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ハルとちぃの夢 sage 2008/02/03(日) 17:43:29 ID:eleE809X
その日、珍しく遥は早くに目を覚ました。
悪夢、を見たからだ。
「嫌な夢…見ちゃったなー」
あまり良くない目覚めの中、遥が呟く。
その夢は、2年前の記憶、兄が自分の物ではなくなっていく悪夢。
「もう…あんな思い…したくない!」
怒りや悔しさ、恐れを吐き出すように、呟いた。
小さい頃の遥にとって、他人は自分を追い詰めるだけの存在だった。
妹の智佳にばかり構い、自分を見ようとしない両親。
自分を攻撃し、虐めてくるだけの男の子達。
そんな自分を疎外するだけで、助けようともしない他の子達。
幼少の頃の遥は、今とは違い、陰気で表情に乏しく可愛いげのない暗い子供だった。
そんな遥を、ただ一人だけ”愛して”くれたのが、兄である康彦だった。
いじめっ子がいれば追い返し、遥が泣けば側にいて慰め、遥が喜べば一緒に喜んでくれた。
そんな兄のおかげか、遥は少しづつ笑顔が増え、明るく活発な少女へと成長していった。
「お兄ちゃん…」
懐かしい呼び名で兄の事を呼んでみる。
兄は自分を愛してくれている。
それは
家族愛としての愛情ではあるが、遥はそれで十分に満足していた…つもりだった。
遥は気付いてしまった。
兄がその愛情を向ける相手が自分だけではない事を。
両親に対しても向けられていた。
そして、妹の智佳にも、それは注がれていたのだ。
遥がそれに気付いた時、胸が締め付けられるような苦しさを感じざるおえなかった。
553 ハルとちぃの夢 sage 2008/02/03(日) 17:46:14 ID:eleE809X
ある晩に遥は、自分の兄に対する想いが何なのかを、思い知らされる事になる。
その日も両親の帰りは遅く、深夜になっても帰宅する気配はなかった。
最近では珍しい事ではなく、家事全般は兄が担当していたし、兄さえいれば良いと考える遥にとって、何の問題もない。
だが、その日に限って遥は不思議と寝付けなかった。
その為か、遥の足は自然と兄の部屋へと向かっていた。
何をしに行ったのか、遥自身も良く覚えていないし、当時の遥に聞いたところで答えは出ないだろう。
漠然とした不安を取り除く為に、お喋りがしたかったし、兄のベットで添い寝して貰いたかったかもしれない。
「お兄ちゃん、起きてる?」
小声でそう言ってから兄の部屋のドアを開けると、遥にとって辛い光景がそこにはあった。
兄の手を握り締めながら兄のベットで眠る智佳、そんな智佳を優しい瞳で見守りながら、智佳の頭を撫でる兄。
それは、両親の不在に恐怖と不安を覚えた幼い妹と、その妹を慰めて寝かし付ける兄。
ただそれだけの光景。
それが遥には今までにない恐怖と不安を感じさせた。
「どうした、ハル?」
自分の存在に気付いた兄が、小声で聞いてくる。
「ハルも眠れないのか?」
あくまで小声で、少し茶化すように兄が言う。
「なに…それ?」
兄の質問には答えす、遥は智佳の方を指差す。
「ちぃちゃんか?」
明るい顔で、智佳を起こさないように抑えた声で兄が言う。
「眠れなかったみたいでな、やっぱりまだ、ちっちゃいちぃちゃんが一人で寝るのは無理かな?」
智佳の頭を優しく撫でながら、ゆっくりと言った。
それは遥にとって更に辛い光景だった。
何故か、そこにいたくなかった。
「おにいちゃん…」
兄の行動に応えるような智佳の寝言を聞いた時、それが遥の我慢の限界だった。
「どうした、ハル?」
心配そうに問い掛ける兄に答える事も出来ずに、遥は自分の部屋に駆け戻ってしまった。
554 ハルとちぃの夢 sage 2008/02/03(日) 17:48:39 ID:eleE809X
部屋に戻った遥は、自分の感情を持て余していた。
兄は智佳を、妹として可愛いがっていただけ。
自分と同じように、妹として愛しているだけ。
兄からしてみれば、自分も智佳も同じ妹。
その当たり前の事実が、遥に重苦しい何かを与えてきた。
「お兄ちゃんお兄ちゃん」
今、ここにはいない兄を呼んでみる。
撫でられているのが自分だったら、自分が一緒に寝れたなら、優しく手を握ってくれたら…。
そんな想像をしているうちに、遥は自分の下半身、特に股間の部分が熱くなっているの感じた。
遥がそれほどに性に関する知識を持っていた訳ではない。
10歳の少女が当たり前に持っている程度のものだ。
それでも遥は、自分の股間、膣やクリトリスを触り始めていた。
熱さを収める為の行為だった。
だが、それは想像していなかった快感を遥に与えた。
この手がお兄ちゃんのだったら、
そう考えながら、まだ発毛もしていない、その部分を激しく刺激する。
「お…にいちゃ…ん…」
苦しげに言ったその一言は、更に遥の快感を増大させた。
「おにい…ちゃん…おに…いちゃん…」
そう口にする度、自分を触ってくれる手が、兄の手のように思えてくる。
気付けば、片方の手が、膨らみ始めたばかりの小さな胸を刺激していた。
「おにいちゃん…そこも…もっとぉ」
自分の言葉に従うかのように、遥の手の動きは更に激しさを増す。
「おにいちゃん…遥も遥も…だいすきだよ!」
その言葉を最後に、遥は少しだけ、意識を失わせた。
始めての自慰、それで遥は絶頂したのだ。
意識を取り戻した後、遥は自分の本音に気付いた。
自分が兄の事を”男”として愛しているのだと。
智佳に対するような”妹”としてではなく、兄にも自分の事を”女”として愛して欲しいのだ、という事に。
兄妹での恋愛、それがタブーである事は、幼い遥にも薄々と分かっている。
だから、その想いを胸の奥に秘めた。
その秘めた想いが、ゆっくりと確実に大きく、歪んだ形へと成長していく事を知らずに。
555 ハルとちぃの夢 sage 2008/02/03(日) 17:51:59 ID:eleE809X
「兄貴…」
今の呼び名で、遥が兄を呼ぶ。
お兄ちゃんから兄貴へ、遥が呼び名を変えたのは、ある一人の女がきっかけだった。
今日の悪夢を見せた原因にもなった女、横山楓の存在がきっかけとなったのだ。
遥が中学2年、兄が高校3年の時に、遥はその女と出会った。
その頃の兄は、何事も完璧にこなそうと無理し過ぎていた、少なくても遥の目にはそう写った。
両親がほとんど家にいないせいか、兄は責任を背負い過ぎている、
遥も、そんな兄の負担を減らそうと、せめて家事だけでも手伝おうとしたが、どうしても上手くいかず、その都度、兄に”ハルにはハルにしかない長所があるから”と、慰められていた。
そんな兄だったが、ある日を境に、無理している雰囲気が無くなり始めていた。
手を抜き始めた訳ではない
良い意味で自然体になってきたのだ。
当初は遥も、兄の変化を喜ばしく思っていたが、その変化の理由を知った時、遥はどん底に突き落とされるような感覚を味わった。
「これがヤスの妹?可愛いじゃねぇか!」
遥が始めて、その女、楓に会った時の、相手が言った言葉。
「アタシの事をお姉ちゃんって呼んでいいぞ!」
嬉しそうに言葉を続ける楓。
その言葉に遥は顔をしかめた。
自分にはお兄ちゃんが居てくれれば良い、
そう思いながら、相手から距離をとる。
「かぁー!恥ずかしがっちゃって、可愛いねえ」
そう言いながら、楓が距離を詰める。
その時、兄の強烈な一撃が、楓の後頭部に炸裂した。
「何やってんだ、お前は!」
行き過ぎた楓の行動を咎めるよう、兄が言う。
「何すんだよ!アタシは妹ちゃんと仲良くなろうと思って…」
「ハルがびびってんだろうが!」
自分を助けるような兄の一言。
遥はそれだけで嬉しくなる。
が、それはすぐに覆される。
「ヤスの妹なら、アタシにとっても妹になるよなあ?」
楓が、兄に歩を詰めながら、そう言う。
「ど…どういう…」
「あの日、アタシを激しく抱いといて、ナンか言う?」
楓の言葉に、兄は顔を赤くさせていく。
二人の言葉の意味が分からない程、遥は子供ではない。
「わ…私、やんなきゃイケない事、あるから!」
無理な大声でそう言うと、遥は家に向かって走り出した。
556 ハルとちぃの夢 sage 2008/02/03(日) 17:53:28 ID:eleE809X
家に戻った遥は、自分でも分からない程に動揺していた。
兄が自分ではない、別の女と結ばれる、
それは当たり前の話だし、覚悟もしていたつもりだった。
しかし、今、現実にその相手が現れると、遥の胸は大きく掻き乱された。
何故、自分じゃ駄目なのか、血の繋がりだけで何で諦めなきゃイケないのか…!
何にも当たれない怒りが遥を苦しめる。
そんな自分の事を気にして、自分の部屋に入ってきた人間がいる。
「ハル姉?」
自分を心配して入ってきた妹がいた。
この妹が自分と同じ目で兄を見ている事は、既に気付いていた。
それを苦々しく思った事もあるが、今はそれを使うのが最上であるように思えた。
だから言った。
「ちぃちゃんはお兄ちゃんの事、愛してるかな?」
と。
その答えを知っていながら、
この妹を利用する為に。
楓が死んだのは、それから少し経ってからの事だった。
557 ハルとちぃの夢 sage 2008/02/03(日) 17:55:04 ID:eleE809X
横山楓、
その存在は、康彦だけでなく、遥にも深い影響を与えている。
その死が康彦に重い傷をもたらし、その存在が遥に兄への呼び片を変えさせた。
あのようになれば、自分も、唯一無二になれるかもしれない、
そう考えた遥は、兄の呼び名を、”お兄ちゃん”から、”兄貴”へと変えた。
それから2年の月日が経つ。
自分と兄の関係に大きな変化はない。
楓の死が、思った以上に兄に傷を与えた為、遥も思いきった行動がとれずにいたからだ。
それでも遥は思う。
もう一度、兄の呼び名が変わる時が来る、と。
それは、恋人に相応しい呼び名になる、と。
まだ、兄は自分を妹以上に見ていないし、それ以外にも沢山の壁がある。
だが、最後に兄の傍にいるのは、自分だけだ。
遥には自信があった。
自分が1番に兄を愛しているんだ、という自信が。
決勝の相手は智佳になるだろう。
その事にも遥は余裕を持っている。
時計を見れば、まだ6時30分にもなっていない。
「昨日の今日だしね」
誰に言う訳でもなく、言い訳のように呟くと、遥の足は自然と兄の部屋に向かっていた。
起こす時に唇が当たるのは良くあるし、舌が入っても事故だよね、
そう考えながら。
最終更新:2008年02月04日 23:53