276
馬鹿姉第三話 ◆iIldyn3TfQ sage 2008/07/11(金) 02:14:24 ID:dyP+0le4
そんなことこんな(前回参照)で俺は38度の熱を出した。
着きっきりで看病する
姉さんに罪悪感を軽く植え付けられる。
一晩休養を取るも精神的な面での休養になってはしなかったけれども。
今朝方まで安静にしていたが微熱は逆に38.5度になり熱が上がってしまった。
風邪にしてはおかしい、と慌てる姉さんは面白かったと思う。
これまた姉さんの車は地獄往きの片道切符だっと、と云って置こう。
ともかく、それをみて診察時間に合わせて診察をしてもらった。
此処に着いてからの姉さんの係りつけ医だと言う。
個人病院であるようでその女医さんの所へといった。
「大丈夫なんだろうな、弟君はッ」
「そうカリカリするな」
姉の焦り様にも耳を貸さずのんびりとした様子で問診を始める女医。
口内炎が出来たことやだるけ、微熱などの自覚症状があることを答える。
視診に次ぎ聴診へと移ると、
「えーとシャツ捲って脱いでくれるかな」
「ごほっ、はい」
「・・・・・・・ふふっ、何するつもりなのかな女医さん」
傍らに座る姉さんはにこやかに、されど意味ありげな笑みでバックを探った。
勘がよいのか経験上なのかそれともどちらもなのかすぐ俺に視線を戻す。
「勘違いするな、心音を聴かんとどうにもならんだろうが」
「・・・だからって、忘れないわよ。あんたが年下好きだってこと」
「ふざけるな。私とて医者だ
診察に集中したいので、出て行ってくれるか?」
医師としての迫力に怖じた姉さんはしぶしぶと待合室に引き返して行った。
277 馬鹿姉第三話 ◆iIldyn3TfQ sage 2008/07/11(金) 02:15:21 ID:dyP+0le4
入学してから数ヶ月の精神的疲労もあったのだろうと、医者に言われた。
まさかバックを探るまで取り乱していた姉が大半の原因ですなんて、口が裂けても言えん。
なぜならば、何者かの気配を感じるから。障子に耳ありっていつの時代さ?
とりあえず、一通りの検査を終えて、姉さんを伴って再度診察室に入っていった。
その女医さんは記録した資料を次々にみて一言唸った。
「これは・・・・・・、麻疹?」
「マシン?」
「・・・麻疹よ。はしかよ。 去年大流行したでしょ」
ふむそうかと頷く俺とまったくとため息をつく姉さんは数秒後、
告げられた(告げた)事実を再認識する。
「なんですとーーーーー!?」
叫ぶ気力はあまり無い俺の代わりに、姉さんが叫んでいた。
「ふむ、そういうことだな。薬と症状についての対処方を書いておく。
それまで絶対安静にしたまえ。今の時期が一番感染しやすい。気をつけたまえ少年」
「ちなみに私見だが、君の姉さんと風呂の攻防をしていたせいで
症状が早まったのだろうと、私は推測する」
「どういうことかなー弟くぅーん?」
「君の弟君は悪くない。私が体調が悪くなるような・・・変わった事が無いか?と問診しただけだ」
やけに間延びした--つまりは逆鱗に触れたことを意味する--声を聞いて、
「ともかく、部屋で絶対安静だ。これだけは譲れない。誰かの粘膜接触なども避けたまえ。
二次感染してしまってその人も大変になるだろうからな」
俺は目前の雰囲気に圧倒されて頭を縦に振るしかなかった。
278 馬鹿姉第三話 ◆iIldyn3TfQ sage 2008/07/11(金) 02:16:21 ID:dyP+0le4
まぁ、粘膜的接触なんて、童○な俺には関係ないんだろうけど。
「えーと、君は大学に在学してるのだったな」
「あ、はい」
「それでは、私からの診断書を出しておこう」
「私が今日、家に送ったら出しておくわ」
「君も気をつけたまえ、家族内で感染してる可能性は否定できない」
「・・・大丈夫よ、私ははしかに昔掛かったもの」
「そういえ、ば、そうだよね」
「ふふふ、お姉さんに任せなさいっ」
「ごほっごほっ、」
せき交じりの俺はとても不安に駆られた。
案の定だった。
「うぅーー、」
「やっぱり、弟君まだ麻疹良くならないの?」
マスクを掛けながら、茶の間にいた。
姉さんの貌はニヤケテイル。
・・・・・・喰われる?いや、まさかな。
279 馬鹿姉第三話 ◆iIldyn3TfQ sage 2008/07/11(金) 02:17:01 ID:dyP+0le4
「いや、抗体が効くまで掛かるって云ってたでしょ、女医さん」
「ならお姉さんの剥いた林檎でも食べようね」
あーんと差し出される爪楊枝にパクつく。今では慣れきってしまった風景。
うさリンゴをもしゃりもしゃりと噛み砕きながら、疑問にたどり着いた。
時計を見れば、既に午前10時。講義は既に始まってるはずだ。
もっとも姉さんには意味がないとも云えるのだが。
「ってそうだよ。何で姉さんいるのさっ、大学は」
「もちろん、自主休講だよー♪」
「単位落としたらどうするのさ」
「お姉さんを甘く見るんじゃありません。えっへん
入学時に取った資格のお陰で定期テストだけ受ければいいのだ」
「姉さん、初耳なんですけどそれ。」
「ふふふ、お姉さんを舐めるんじゃありません。
お姉さんは去年のうちにフルで単位を取ってたのです」
「その割りに、土日帰ってきてたけどね」
「はハHa覇刃巴は、お姉さんの原動力はマイブラザーへのLOVEなのだよっ、弟君」
「発音的に、カタカナとひらがなじゃない文字が使われていたような?」
「気にしない気にしない」
「しかし、なるほど、伊達に神童と云われる訳ではないと」
俺と姉さんが在学しているのは、とあるI県の大学。
実家のF県とは隣接していて月に一回は帰省する。
というか、帰って来いと両親にせかされるからだ。
それと話はずれこむが、この部屋は二人で一緒に暮らすための2LDKだ。
というか、当初1LDKに一年契約したのは姉さんが入学後色々と企てるためだったのか。
と気づくのはこれよりも数ヶ月後のことだったが。
280 馬鹿姉第三話 ◆iIldyn3TfQ sage 2008/07/11(金) 02:18:28 ID:dyP+0le4
親が来ようかと一応は電話越しに応答した後に、
あいつにも掛け様とも思ったが、察知した姉さんが受話器を取り上げて、早口に捲し立てて電源ごと切ってしまった。
ああ、コールして一方的に切ったから怒るだろうな・・・・。
「あ、そうだ。どうせだから、あいつにも連絡」
「駄目っ、・・・駄目なの」
「弟君に姉さんがいるでしょう?」と有無を言わさぬロ調で携帯を奪い取った。
「あっ!? 姉さん、ちょっと」
「それにはしか移したら大変でしょう」
なるほど、それは否定できない。
これからである。
本人曰く『魔の出席停止期間』が始まるのは…。
三話終了。
最終更新:2008年07月13日 20:23