161 :名無しさん@ピンキー [sage] :2012/02/10(金) 22:24:36.58 ID:zVfWmlOJ
離れて暮らす姉から手紙が来た
内容は「結婚しました」と書かれた結婚式の招待状だった
場所は豪華客船で海の上での結婚式
ブラコンだった姉が結婚する事を少し寂しくも嬉しいと感じる弟
しかしそれは弟を狙った姉の巧妙な罠だった
308 :名無しさん@ピンキー [sage] :2012/02/27(月) 21:38:31.58 ID:fhoaJAyN (1/5)
161様よりのネタ
前後の二回で終了予定。
309 :名無しさん@ピンキー [sage] :2012/02/27(月) 21:39:14.05 ID:fhoaJAyN (2/5)
「結婚します」
そう手書きでしたためられた便箋が同封された郵便が、僕の手元に届いたのは、5月のGW明けすぐの事だった。
その差出人は内海晴香、僕、内海俊輔の実姉だ。
その郵便に同封されていたのはその他に結婚式の招待状、
姉さんと結婚する相手であろう男性との写真、それに式場までの旅行券まで入っていた。
相変わらずの姉さんの気遣いに、僕は苦笑を押さえられない。
昔から姉さんはそうだった。
僕をまるで子供のように扱い、僕の全てに干渉してきた。
それは父子家庭で、姉さんが母親の役も背負っていた責任感があったからかもしれないけど、
それでも、僕には姉さんの存在が重荷になっていた。
姉さんの僕に対する干渉は、ただの躾に留まらなかったからだ。
それは僕の、それこそ全てに及んでいた。
当たり前の一般常識、だけでなく僕の友人関係や、身内にはあまり知られたくない性的な事にまで及んでいた。
その異常なまでの干渉、
いや、束縛が怖くて、僕は中学を卒業すると共に、逃げるようにして家を出たのだ。
310 :名無しさん@ピンキー [sage] :2012/02/27(月) 21:39:53.53 ID:fhoaJAyN (3/5)
アパートの部屋の中、同封されていた写真を見る。
姉さんとその相手の男性が仲睦まじく写っている写真、
それを見た僕の中には、久し振りに見る姉さんに懐かしさと相手の男性に対する嫉妬心のような気持ち、それ以上に安堵感と言うべきような、精神的な安らぎがある。
この写真が、姉さんが僕に対しての執着をなくしてくれたから、そう思えたからだ。
姉さんが僕に干渉する、その一番は僕の交遊関係、特に女の子に対する時だった。
幼い頃からそれはあった。
同い年の子達と遊んでいる時、その中に女の子がいると、姉さんは血相を変えて怒鳴った。
「○○ちゃんに近づかないの!」
「あの娘は俊ちゃんを狂わせる!」
そう姉さんは僕に言い聞かせていた。
幼い僕にとって姉さんは絶対だった。
だから、その時の僕は姉さんの言葉を受け入れていた。
それが変わったのは中学の時の事だ。
始めて好きな娘が出来た。
少しでも一緒の時間を過ごしたい、そう願ったけど、どうすれば良いのか分からずにいた僕は姉さんに相談した、
いや、相談してしまった。
その時の姉さんの答えは、
「ふぅん、そう…」
それだけだった。
その時の僕は、その答えに不満を抱いたものだ。
でも、それは後に恐れに変わった。
その娘はそれからすぐに精神科の病院に入院した。
何の兆候もなかった。
普通の娘だった。
でも、暴漢に襲われ精神を狂わせた。
その事を姉さんに話した時、姉さんは何の表情も浮かべず、
「当たり前でしょう」
と言うと、
「俊ちゃんを誑かしたんだから」
と、今まで見た事のない類の笑みを浮かべた。
311 :名無しさん@ピンキー [sage] :2012/02/27(月) 21:40:47.37 ID:fhoaJAyN (4/5)
もうあの頃の姉さんではないのだ。
姉さんとその相手が幸せそうにしている写真を見ながら、僕は懸命に首を横に振る。
「姉さんはちゃんと相手を、僕じゃない相手を見つけたんだ」
そう独り言を呟いた時、
「何やってんの!」
といえ声が突如として響いた。
声の相手は藤井美月、
僕の恋人で、半同棲している女性だ。
「これダレ?綺麗な女性だねえ」
美月が僕の手から写真を奪い、感嘆したような声で言う。
「姉さん、僕の姉さんだよ」
「え、お義姉さん?」
僕の答えに美月が驚いたような声を出す。
「今までお義姉さんがいるなんて言ったコトないじゃん!」
「なに、急にお義姉さんがいるなんて!」
せわしなく言いながら、美月が俺に迫る。
言えなかったのだから仕方ない。
僕は家を出た後、姉さんはもちろん、父さんにすらその連絡先を教えないようにして、その連絡を一切絶っていたのだ。
僕が何も言えないままいると、美月は結婚式の招待状を見つけ、
「お義姉さん、結婚するんだぁ」
と微笑ましそうに言い、
「だったらちゃんとお祝いに行かないと」
と嬉しそうな表情を浮かべた。
僕は何か言おうかとも思ったけど、見れば、結婚式の招待状もそこまでのチケットも、きちんと二人分用意されていた。
だから、僕もつい、
「美月も一緒に行ってくれるか?」
と言ってしまった。
僕のそんな言葉に美月は無邪気に喜んでくれたが、僕はこの時、もう少し考えるべきだったのだ。
ここの住所は、父さんにも教えていない、
ましてや姉さんが知るはずもなかった事を。
最終更新:2012年03月14日 19:51