理緒の檻(その20)

479 理緒の檻 ◆/waMjRzWCc sage 2007/11/18(日) 00:41:31 ID:Q15yk+4Y
はぁっ、はぁっ、はぁっ…
さすがに、疲れてきたわね…
でも、探さなきゃ。
少し歩きながら考えてみよう…
落ち着いて、冷静に…
まず修くんが呼び出されたのは公園。
そこで、多分どうにかして修くんを捕まえる。
その後で、羽居春華は修くんを運ばなきゃいけない。
つまり遠くに行くのは困難だろう。
更に言えば人に見られるのは極力避けたいと思うはず。
だとすれば室内に行くのが普通だ。
誰も居ない事が分かってて羽居春華の家じゃなく、尚且つ入れそうな場所は…
学校…?
学校なら、ある程度人に見られる心配も無いし、窓でも開けておけば容易に入れるのではないか?
行ってみる価値は有りそうね…
そうして、私はまた走り出した。



「修お兄ちゃん、次はお口にいっぱい出してね?」
「や、めろ…」
「あむ、ちゅ…ふふ…すぐに大きくさせてあげるんだから」
「うっ…く…」
「さすがに3回目ともなるとすぐには大きくならないなぁ…」
でも、まだ許してあげない。
私の事だけしか考えられなくなるまで何回だってしてあげる。
「冬華ちゃん…止めろ…」
「さっきも言ったでしょ?止める気なんて無いって」



480 理緒の檻 ◆/waMjRzWCc sage 2007/11/18(日) 00:45:04 ID:Q15yk+4Y
「理緒姉が、来る」
「まさか。あの人がここに来る訳ない。修お兄ちゃん、そうやって冬華に止めさせようとしても無駄だよ?」
いや、理緒姉は間違いなく来る…
なぜか確信めいた考えが頭の中を支配していた。
「ん、んぐっ、んはぁ…修お兄ちゃん、そろそろ出して?」
「出せと言われても…」
そんな簡単に自分の意思で出せるもんじゃない。
更に言えば今はなるべく出さない様に我慢している。
このまま快楽に流されてしまったら、俺は普通の日常に戻れなくなる様な気がする。
「ん、やっと少し透明なのが出てきた…」
くっ、いくら頭の中で否定しても気持ち良いものは気持ち良い…
「んんっ、もっと、もっと修お兄ちゃんの飲ませて?」
「うぁっ、く…」
やばい、そろそろ、出ちまいそうだ…
「そろそろイっちゃいそう?」
駄目だ…もう、出っ…
「うあぁっ!」
ビュクン…
「ん、んむ…」
冬華ちゃんはこくこくと喉を鳴らして飲み込んでいく。
「はぁ…おいしかった」
全て飲み干してしまった冬華ちゃんは、ある程度満足した様な表情をしている。
「そろそろ、中に出して欲しいなぁ…」
「そこまでよ」
「え…そんな…まさか、嘘でしょ…?」


481 理緒の檻 ◆/waMjRzWCc sage 2007/11/18(日) 00:48:38 ID:Q15yk+4Y
「私が来るはずない、そう思ってたみたいね」
理緒姉は多少疲れた様子で話をしている。
「どうして、ここだって分かったの…?」
「多少の推理と修くんからのテレパシーかな」
俺、テレパシーなんて使えないけど…
「そんな見え透いた嘘…」
「それより」
明らかにさっきとは違う声色になる。
「さっさと修くんから離れなさい」
ゆっくりと、冬華ちゃんが離れていく。
「良い子ね。この手錠の鍵は?」
「春華お姉ちゃんが、持ってる」
「そう…」
と、理緒姉は一気に冬華ちゃんに近付き、
「えっ?きゃあっ!」
冬華ちゃんの腕を捻りあげた。
「あぁぁぁぁっ!折れちゃうぅ…」
「折りはしないわ。あなたは大事な人質ってとこ」
「うぅ…離してぇ…」
「羽居春華、居るんでしょう?出てきなさい!」
羽居春華は静かに入ってきた。
「…」
「やっぱりまた会ったわね」
「冬華を離しなさい」羽居はいつもと変わらない様子だった。
「鍵を外してくれればね」
羽居はすぐに俺の手錠を外し始めた。
俺の手足が開放される。
「羽居、俺の服を返してくれ」
「そこに有るわ」
俺の服は机の上に綺麗にたたまれて置いてあった。



482 理緒の檻 ◆/waMjRzWCc sage 2007/11/18(日) 00:51:34 ID:Q15yk+4Y
「修くん、それを着たらこっちに来て」
「分かった」
理緒姉は既に冬華ちゃんを離していた。
「あなたたち…どういうつもりで修くんをさらったの?」
「あなたに対する復讐よ」
羽居は当たり前だと言う位の話し方をしていた。
「私への復讐?そっちの妹の方は分かるけどあなたはなんの復讐なのかしら?」
俺は気付いていなかった。それは理緒姉が思い出してはいけない事だという事を。
「織部理緒に殺された、私の母親羽居四季の復讐よ」
瞬間、空気が変わった。
まずい、止めるんだと俺の頭の中で警告が鳴る。
だが、声を出す事はできなかった。
「羽居…四季…?それって、まさか…」
「あぁ、ごめんなさい理緒姉さん、あなたの中の母の名前は織部四季でしたね」
羽居春華は、その端整な顔立ちに穏やかな笑みを浮かべていた。
それは、この場に似合わないあまりにも自然な笑顔だった。
俺はこの時初めて羽居春華という人物を見たのかもしれなかった。
「四季…なんで、あのお母さんの名前があなたから…」
理緒姉の表情は俺には見えなかった。
しかしその声は震えていた。
「知らなかったのですか?母、四季は織部の家を離れた後羽居に嫁いだのです」


483 理緒の檻 ◆/waMjRzWCc sage 2007/11/18(日) 00:54:32 ID:Q15yk+4Y
それはつまり。
織部理緒と羽居春華達は、異父姉妹だという事で。
その母親を理緒姉は…
「四季の復讐…?私が、何をしたって言うの?」
理緒姉の声は消えそうな程弱く、今にも泣き出しそうだった。
「本当に覚えていないんですか?理緒姉さん」
「何を…理緒は何をしたの…?」
理緒姉が自分の事を名前で呼んだ?
そういえば理緒姉は、小さい頃自分を名前で呼んでいた。
「理緒姉さん、あなたは四季を殺したんです」
それ以上、言うな…
「自らの母親を、その綺麗な手で」
言うんじゃない
「その手に不釣り合いな刃で」
止めてくれ
「四季の首を、切った」
「あ…あぁぁ…あぁぁあぁあぁぁぁっ!」
理緒姉は、両手を見つめて叫んでいた。
「思い出しましたか?」
「四季…四季…お母さん、おかあさん…」
「母の血は、温かかった?」
「とても、温かかった…理緒が、初めて感じたおかあさんの温もり。赤くて、紅くて、綺麗だった」
思い、出した。
理緒はおかあさんを殺したんだ。
ずっと忘れてた。
どうして、あんなに美しい光景を忘れてたのかな。
理緒も、おかあさんも同じ赤に染まって、おかあさんはその赤の中でまるで女神様みたいに見えて。


484 理緒の檻 ◆/waMjRzWCc sage 2007/11/18(日) 00:57:37 ID:Q15yk+4Y
キラキラと、太陽の光が眩しかった。
手には赤くなった包丁が有った。
重くて、切った後すぐに落とした。
理緒は初めて自分からおかあさんを抱き締めて、甘えた。
びちゃりと濡れて、全身が真っ赤になった。理緒の意識は、そこで無くなった。
目が覚めた時、お父さんがとても悲しそうな顔をしてた。
理緒が、どうしたの?どこか痛いの?って聞いたら、心が痛いんだって言ってた。
どうして?どうして痛いの?
父さんは、理緒も、お母さんも助けられなかった。だから、痛いんだ。
おかあさんに何か有ったの?
覚えて…無いのか?
何を?おかあさん、どうしたの?
…お母さんはね、遠い所に行ってしまったんだよ。遠い、遠い、父さんや理緒には行けない遠い場所にね。
じゃあ、おかあさんに会えないの?
ああ。
寂しい…
父さんもだ。
でも、理緒には修くんとお父さんが居るから大丈夫。
修くんは、理緒と一緒に居てくれるもん。
そうか…理緒、おじいちゃんと一緒に住むんだ。
どうして?
父さんはな、やらなければいけない事が有るんだ。理緒や、修の面倒を見れないかもしれないんだ。
お父さんも、遠くに行っちゃうの…?
大丈夫、理緒には修が居る。


485 理緒の檻 ◆/waMjRzWCc sage 2007/11/18(日) 00:58:25 ID:Q15yk+4Y
修はまだ小さいけど、しっかりした子だ。
だから、きっと修は理緒を助けてくれる。
お前達は、助け合って生きるんだ。
うん、分かった。理緒、修くんとずっと一緒にいる。



「修くんと、ずっと一緒に居る…」
「理緒、姉…?」
何か、違う。いつもの理緒姉じゃない…
「理緒ね、修くんとずっと一緒にいるの」
「えっ…?」
「修くん、まだ小さいけどしっかりしてるから、理緒を助けてくれるの」
理緒姉…精神が過去の理緒姉なのか?
記憶が戻ったショックで、こうなったのか?
「織部君、理緒姉さんから離れて」
「なんでだよ…?」
「いいから離れなさい!」
訳が分からないが、羽居の勢いに押されてわずかに後ずさる。
「あなた、だれ?どうして理緒から修くんを取るの…?」
理緒姉は理不尽におもちゃを取り上げられた子供の様な反応をする。
「理緒姉さんみたいな人殺しに織部君を渡せません」
「うっ…えぐっ…ひっく…修くんを…ひっく…理緒から、取らないでぇ…」
涙を流す理緒姉を、俺は初めて見た気がする。
不謹慎だが、その時俺は理緒姉の事をとても愛しく、美しい存在だと思った。
「織部君を、理緒姉さんの側には置いておけません」


486 理緒の檻 ◆/waMjRzWCc sage 2007/11/18(日) 00:59:20 ID:Q15yk+4Y
「いやっ、いやぁ…!どうして理緒から修君を取ろうとするの?」
「理緒姉さん、分かって」
ぐいっと、俺の腕を引っ張って連れて行こうとする羽居。
「おっ、おい!羽居、離せ!」
羽居は俺の言葉を無視して行こうとする。
その時だった。
俺の視界の端に、光る物が目についた。
その光る物は理緒姉の手に握られていて、きらめいていた。
「理緒から…理緒から修くんを取らないでぇっ!」
理緒姉は、光る物を突き出して走ってくる。
その狙いは羽居を捕らえていた。
「春華お姉ちゃんっ!」
冬華ちゃんが叫ぶ。
羽居春華はやっと振り返る。
ドスッ…
ぽたっ…ぽたっ…
「いっ、てぇ…」
「修お兄ちゃん!」
「織部君っ!」
「修…くん…?」
理緒姉が羽居にぶつかる間際、俺はなんとか体を間に入れた。
刺さったのは、脇腹。
一応、致命傷は避けられたみたいだ。
「修くん…修くん!どうして、なんで理緒の邪魔をしたのっ?」
「理緒姉には、もう傷ついて欲しくないんだ…くっ」
「織部君、すぐに救急車を呼ぶから!」
「頼むよ…」
あ~…刺されるって、こんな感じだったのか…
急速に体から何かが抜けていく。
俺はそこで目を閉じた。

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最終更新:2007年11月24日 00:43
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