172 天国への扉 前編 sage 2008/07/05(土) 00:11:13 ID:6/rOwjCL
ボクには五つ年上の
姉さんがいる
名前は依代瑞希(よりしろ みずき)。
ボクと姉さんは正反対だ。ボクは背が低くて、頭も良くなくて、運動もできなくて、垂れ目
でぼーっとした顔をしているけれど、姉さんは背が高くて、頭も良くて、運動もできて、目
もつり目でキリッとした顔をしている。
そんな姉さんがいることが少しボクのコンプレックスだけど、姉さんの事は嫌いじゃない。
だって、姉さんは優しい。
ボクが、一生懸命勉強したのに三十点しか取れなくて落ち込んでる時
「こんなものでお前の知性を測れはしないよ。だから気にするな。」
と言って慰めてくれたし、それに姉さんはボクの知らないことをたくさん教えてくれる
んだ。例えば、ボクが、姉さんとお風呂に入っている時
「姉さんは女の子なのに、胸がボクと同じツルペタだね。どうして?」
と聞いたら、
「いいかい、和希(かずき)。胸は脂肪の塊で何の役にも立たない無駄なものなんだ。
だから、胸が大きい人は馬鹿なんだよ。その点、私は賢いだろ? だからこんなにも
胸がないのさ。そうに決まっている。」
と少し悲しそうな表情をして教えてくれた。
そんな優しくて、何でも知ってる姉さんの事はむしろ大好きなんだ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
173 天国への扉 前編 sage 2008/07/05(土) 00:12:25 ID:6/rOwjCL
朝――ボクはまだ眠たい目を擦りながらジリジリと鳴る目覚ましを止めた。
時計の針は六時を指していた。いつもより一時間早い。
今日からしばらく母さんが出張でいないので、朝ごはんを作らなければいけないからだ。
ベットからぬけだそうとした時、パンツに違和感を感じた。ボクは嫌な予感を覚えながら
恐る恐るパンツに触れた。パンツはしっとりと濡れていた。
予感的中。ボクは中学一年生にもなってお漏らしをしてしまったようだ。
「どうしよう……。」
このことが姉さんにばれたら、きっと怒られてしまう。
「なんとかしなくちゃっ。」
なにかいい方法がないか考えてみるけど、なかなかいい方法が思いつかない。
困ったボクが頭を抱えていると、ふと時計が目にはいった。時刻は六時五分を過ぎている。
そっか、すっかり忘れてたけど今日は朝ごはんを作るために早起きしたんだった……。
ん? 早起き?
「そうだ!」
いいことを思いついた。
姉さんはいつも七時に起きるからまだ隣の部屋で寝てるはず。幸い濡れてるのはパンツだけ
みたいだから、姉さんを起こさずに一階のお風呂場まで行ってパンツを水洗いして洗濯機の
奥のほうに放り込んじゃえばいいんだ。これならきっとばれないぞ。
よし、そうと決まれば急がなくっちゃっ。
174 天国への扉 前編 sage 2008/07/05(土) 00:13:35 ID:6/rOwjCL
心臓の鼓動が高鳴る。ボクは忍び足で姉さんをに気づかれないように慎重に薄暗い階段を
下りている。気分は泥棒だ。後三段。ゆっくりと足を下ろす。後二段、慎重に、慎重に。
後一段、お風呂場は階段を下りてすぐのとこだからもう少しだ。
階段を無事に下り、なんとかお風呂場にたどり着いた。ここまでくればもう安心だ。
「ポッポッポー、ハトポッポー」
気が緩んだボクの口から自然と鼻歌が流れる。歌いながら電気を点け、蛇口をひねり水を
流し、パンツを洗おうとした時――
「和希、何をしている?」
背後から聞き覚えのある澄んだ声、姉さんの声が聞こえた。
「ねっ、姉さん、起きたの?」
ボクは手に持っていたパンツをとっさに背中に隠しながら言う。
「ああ、ちょっとトイレに。それより何をしていた?」
「なっ、なんでもないよ。」
「なんでもないことないよ。背中になにか隠しただろ?見せなさい。」
「かっ、隠してないよ、なにも。」
必死にごまかそうとするボクを無視して姉さんはボクの腕をとり無理やり前にもって来さす
と手にあるパンツを奪った。
もうだめだ! 怒られる!
「ごめんなさい! ボクお漏らししちゃったんだ!」
ボクは正直に白状し、姉さんの怒声に備えて目を瞑った。…………しかしいつまで経っても
姉さんの怒声は聞こえてこない……あれ? おかしいな?ボクは恐る恐る目を開けてみる。
見ると姉さんがボクのパンツを鼻に当て匂いを嗅いでいた。なんだか息が荒いみたいだ。
「ねっ、姉さん?」
ボクが姉さんに声をかけると姉さんはハッとした表情をしてパンツを鼻から離すと
「和希、おめでとう。これはオシッコじゃないよ。これは夢精だよ。和希も大人になったん
だよ。今晩は赤飯を食べよう。」
と言って笑みを浮かべた。ボクは夢精の意味が分からなかったけど、姉さんが怒っていなか
ったので嬉しくなって頷いた。
175 天国への扉 前編 sage 2008/07/05(土) 00:14:41 ID:6/rOwjCL
その日の夕ご飯は姉さんと約束どおり赤飯を作って、二人で食べた。食べ終えると姉さんが
「和希、今晩お風呂に入ったら私の部屋に来なさい。大人になったお祝いにいいものを見せ
てあげよう。」
と言った。ボクはいいものってなんだろう? と思い聞くと
「それは、部屋に来てからのお楽しみだよ。」
なんて姉さんが言うから、ボクはワクワクして気づかなかったんだ。姉さんの瞳が妖しく
煌めいていたことに……。
最終更新:2008年07月06日 18:11