 僕の背中に回される梓の腕に力がこもる。
 「キスだってセックスだってできるわ」
 梓は腕を離し僕の頬を挟んだ。頬に梓の手の温度が伝わる。
 焼けるような熱さ。梓の感情の激しさ。梓が顔を近づけるのを僕は肩をおさえて止めた。
 次の瞬間、足を払われ僕は仰向けにこけた。梓がのしかかってくる。
 「梓!やめるんだ!」
 僕は必死に抵抗した。キスしようとする梓を引きはがそうとする。
 梓は僕の腕をつかむと容赦なく体重をかけた。激痛とともに肩が外れる感触。うめき声をあげそうになるのを必死に耐えた。
 「素直じゃないんだから」


415 三つの鎖 16 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/02/19(金) 22:22:07 ID:hcjZui0x
 そう言って梓は僕のあごに手を添えた。白くて小さな手。そして僕の唇に口づけした。
 「ちゅっ、んっ、ちゅっ、じゅるっ、んんっ」
 僕の唇をついばむ梓。唇をはいずる梓の感触に鳥肌が立つ。
 引きはがそうとまだ動く腕を伸ばしたけど、梓はその腕をつかみ容赦なくねじった。激痛が走る。
 「ふふっ、すごいわね兄さん。眉一つ動かさないなんて」
 梓は僕の上から嬉しそうに僕を見下ろした。
 「さすがに汗はかいているわね。大丈夫?」
 あまりの痛みに全身に冷や汗が出る。梓は僕の頬にふれた。熱い手。汗に冷えた頬に信じられない熱さが伝わる。
 梓は僕の頬から手を離し、その手を自分の顔に近付けた。指を口に含み陶然とする。
 「はむっ、ぺろっ、ふふっ、兄さんの味がするわ」
 嬉しそうに指を舐める梓に鳥肌が立つ。
 梓は僕の頬をはさみ顔を近づけた。振り払おうにも両腕が動かない状況では頭を振って抵抗するしかできない。しかし首を振るたびに両肩に激痛が走る。
 「ふふっ、あまり動かない方がいいわよ」
 梓の両手が僕の顔を固定した。振りほどこうにも激痛でこれ以上は動けない。
 そのまま僕の唇をむさぼる梓。頬を染めた嬉しそうな梓の顔が僕の目の前にある。唇にふれる梓の唇と舌がおぞましい。僕の口を割り梓の舌が侵入してくる。僕は歯を噛みしめて抵抗した。
 「ちゅっ、れろっ、ちゅっ、んっ、兄さんっ、口を開けてっ」
 僕は必死に耐えた。そんな僕を見下ろした梓は僕の喉を容赦なくついた。あまりの衝撃に口が開く。そこに梓の舌が入り込む。
 口腔を梓の舌が舐めまわす。僕の舌に絡みつく。
 血のつながった妹に唇をむさぼられている現実。心地よさも快感も無い。あるのは恐怖と怖れと嫌悪。近親相姦の禁忌を平然と犯す梓に鳥肌が立つ。
 僕は梓の舌を噛みしめようとした。その動きに気がついたのか梓は僕の口腔から舌を抜いた。梓の口の端から涎が僕の顔に落ちる。
 「ふふっ。ひどいよ兄さん。私のキスはそんなに嫌なの」
 言葉とは裏腹に嬉しそうに僕を見下ろす梓。桜色に染まった頬、嬉しそうな表情。他の男が見れば女の艶を感じたかもしれない。
 しかし血のつながった妹に迫られても感じるのは禁忌にふれる恐怖と嫌悪だけ。
 梓は僕のズボンのベルトを外した。
 「ここはどうなのかしら」
 鳥肌が立つ。激痛をこらえて僕は身をよじって抵抗した。しかし梓の手はチャックを開け入り込んだ。
 剛直にふれる梓の熱い手。嫌悪感に鳥肌が立つ。
 「残念ね。全然硬くなってないわ」
 梓は僕の剛直をたどたどしい動きで撫でた。快感など微塵も感じない。
 「やめろ梓!」
 あまりの嫌悪感に僕は叫んだ。梓は嬉しそうに微笑み撫で続ける。何の反応もないのに飽きたのか、梓はズボンから手を抜いた。そのまま指を口に含みうっとりする。
 「ふふっ、兄さんの味だわ」
 陶然とつぶやく梓に言い知れない恐怖と嫌悪を感じた。全身に鳥肌が立つ。
 「ふふっ、兄さんごめんね。今肩をはめるから」
 梓は僕の肩をはめた。激痛が少しだけおさまる。
 僕はすぐに起き上がり梓と距離をとった。梓はそんな僕を微笑みながら見つめた。
 「兄さん。私とシよ」
 恐怖と嫌悪に背筋が寒くなる。
 「梓は自分が何を言っているのか分かっているのか!?」
 押さえきれない感情に言葉が荒くなる。
 微笑みながら梓は僕を見つめた。
 「だって私もう我慢できない。好きな人が近くにいるのに何もないなんてもう無理よ」
 僕は唇をかみしめた。病院服を着た夏美ちゃんが脳裏に浮かぶ。
 「だから夏美ちゃんを怪我させたのか」
 梓の反応は劇的だった。笑顔が消え表情がゆがむ。
 「あの女の話をしないでっ!!!!!!」
 叫びが空気を震わす。
 梓は肩を激しく上下さして僕を見た。瞳は激情に染まっている。
 「あの女が悪いのよ!!私は我慢しようとした!!家の中で誰もいないときに兄さんに甘えるだけで我慢しようとした!!それなのにあの女はこの家まで入り込んで私の前で兄さんといちゃついたのよ!!私の気持ちを知っているくせに!!」
 梓の言うあの女に対する負の感情に僕は立ち尽くすしかなかった。
 「兄さんに分かるの?それがどれだけつらかったか。どれだけ惨めだったか」
 言葉を紡ぎながら梓は僕に近づく。恐怖に足がすくみ動けない。梓は僕の頬を両手ではさんだ。頬にふれる梓の手が熱い。梓の感情の激しさそのもの。
 「分からないでしょ」
 僕を見上げる梓の表情は悪鬼そのもの。そのまま梓は目を閉じ僕にキスした。僕は動けなかった。
 梓は目を開け僕を見上げた。先程と違う寂しそうな表情。


416 三つの鎖 16 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/02/19(金) 22:23:59 ID:hcjZui0x
 「本当はね、兄さんの妹で我慢しようと思っていたの。兄さんがそれを望んで妹として愛してくれるならそれで我慢しようと思った」
 そう言って梓は悲しそうに首を横に振った。
 「やっぱり無理よ。私、兄さんが欲しい」
 梓は僕に抱きついた。背中に細い腕が回される。締め付ける力は小さいのに、振りほどける気がしない。
 「兄さん。私のものになって。私を兄さんのものにして」
 抱きつく梓から伝わる体温に強い嫌悪を感じる。僕は梓の肩を押して引き離そうとしたけど、梓の腕は離れなかった。
 「僕たちは兄妹だ。血のつながった兄妹だ。梓の望む事はしないし出来ない」
 梓は顔をあげて僕を見た。無表情な顔の中で双眸が奇妙な光を放つ。
 「あのね兄さん、私はお願いしているんじゃないわ」
 背中に回された梓の腕に力がこもる。
 「私はね、命令しているのよ」
 紡がれる言葉に背筋が寒くなる。足が震える。
 梓はそんな僕を楽しそうに見上げた。
 「兄さんだって分かっているでしょ?私がその気になればいつでもあの女を処分できるわ。兄さんにしたみたいに肩を外してもいいし、なんなら殺してもいい」
 僕は梓の言葉を必死に耐えた。足の震えを無理やり止める。
 「そんなのは生ぬるいわね。指を一本一本折るのもいいわ。どこまで兄さんが好きと言えるか試してみるのもいいかも」
 夏美ちゃんの笑顔が脳裏に浮かぶ。公園で恐怖に震える僕から庇うように背中を向けてくれたあの姿。その小さな背中は震えていたけど、逃げなかった。僕は梓の腕を振りほどき梓を突き飛ばした。
 梓は僕の動きに逆らわずに転がりその勢いで立ち上がる。
 「おバカな兄さん。私に勝てるはずがないでしょ」
 言い終わるや梓が迫る。迫る掌底を防ごうとしたけど肩の激痛に動きが鈍る。梓の掌底は僕の顎をうつ。姿勢を崩した瞬間、視界が反転し背中から叩きつけられる。
 肩の痛みにもがく僕に梓がのしかかる。腕を固定され動けない。
 「ねえ兄さん。私とするのがそんなに嫌なの?」
 梓は悲しそうに言った。僕は梓を見上げ激情のままに言葉を紡いだ。
 「血のつながった兄妹で体を重ねるなんて、けがわらしいと思わないのか!?」
 梓の顔から表情が消える。無表情に僕を見下ろす瞳に種類は分からないけど強烈な感情が渦巻く。その瞳に背筋が寒くなる。
 それでも僕は視線をそらさなかった。
 「…ふっ…ははっ」
 やがて梓は声を押し殺して笑い出した。
 梓の笑いはだんだんと大きくなる。おかしくて仕方がないというような笑い。
 「ははっ、ふっ、ふふっ、おかしな兄さん、あはははっ」
 何がおかしいのか。分からない。
 梓は笑いながら僕を見下ろした。
 「あははっ、ははっ。まあいいわ。私の言った事をよく考えてね。あの女が大切ならね」
 そう言って梓は僕の上から起き上った。
 僕は立ち上がり梓を見た。梓は本当におかしそうに僕を見ていた。
 何がおかしいのか僕には分からなかった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 私は部屋に戻りベッドに寝転がった。扇子を取り出して顔をあおぐ。火照った顔に涼しい。
 さっきの兄さんとのやり取りを思い出すと全身が熱くなる。私は唇を指でなぞった。兄さんの唇の感触がした。私は熱い吐息を吐きだした。
 なんて楽しいのだろう。もう我慢する必要はない。兄さんに自分の気持ちを伝えても何の不安も無い。好きな人に好きと言い迫るのがこれほど楽しいとは思わなかった。
 兄さんの悲痛な叫びが脳裏に再生される。
 (血のつながった兄妹で体を重ねるなんて、けがわらしいと思わないのか!?)
 思い出すだけで笑いが込み上げてくる。兄さんは何も知らないからそう言えるんだ。
 兄さんは知っているのだろうか。知らないに違いない。
 私と兄さんの存在自体が、近親相姦の結果という事を。
 昨日の夜、私は知ってしまった。
 知ってしまった。
 もう我慢する必要はない。
 兄妹でも、たいした問題じゃない。
 兄さんの表情が脳裏に浮かぶ。愛しい兄さん。
 私は必ず兄さんを手に入れる。どんな手を


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最終更新:2010年03月07日 20:41
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