キモウトとひきこもり兄(キモウトinコミケの続き)

100 キモウトとひきこもり兄(キモウトinコミケの続き)1/3 sage 2010/08/06(金) 01:19:40 ID:eSmnXFRb

(キモウトinコミケの続き)

高校生最後の夏があと一日で終わってしまうわけだが、俺は高校三年間の遅れを取り戻すために今必死に勉強をしている。

「ヤバイな…高一のはじめからやり直さないと……。」
事実高校に入ってからすぐ引き篭もりになった俺だ、卒業できるのかも怪しい。

「留年……か、仕方ないか…。」
「でも、勉強をもう一度出来るんだったらいいかもな…。」
シャーペンを進める。元々勉強はできるほうだったからあとは時間だけだ。
それよりも履歴書に残るであろうこの空白の2年間の説明はどうすればいいのか頭を抱えていた。


私、紅瀬桜は晩ご飯のお買い物中です。
今日は嬉しいことが幾つもありました。兄さんが「また学校にいくことにする。」と言ってくれたんです。
嬉しくて涙が出ちゃいました。あの兄さんが引き篭もりから脱却できるかもしれないからです。

2週間前の同人誌即売会での事件以来兄さんは物事に積極的に関わろうとしているようです。
どうやらアレは自分を変えるために行くことにしていたらしいです。
兄さんが自分から動いてくれているのがこんなにも嬉しいとは思いませんでした。

晩ご飯は兄さんの好物にしましょう。今日はお祝いです。

ちなみに私は兄さんと同じ高校に今年から通っています。地元でもそこそこ頭の良い学校です。
兄さんは本当なら三年生ですが一年生からやり直しになっているとのことらしいです。
多分一緒のクラスになっていると思います。実は裏で学校側と話をつけています。兄さんと同じクラスになるためならこんなことは余裕なんです。
なぜそんなことができるかというとお金と、優等生の特権だからです。役に立たないと思っていた勉強も意外と便利でした。
やっと兄さんを一日中独り占めできます。お弁当だって一緒です。あ~ん、とかもできるかもしれません。
ちょっと興奮してしまいました。私としたことが迂闊でした。
でも、これからは朝も昼も夜もおはようからおやすみまで毎日365日一緒にいられます。明日が楽しみで仕方ありません。

兄さんと一緒に通学できると思うと自然と体がスキップをしていました。

「桜ちゃん~今日はいいことでもあったのかい?」

八百屋のおばさんがこっちを見て笑っています。
私は「はいっ♪」と滅多に出さないような声で返事をしました。
今日の野菜はカボチャにしましょう。兄さんの好きな食べ物です。
私はおばさんに伝え、支払いを済ませるとすぐ家に帰りました。

ガチャガチャ、バタン

__ん?桜が帰ってきたのか?

「兄さんただいま♪」
やけに元気な声で桜が帰ってきた。
「おかえり桜、遅いと思ったら買い物してきたのか。」
「うん、今日は兄さんの社会復帰を祝うために豪華にしてみることにしました♪」
「あぁ……そういうことね。あぁ~うん…ありがとう。」
「どういたしまして♪」ずいぶんとニッコリとしているな、我が妹よ。そんなに兄が引き篭もりだったのが嫌だったのか……。

晩ご飯まではすこし時間があるので俺は部屋に戻ることにした。


101 キモウトとひきこもり兄(キモウトinコミケの続き)2/3 sage 2010/08/06(金) 01:22:27 ID:eSmnXFRb
「はぁ~マジで明日どうすんだろ……。」
留年に留年を重ねて一年生からやり直し状態だからか、結構不安だったりする。体格とか顔とか色々とおかしいところがあるからな。
自分で言うのも何だが俺はかなりの恥ずかしがり屋だ。妹以外とは挙動不審になってロクに話せないと思う。実際に引き篭もりの原因もこれだったりするし
小学生の頃、作文コンクールで偶然入賞して、生徒の前で発表することになったときは緊張しすぎて倒れたって聞いたからな。
「まぁやるしかないか…。」

脳内シュミレーションしてみる。

教師「今日からこのクラスに新しい仲間が増えるぞ」
生徒たち「!?誰ですか先生ー!!」
教師「さ、入ってきたまえ。」
ガラガラッ
一同騒然
生徒たち「なんだアイツ…。」「おい……あれ絶対ダブリとかのやつだろ?」
ヒソヒソヒソヒソ
俺「よろしく…お願いします……。」

シュミレーション終了

「ぬあぁあああああああぁあっぁぁっぁあああ詰んでるじゃねぇええか!!?」

これはいかん。なんとしても避けなければ……。笑顔だ!!!そう笑顔だ!!よしできるぞ俺。

リトライ

「えぇっと、紅瀬一人って言います!!まぁ留年生だけどもよろしく!!!」

ガチャ「兄さんご飯ですよ、何やっているんですか?」

「NOooooooooooooo!!!!!!!」妹に見られてしまった。あぁなんて恥ずかしいんだ!!
「兄さん?早く来てくださいね、先に行ってますよ。」
ベッドで悶えている俺を見て桜はそう言い残して居間へ行った。

___ふふ、兄さん可愛いです。さてとご飯並べないと♪

翌日

「俺大丈夫かな・・・?なぁ桜?」
「大丈夫ですよ兄さん。兄さんはやれば出来る人です。それにしても制服姿が懐かしいですね。」
「あぁやっぱりそう思うか。サイズがギリギリで着れるかどうか心配だったよ。」
時間は9時前。
ついさっきまで妹と一緒に登校していた。妹はホームルームがあるから「兄さん後であいましょう。」と告げて先に行ってしまった。
そしてここ、職員室の前にいる。俺のクラスの担当の先生がくるらしいが一向にその気配がない。
「えぇ~と、お前が一人君か?」
目の前に如何にも熱血先生の格好をした人がいた。
「は、はい!?そうですけど!??!」
「ガッハハハハ!!兄妹共々美男美女とは驚きだ!!そうだ、お前のクラスは一年八組だ。妹さんと一緒のクラスだ安心していいぞ。」
「は、はぁ……?」
俺が美男子に見えたらそれこそ世の男は大半はイケメンだぞ熱血先生よ?もしかして先生、あんたの目は節穴なのか?
それに桜と同じクラスか。安心するといえばするが重い空気になるとおもうぞ?
「さ、早く付いて来い。今のうちに自己紹介のことでも考えとけよ?」
言われるがままに先生の後ろを歩いていった。2階が職員室なので1年生の教室のある4階までは時間が長く感じる。
しばらくして教室と思われる場所の前でここで待ってろと言われた。
目の前にはひとつのドアが、ここを開ければ俺の勝負の始まりだ。


102 キモウトとひきこもり兄(キモウトinコミケの続き)3/3 sage 2010/08/06(金) 01:26:49 ID:eSmnXFRb
教室内
「お前ら席につけー!!!」
「今日は新しい生徒を紹介するぞ!!!」
生徒一同(桜を除く)「!?」
生徒A「先生ーー!!!!その子は女の子ですか!!」
「ちがぁああああう男だ!!!!」
男たち「えぇーー!!!!!!ちぇ可愛い子だと思ったのによ!!」
「えぇーーい!!うるさいぞ!!!男ども。さ、入って来なさい。」

うわ!!呼ばれちまった。入らないと……
ギィーーーーガチャ

ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ
うぉ!!!皆の視線が痛い……。なんだかすごいジロジロ見られているぞ。
桜お前はニヤケすぎだ!!!……やばいぞ…顔が赤くなってきているのが見なくてもわかる…。
こ、これ…いけるのか?
「さ、自己紹介でもどうだ?」
先生もっと空気読んでくれよ!!ちくしょ…やるしかないのか?えぇい!!!腹をくくるぞ俺は!!

「えぇと、俺の名前は紅瀬……紅瀬一人って言います!!!」

クラス一同(桜を除く)「ヒソヒソ……え?紅瀬?紅瀬って…あの紅瀬か?」

「紅瀬って聞いてそっちの桜のほうを向いた人も何人かいましたが、えと、その……桜とは兄妹の関係です。」

男たち「桜!?(呼び捨てだと)」「えぇーーーーーーーーーーーー!!!!?」「桜ちゃんにお兄さんがいるなんて知らなかったよ!!!?」

「なんで俺がこの一年の教室にいるかというとそれは……それは…。この間まで引き篭もりで二年間学校に来てなかったからで、えと…その。」
「桜の兄とか年上とか関係なく、で、できれば、つるんでやってください!!だ、だから!よ、よろしく!!!」

「お……ぉおおおおぉおお。」パチ…パチパチパチ……パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!!! どうやら成功らしい。良かったぁ~。

「一人くん、君はそこの席だ。さ、座りなさい。」
「は、はい!?」
ぬぉおおおおおやったぞ妹よ、俺はやったぞ。ぐ……しかし視線がきつい、特に女子の視線が俺を舐めわますようだ。俺は見世物じゃないぞ!!!
まぁいい。なんとか席に座ることに専念しなければ、一歩、二歩、三歩、四歩、五歩!よし着いた。これであとは安心だ。
桜、だからお前は一々後ろを見てニヤニヤするな!!!兄さん大変なんだぞ、倒れてもいいほど緊張したんだからな。
「はぁ~もう無理だ。一気に疲れたぞ。頭がギュンとなっちまった。」
はぁ本当に疲れた。つい呟いっちまった。俺マジで大丈夫か。いや、でも意外と掴みはいい感じだったぞ。
桜もいることだ。まぁはぶられることはないと思う。ここは妹パワーに感謝しなきゃな。



103 キモウトとひきこもり兄(キモウトinコミケの続き)4/3 sage 2010/08/06(金) 01:29:16 ID:eSmnXFRb
今、熱血先生が何かを話しているが全く耳に入らん。どうせ桜に聞けばいいか、よし軽く寝るか。
はぁ~気持ちぃー机のヒンヤリしたのが頬にくるぜ、うぉ~。

???まさか桜にこんなかっこいいお兄さんがいるとは思わなかった。こういうのってやっぱり遺伝なのかな?
???前を見ると机に突っ伏している桜のお兄さん。ちょっと話しかけてみようっ♪

???「もしも~し大丈夫ですか?桜のお兄さん。」
???「あれ?もしかして聞こえてない?桜のお兄さん?聞いてるの?」
???「桜のお兄さん!?」

「ぬぉわあ!!!」
だ、だれだ!?いきなり俺に話しかけてきたやつは?!キョロ…キョロキョロ!!

???「こっちですよ~桜のお兄さん~。」

何!?う、後ろだと!?クルッと後ろを覗いてみた。

「な、なんでしょうか?」
???「そんなかしこまんなくてもいいですよ~。」
「えと、なにか話が?」
???「うん。その、本当に桜のお兄さんなの?」
「まぁ……そうだけど…。い、一応年齢的には、こ、高三だから兄だよ?」
???「ふ~んそうなんだー。へぇ、お兄さんなんだー。」
「あぁ……うん、そうだよっ!?。えと…それで、あの、君は名前なんて言うのかな?」
???「あっ!!そうだね♪私の名前、青木。青木麻奈って言うんだ。よろしくね、桜のお兄さん。」
「こ、こちらこそ。よろしく!できれば桜のお、お兄さんはやめてね?」
「は~い♪一人くん。」

フムフム麻奈ちゃんか、覚えとかなきゃ。あっ!そうだ桜とはどんな関係なんだろ?聞きそびれちまったな。まぁ今度にするか。

どうやらホームルームも終っていたらしい。桜の周りに人がぞろぞろと集まっているのが見えた。
はぁ…多分俺も質問攻めに合うんだろうな。覚悟しとかないと…。



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最終更新:2010年08月30日 04:10
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