54 キモウトinコミケ~兄を探して三千里~ 1/2 sage 2010/08/04(水) 02:22:30 ID:Gp2rXo1d
私、紅瀬桜は今兄さんの部屋にいます。
時刻はまだ6時30分、いつもなら朝ごはんの仕度をして兄さんが起きるまで寝顔を眺めているところです。
普段ならまだ兄さんは起きていない時間ですが兄さんは「聖戦に行ってくる。」と書き置きを残して朝早くからどこかに行ってしまいました。
いつもは自分から行動のしない兄さんです。いったい何処に行ったのでしょうか?
いつもは家に引き篭っている兄さんのことです。どこかでトラブルにあってないか不安になりました。
そこで私は兄さんの携帯のGPS機能で見てみることにしました。
「国際展示場の近くらしいけど兄さんどこに行こうとしているのかな?」
私の知る限りでは何も無いはずです。しかし兄さんのことです。なにかのイベントがあるのでしょう。私は兄さんのあとを追うことにしてみました。
ところ変わってここは国際展示場前
「ぬぉおおおおおこれが聖戦なのか!?」
俺こと紅瀬一人は今年ついにコミケの参加者の仲間入りを果たした。実に感慨深いものがある。
なにせ引篭もり脱却プランとして始めようと思ったことだ。自分から行動するのは生まれて初めてかもしれない。
「それにしてもこの人の数はすごいな。まるでデットライジングみたいじゃないか。」
国際展示場の開場を待つオタクたちでここは埋めつくされている。オタクの中には殺気を出している奴もいる。
時刻は7時、開場まではまだ3時間もある、気が抜けない。
装備は完璧なはずだ。スポーツドリンクに冷えピタ、塩飴etc....これでもかというほど持ってきている。実際に野宿3日間くらいならできそうだ。
妹の目を盗んで買い集めた結果だ。正直妹には悪いと思っているがこれも俺の社会復帰のためなんだ、許せ妹よ。
暇つぶしに音楽を聴いていたらもう開場時間寸前だ。スタッフの人が慌しくしているのが遠目でもよくわかる。
流石に誘導の声が聞こえなくなるのはいけないのでイヤホンは外そう。どうやら開場したようだ。あと数分したら俺もあそこにとび込むのだろう。
10時過ぎ
GPSの反応がなくなっていました。
兄さんに何かがあったかもしれません。急がないと兄さんが大変なことになってしまいます。そんなことは有ってはならないのです。
今日はやけに電車が混んでいた気がします。しかもなにやら異臭がしていました。吐き気がしましたが兄さんのことを想うとそんなことは我慢できるのです。
黒い服装をした皆さんは国際展示場駅で一気に降りていきました。
もしかすると兄さんもそこにいるのかもしれません。不本意ですがあとについて行くことにします。
エスカレーターを昇っていると壁には見慣れないポスターが張ってありました。
「コミケット……?」
兄さんが好きそうな絵柄の女の子のポスターでした。どうやら今日は同人誌即売会というイベントがあるようです。兄さんもそこにいるのでしょう。
改札口を出るとそこは阿鼻叫喚、死屍累々、戦々恐々としていました。一言でいうと恐ろしい何かがそこにはありました。
何十人、何百人いや何万人もの人々が一挙に建物の中に押し寄せていました。私は只々驚いているだけで身動きが取れませんでした。
兄さんもあそこの中にいるのでしょうか、確かにあそこの中なら電波は届かないはずです。
あんな異臭を放つ人達と同じ場所にいるのは許せないです。オシオキをしないといけないかもしれません。
早く兄さんを探さないといけない。直ぐにでもここから兄さんと一緒に帰らないと。
意を決して列に並び会場内に乗り込んでみました。そこにはさっきのとは比べものにならないくらい人がいました。
幾ら何でもこの中から兄さんを探すのは無理だと悟りました。
途方に暮れましたが同じ場所にいるよりかは高いところから探したほうがいいと思い辺りを見回せることのできるところに行くことにしました。
56 キモウトinコミケ~兄を探して三千里~ 修正1/2と2/2の間にこれを sage 2010/08/04(水) 02:35:22 ID:Gp2rXo1d
11時過ぎ
なんとか目的のものを手に入れた。
内容はまぁいかがわしい物達とグッズ達だ、詳しく訊かないでもらいたい。
流石にこれは妹には見せられないな。18歳にもなり風呂をまだ妹と一緒に入っているとはいえ、これは危ない。妹の成長にも悪いしな。
こっそりと来た甲斐があったかもしれない。帰ったときには疑われるかもしれないが、ケーキでも買ってくれば喜んでくれるだろうから大丈夫だろう。
「結局結構金使っちまったな~。はぁ~こりゃまたバイト探さないとな~。」
なんとか人ごみを避けてこの高台ポジション的位置に来た俺だが一気に疲労感が出てきてしまった。
手にしたスポーツドリンクをゴクゴクと飲んでいく、まさに生き返る。ついでに塩飴も舐めておこう。意外とショッぺぇなコレ、確かに塩だな(笑)。
ここからはよく写真にでているような人ごみの光景が見えている。頭髪の黒がゾロゾロとうごめいていて気味が悪いな。
居心地も悪いし疲れを取るためにもさっさと帰るとするか。桜が泣いているかもしれないからな、アイツは何故だか俺がいないとダメ人間だからな。
俺がいないと一週間も持たないんじゃないのか?まぁいいか帰るとしよう。
ん!?あれはまさか……いやそんなハズはない…よな?ちょっと待てよ…アイツは…
55 キモウトinコミケ~兄を探して三千里~ 2/2 sage 2010/08/04(水) 02:25:16 ID:Gp2rXo1d
「兄さんはどこにいるのでしょうか?」
なんとなく呟いてしまいました。どうやら兄さんが恋しいのかもしれません。私は兄さんに依存しているのでしょうか?
確かにお風呂を一緒に入ることにしていますがそれはいやらしい意味などはないはずです。
兄さんがちゃんと自立できるその日まで私が支えていないとダメなんです。
兄さんはロクに自分のことができませんし、なにより引き篭もりさんです。高校に入ってから何故か学校に行かなくなりました。
理由を訊いても「なんでもないよ。」とか「桜には関係ないよ。」と言われるだけです。
ですが私は兄さんを真当な道に戻すことが大事だと思うので何回も尋ねています。
家族として支えるのが大事だと母様も仰っていましたし唯一無二の兄さんです。家族の絆を大切にしないといけません。
「私に出来ることなら何でも言ってくれればいいのに。」
ポツリとこぼれてしました。私は兄さんのためなら何だってできるのに……。
人混みの黒の波がもぞもぞと動いているのが私の心のように不安を掻き立てました。本当にこの中から兄さんを探せるのでしょうか。
焦燥感が激しくなり、兄さんに逢いたい気持ちが一層高まりました。
「兄さん、逢いたいです。どこにいるんですか……。」
目の前が暗くなるような感覚。兄さんが昔家出した時に感じた絶望感。
兄さん私はもうダメかもしれないです。不甲斐ない妹ですみません。
朦朧とした意識の中で聞き慣れた人の声が聞こえたような気がしました。
「おい!!桜どうしてこk……おい!!聞いていr……。」
気がついたら私は自分の家のベッドの上で寝ていました。どうやら疲れて倒れそうなところを兄さんに助けてもらったらしいです。
倒れたあとも幽かに意識はあったようです。兄さんが手当をしてくれたのかもしれません。本当は私が兄さんを必要としていたのかもしれないです。
なんとなくわかった気がします。
「桜、もう大丈夫か?」
___兄さんの優しい声が耳に通ってきました。
「はい、私はもう心配ないです。兄さん、迷惑かけてすみませんでした。」
「そんなことはいいよ桜。お前が無事なら兄さんはなんだっていいよ。」
「兄さん。……嬉しいです。私が兄さんに必要とされているのがこんなに嬉しいとは思いませんでした。」
「どちらかというとお前の方が必要としているだろ(笑)。今更過ぎるぞ」
___兄さんは私の心を読んでいるのでしょうか?
「そういえば兄さん何をしにあそこへ行っていたんですか?」
「?!エェッとだなぁ……。」
___兄さんの困った顔もかわいいですね。
「その袋の中身はなんですか?みせてください。」
ベットの片隅に置いてあったここには似つかわしい袋を指さし兄さんに訊いてみました。
「ゴホン……まぁまだお前にはまだ早いものだから見せられん。」
「兄さんもしかしてそれは"エロ同人"というものですか?」
「ちょ、ちょっとまちたまえ妹よ……。なぜそのワードを知っている?」
「兄さんのパソコンの中に入ってましたよ?妹陵辱シリーズ001楓とか言うのが。」
「兄さんってもしかして妹に手をだそうとする危ない人なのですか?」
「あのー桜さん?私は妹に手をダソウトハシマセンヨ…?」
「そうなのですか?少しがっかりしてしまいました……。」
「えぇー!?ちょ!!!ちょちょと桜?!いまなんて言った!?」
「嘘ですよ、兄さん。」
「ですよねー?!」
___ふふ、兄さん可愛いです。本当に私に手を出してもいいのに
おしまい
最終更新:2010年08月29日 22:25