392 名前:
パンドーラー19 ◆ZNCm/4s0Dc :2015/03/22(日) 01:28:30 ID:ef32a72bb [sage]
「ねえ、奥さん、知ってる?」
「え、何々?」
「あそこのお宅…」
「向田さんの?」
「そう!向田さんのとこって、お子さん二人と、父親だけだったでしょ」
「母親は他に男を作って出ていったんだっけ?」
「そう!それでその父親も事故で亡くなって…」
「可哀想よね~、お子さん二人だけなんて」
「―――実はそれが事故じゃないらしいのよ」
「え?!ナニソレ?!!」
「娘さんに階段から突き落とされたって…」
「え~、何で?!」
「実は、娘さんと息子さんがデキてたらしいのよ…!」
「そういえば、妙に仲が良かった気もするわねぇ…」
「それで、保険金目当てに父親をドン!って…」
「最近の子供は怖いわね~」
紅保ユリコは大学生になっていた。
今は夏休みで、兄のユウイチとデートの最中だ。
彼女はふと思い出す。
あの二人はどうなったのか…。
私は兄さんを手に入れた。
でも、マキお姉さん、あなたは―――
「どうした、ユリコ?」
「ううん、何でもない」
空を見上げるが、答えが得られるわけがなかった。
393 名前: パンドーラー19 ◆ZNCm/4s0Dc :2015/03/22(日) 01:29:50 ID:ef32a72bb [sage]
柚谷ミコトは施設で更生し、今は介護職を勤めている。
「いつも、ありがとうね~」
「いいのよ、おばあちゃん。私も楽しいから」
束の間の休憩に外のラウンジに出る。
ミコトは心残りだった。
トシヤの事。
自分がどんなことをしてしまったか。
施設を出ると、真っ先にトシヤの家に向かった。
しかし、すでに空き家になっていた…。
彼女は空を見上げる。
吸い込まれる青い空に、白い入道雲が浮かんでいる。
私は…あなたに謝りたい。
でも、あなたは何処?
謝る機会もない、それが私の償い…?
目の前に広がるのは白い砂浜に青い空。
今日もあの日のように晴れ渡っていた。
二人…いや、三人の行方は誰も知らない―――
最終更新:2015年03月22日 02:25