461 姉二人 ◆vZIEseS8Jk sage 2008/10/03(金) 21:22:04 ID:GMjQguwu
1
二人はずっと一緒だった。
でも、二人はまるで違うように育った。
母親の胎内から生まれ落ちた後に泣き声を上げるのも、始めて声を出したその日も、歩き始めた日も…、
二人が何かを一緒と言う事はなかった。
双子である二人、
二卵性な為か、二人が似ている要素は極めて少ない。
容姿や性格、嗜好や仕種、それらから二人が双子だと判断出来る要素は殆どない。
それでもやっぱり二人は双子だ。
二人は同じ夢を見て、同じ未来を望むから。
周りの誰もが気付かない二人だけが分かる共通点、
同じ夢を見続けるという二人だけが分かるただ一つの接点…。
ある日、二人は共に願った。
弟が欲しい、と。
何があっても愛し続ける、
だから、弟が欲しい、と。
それから一年後、二人の希望通りに弟が生まれた。
この時、二人はまるで違う反応を示しながら、歓喜、いや、狂喜を見せた。
弟の誕生、
それが後に、小さな悲劇こそ起こすものの、二人を幸せに導くきっかけになるとは、この時に気付けた人間は誰もいない。
462 姉二人 ◆vZIEseS8Jk sage 2008/10/03(金) 21:25:31 ID:GMjQguwu
2
俺、大野木大樹は今年で高校生になる。
高校になれば義務教育ではなくなる、
それはつまり、大人の階段を一歩昇るという事だ。
それならば、自分も変わっていかなくてはならない。
何時までも子供でいてはいけないのだ。
何時までも肉親に甘えていてはいけないのだ。
両親にも、
そして、
二人の姉にも…。
俺には二人の姉がいる。
双子で産まれてきた二人の姉は、二卵性という事もあり、外見はあまり似ていない。
いや、中身もまるで正反対に思える。
椿姉ぇは活発で凄く綺麗な、いや、凛々しい顔立ちをしている姉だ。
椿姉ぇと一緒にいると、気付けば、ぼ…俺が振り回されてしまうし、黄色い声を上げる女の人を見たのも一度や二度じゃない。
綺麗で格好良くて、それでいて色気を失わない椿姉ぇを、俺は尊敬している。
対する桜姉ちゃんは、おしとやかで落ち着いてて、大和撫子って感じだ。
家事全般が得意で桜姉ちゃんは、何時も笑顔だけど、俺はどうしても頭が上がらない。それは俺だけじゃなくて、両親を含めた多くがそうみたいだ。
可憐さの中に強さを秘めた桜姉ちゃんを、俺は敬愛している。
そんな二人の姉に恵まれた俺は、はっきりと運が良いと言える。
だからこそ、そんな二人から自立するのは苦行に思えた。
それでも俺は、二人から自立しなくてはいけないのだ。
高校生になったのだから、大人になる為にも、二人に何時までも甘えてはいけないのだ。
その為に僕から俺へと自分の呼び名も変えたのだから。
今日から俺は変わるんだ!
二人に甘えない、一人の男として、立派になるんだ!
高校入学に俺はそんな決意を胸に宿した。
それが、自分だけから見れば最悪の結末を、二人の姉から見れば、最高の結末を迎えるとも知らずに。
最終更新:2008年10月05日 16:23