関西から来たキモウト 続

55 :関西から来たキモウト6 ◆qtuO1c2bJU [sage] :2012/05/24(木) 06:05:12.39 ID:kPoXlL7t (2/5)
俺にはたった一人の血の繋がった可愛い妹がいた(過去形)

俺は東京、妹は大阪で離れながらも家族の絆があった。
離れ離れでもいつも連絡を取り合っていた。
大和撫子を思わせる丁寧な文面のメール。
ショートカットの髪をかき分けながら天使のように微笑んでいる写真。
内面の性格も良ければ、外見の姿も可愛い。

…自慢の妹のはずだったんだ。

「あはははは! ほら、みいや! 言った通りや! 継投が悪いねん! はよ代えへんからや!」

家のマンションのテレビが置いてあるリビング。
目の前にはあの写真とそっくりの妹が、ソファの上に寝転んだ姿勢ではしゃいでいる。

「これで今日も阪神の勝ちや! 巨人はもうカスピッチャーしかおらんわ! あとはイジメやな!」

テレビで東京ドームの巨人阪神戦を見ながらゲラゲラ笑ってる妹。
もちろん俺にチャンネルの選択権はない。
もうちょっと大人しくできないもんかね。
黙ってたら可愛いのに。

「ふぅ~試合も決まったし…」

妹がリモコンでテレビを消してから、こちらを向く。

「お兄、ご飯どうするん?」
「ああ、なんか頼むか」
「いっつも外食なん?」
「そうだけど」
「もったいないやん。ウチが作るわ。栄養偏んで」
「でも食材あったっけ」
「ん、冷蔵庫ん中、適当に探すわ」

そう言ってキッチンに入って行く妹。


56 :関西から来たキモウト7 ◆qtuO1c2bJU [sage] :2012/05/24(木) 06:06:53.30 ID:kPoXlL7t (3/5)
その時、俺の携帯が鳴った。着信名は幼馴染の彼女である翔子。

「もしもし」
『有? 私だけど今日一緒に歩いてた女誰なの?』
「ああ、妹だよ。大阪から来た。どこで見た?」
『皇居の近く。腕まで組んで恋人同士みたいだったわよ』
「あれは神菜が無理やり…」
『あんなことすると周りに勘違いされるでしょ! 今後一切しないで! いい?』
「わかったよ」
『それにここでは一緒に住むんでしょ?』
「そうだけど」
『あんたね。一週間前に私と付き合い始めて、いきなり違う女とデートした上に同居とかふざけてんの?』
「相手は妹だって…」
『10年も離れて暮らしてたんでしょ? むこうに妹って感覚なかったらどうすんのよ!』
「そりゃ考え過ぎだって。神菜は妹過ぎるくらい妹だよ」

そう。あの慣れ慣れしさは、俺が兄だからだ。
だから神菜も気も使わない。反面俺は気を使ってるわけだが…

『どうだか。有もデレデレしてたじゃないの』
「誰がするんだよ…」

神菜との軽い観光名所巡りは、確かにちょっとは面白ったが、総じてウザかったのに。
そんなことはありえない。

『凄く可愛かったし内心ドキドキしてたんじゃないの?』
「あのな~」

俺が喋ろうとした瞬間、後ろに神菜が見えてびっくりした。
さっきまで料理をしていたのかエプロン姿で右手に包丁を持ってる。
いつのまにいたんだ?
それに目付きが違う気がするが気のせいか?

すっと俺の携帯が、妹に取られる。

『有、聞いてるの? むこうがあんたを男として見てたら…!』

それを聞きながら神菜は淡々とした口調で言った。

「見てたらどうなるって言うん?」

しばらく、その場を静寂が支配した。

そんな中、俺はなぜか昔のメールを思い出していた。


57 :関西から来たキモウト8 ◆qtuO1c2bJU [sage] :2012/05/24(木) 06:12:29.06 ID:kPoXlL7t (4/5)
『件名:お兄さんへ255 差出人:神菜 二年前

元気ですか。私はあまり元気ではないです。
実は一週間前にクラスの男子から告白されたんです。
誰にも相談できないのでお兄さんに相談します。
私には好きな人がいるのですが結ばれることは不可能なんです。
だからその男子と付き合ってもいいかなと思っています。
本当に好きな人は絶対に手が届かない存在なんです。
胸が痛いです。最近、部屋で泣いてばかりです。お返事待ってます』

『件名:RE:お兄さんへ255 神菜 二年前 送信済

俺は元気だよ。神菜はあまり元気じゃないみたいだな。でも良かったじゃん。
神菜を好きでいてくれる奴がいるって、それは神菜が可愛いくて性格もいいからだよ。
とにかくプラスに考えたらどうかな。
その告白された男子より、本当に好きな人のことを考えるべきだと思う。
神菜の本当に好きな人のことは知らないけど、それが本当に無理な恋なのか。
それを考えたらいいと思う。無理ならさっさとあきらめる。好きなら頑張ってみる。
可能性があるなら頑張れ! 応援してるぞ! あんまり泣くなよ!』

『件名:RE:RE:お兄さんへ255 差出人:神菜 二年前

ありがとうございます。頑張ってみます。もう吹っ切れました。
告白してくれた男子には悪いですが、丁寧に誤ろうと思います。
無理かもしれないですが頑張ります。

お兄さん、本当にありがとうございました。大好きです。
この意味も変えてみます。あはは、意味不明でごめんなさい。
また明日から頑張れそうです』


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最終更新:2012年06月10日 13:01
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