馬鹿姉01

564 馬鹿姉 一話 ◆iIldyn3TfQ sage 2008/05/10(土) 00:01:01 ID:4fkg1KoX
このフレーズは昔どっかでみた
『これは親馬鹿じゃない、馬鹿親だっ』
というどこぞの迷言から生まれましたとさ、ぱちぱち。



俺には一つ上の姉さんがいる。



      その姉さんは馬鹿だ。



いや、頭が悪いってわけじゃない。


小中高と通信簿にほとんど5以外はなく常にトップを争う成績を叩き出す。
かといって毎日机に缶詰になっているわけじゃなかったりする。
よくて精精三十分まとめる位の勉強時間がいいところだ。

容姿についても身内びいきになるが、美人というしかない。
雪のような肌の色白、飾りっけのない流した髪は濡れ羽色で艶やか。
身体もモデルに劣るとも勝らないボン、キュッ、ボンな体型だ。

性格についても頭が堅いわけでもなく、緩すぎることもなく。
ある程度の社交性を備えていて、かつ妬まれることもない。



それでも、そんな姉さんでも、馬鹿は馬鹿なのだ。



――――――親馬鹿ならぬ馬鹿姉状態なのだ。



それを世の人は、ブラザーコンプレックスという。



周囲の人間は逆に僕がシスコンだ、というけれど。



・・・・・何故なんだ?






565 馬鹿姉 一話 ◆iIldyn3TfQ sage 2008/05/10(土) 00:01:24 ID:4fkg1KoX

閑話休題。


自室で読書・・・漫画を読めば、カーペットの上でクッションを抱いて寝そべる。
珍しく勉強に励んでいれば、さも家庭教師張りの要領の良さで、間違いを的確に指摘する。
入浴してのんびりしていれば、「背中を流そうか?」とバスタオル姿で浴室に入ろうとする。
寝床に着こうとすれば、いつのまにか自然にもぐりこんでいる。
姉さんを大幅な労力を費やして姉さんを三十分ほど掛けて寝かせる。
いつのまにか、その次の朝には、姉さんが、僕のベットで抱きついているのだ。



大学入試のために生徒会にでも入ろうか?と呟けば、本気で生徒会長になっている。
二流のIT大学へと進路を決めれば、それこそ第一志望にしていた東大や京都大学、早稲田大学を、
おしげもなく蹴り、そこへと進路を変更してしまう。


そこの大学生が最終目標として取る国家資格を独学で学び、
それを手柄に容易に大学を合格してみせた。

ちなみに五つもある学科の全ての推奨資格もすべて所得しやがった、のだ。

もしかすると、僕が就職するなんて言い出したら、同じ職場に勤務する羽目になりかねない。



自然と劣等感は感じなかった。



あえて言おう、才能の無駄遣いだろう、と。



だが、しかし、どこにこのような、姉がいるのだ。

いや、ここにいたか。


幾らなんでも大学生となった弟に、
異性との付き合い方を頑なに警告する姉など。






566 馬鹿姉 一話 ◆iIldyn3TfQ sage 2008/05/10(土) 00:02:08 ID:4fkg1KoX
僕は、ため息をついて見せた。


「ため息なんてついてどうしたー?」
「いや、姉さんがね」

今、姉さんは必修の講義に出ていて、僕の隣にはいない。


もっとも姉さんは国家資格を取ってしまったので、
それゆえに彼女の単位は最初から+10単位というありえないことだった。


だが、姉さんは入学してから一年で取れる全単元を取っていた。
何故かと言うといわく「これなら神楽[かぐら]と一緒に出れるでしょ?」

見事に単位を修得した姉さんは、僕の選択授業と重なるようにしていた。

必修授業は一緒になれないと悔しげに涙を流していた。
だからこそ、ありえないってわけなんだが。

まさか体育系の授業でわざと僕の敵チームに入って、
接触プレーをするほどだから笑えない。嗤えない。哂えない。

大体中盤から後半で退場になって「むきー」とか言いながらハンカチ噛んでるけどね。


しかも、男子の先輩から――女子の先輩は姉さんが遠ざけるのさ――先輩の奨めで研究室に入れば、
いつのまにか姉さんが隣の席でニコニコしている。



僕の席が末端だったため、姉さんは僕の席に積み上げられた本から、
講義に使う一類を取り出して「はいっ」と太陽のような笑顔で渡す姉さん。

あなたは残存するやまとなでしこですか?
なんて思いつつも苦笑を張り付け、受け取る俺。





567 馬鹿姉 一話 ◆iIldyn3TfQ sage 2008/05/10(土) 00:03:17 ID:4fkg1KoX



俺は講義を終えて出た教室から、姉さんの姿に気付いた。


「弟君、迎えに来たよ」
「姉さん、あのさ言ってるじゃん」
「聴こえないなー」
「まぁいいや、研究室行こう」
「うん、そうだね弟君」

研究室に向かうと、姉さんの机はチョコ菓子に溢れていた。

「姉さん、俺言ったよね?せめてお菓子は机の中に入れておいてさ」
「むぅ、弟君。君は分かってないな。チョコは頭を活性化させるんだよ」
「そして糖分の取り過ぎは頭の活動を悪化させる」

僕自身もそうだ。僕はあったら一気に食べちゃうタイプ。

「むーーー、」
「それに姉さんのぶくぶくと太った体を見たくないし、綺麗な姉さんでいてほしい」
「そうか、そうだよね、ふふふふふ」

姉さんはチョコ菓子のパッケージを掴み取り、それを全部“捨てた”


「おわっ、何するんだよ姉さん」
「ふふふ。だから、綺麗な私でいたいし」

僕は姉さんは後ろから抱きしめると、はっと我に返った姉さん。

「あっ、その駄目だよ、弟君」

「(///)そ、その私達こんな処で散らすなんて」
「何をだよっ」
「そ、の、私と弟君の、初めて」

周囲から睨まれる視線を浴び、僕は実の姉に、チョークスリーパーを食らわした。

「ちょ、弟君っ!! ギブギブッ」
「反省したか? yes or no?」
「yes!!!」
「よろしい」

やわらかくて好い香りを放つ姉さんの身体を放す。
あー、これが恋人ならばなー。

「はぁ、弟君は乱暴なんだから」
「で、話戻すけど姉さん、適量にしなよ?わかった?」
「うん、わかった」

観る者を魅了させる、母性溢れる微笑み。その笑顔で、また僕は誤魔化されるんだろーな。

はぁ、とだけため息を落として、研究室の片隅・・・自分の席に座った。

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最終更新:2008年06月08日 20:29
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