Love such as the chocolate

740 Love such as the chocolate ◆mkGolZQN7Y sage 2009/02/14(土) 23:58:03 ID:EThcrvHY
恋愛において鈍感は罪である――

何処の誰が言ったかは知らないが、それは多くの場合的確とされている。
そしてこの一見平凡な姉弟の間にも適用されてしまったようだ。
「おっ!姉さんもやっとチョコを作って渡すような人ができたんだな。父さんと母さんにはなんとかう
まく言っとくから今日は泊まってきちゃってもいいぜ?」
前日から入念に準備され、完成した手作りチョコレートを見ながら頬を赤く染め、うっとりとしている
姉を見て、弟は言った。
日本国民の年頃の男女なら誰もが浮かれ、騒ぐ行事『バレンタインデー』。
しかし、彼はバレンタインデーに姉がチョコを作っているところを、これまで一度も見たことがなかった。
それが今年はあんなに気合いを入れてチョコを作っている。
つまりはそういうことだろう。
姉さんの恋が実るよう、応援しなければ。
彼はそう判断して姉に声をかけたつもりだった。
ところが姉はただ弟の方を見てニッコリと笑うばかりで、一向に家から出ようとしない。
「あれ?出掛けなくていいの? せっかく美味しそうなチョコ作ってたのに 」
不審に思った彼が姉に尋ねると一瞬姉の動きが止まった。
姉は背を向けて立っているため、弟からはその表情が見えない。
彼女の後ろ姿を見ているとなんだか体の内側にざわめくものを感じた。
彼は無意識のうちにごくりと唾を飲む。
ゆっくりと振り向いた姉の顔は今まで見たこともないほどに美しく、そして“オンナ”の顔をしていた。
そう、彼は分かっていなかった。
姉が何故今年に限ってチョコを作り、そのチョコを嬉しそうに見つめ、家から一歩も出ようとしなかった理由を。
そして常日頃から姉がどんな目で、どんな想いで実の弟に接していたかを――




741 Love such as the chocolate ◆mkGolZQN7Y sage 2009/02/14(土) 23:58:46 ID:EThcrvHY
あっ、そうだ!
弟君、悪いけど念のためにチョコの味見てくれる?
私としては結構上手くできたとは思うんだけどやっぱり不安じゃない?
だからはいっ、よく味わって食べてね。
ふふ、美味しい?そう、よかった……
……あれっ、弟君急に倒れてどうしたの?
えっ?「急に体が痺れて動けない」?
まぁ大変、それなら早くベッドに運ばなきゃ!
大丈夫!今夜は付きっきりでお姉ちゃんがちゃんと世話してあげるからね!

……よいしょっと、弟君もすっかり大きくなっちゃって。
昔はお姉ちゃん、お姉ちゃんって私の後ろにくっついてばかりだったのに。
ん?「俺のことはいいから早く彼氏の所に行ってやれ」?
ふふっ、弟君が心配することなんて何もないのよ?
だって私はもう好きな人の傍にいるんだもの。
えっ?それはどういう意味かって?
クスクス、大丈夫。弟君は何も考えなくていいんだよ……
それよりもなんだか体が熱くなってきたんじゃない?
ほら、ここだってこんなに大きくなってる……
ああ、ここまで来るまで長かったわ……本当に長かった……
お姉ちゃん、嬉し過ぎて今にも気が狂っちゃいそう。
だって今から私は愛する人と初めて結ばれるんだもの。
ううん、今夜だけじゃないわ。
これからもずっとずっと死が二人を分かつまで私たちは一緒。
もしお姉ちゃんと弟君の仲を引き裂こうとする奴がいたら、これまで通り私が始末してあげるから。
今日だって弟君に汚らしいチョコをあげようとする雌猫たちを処分してきたんだよ?
毎年毎年懲りもせずに盛った泥棒猫たちは弟君を襲おうとしてるの。
全く弟君には私って人がいるのに身の程知らずもいいとこだよっ!!!!
殺す!!私から弟君を奪おうとする奴らなんかみんな殺してやるっ!!!
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね……

ああっ、ごめんなさい!!お姉ちゃん恐かったよね?!
お姉ちゃん、弟君のことになるとつい興奮しちゃうの。
でもね、それは弟君のことが大好きだからなんだよ?
弟君のことなら何でもお姉ちゃんがしてあげる。
ううん、させてほしいな。だってお姉ちゃん、弟君のこと本当に愛してるから。
だから何の気兼ねも心配もすることはないんだよ?
弟君はお姉ちゃんとキモチイイコトしてくれるだけでいいの。




742 Love such as the chocolate ◆mkGolZQN7Y sage 2009/02/14(土) 23:59:15 ID:EThcrvHY
えへっ、だからお姉ちゃんにご褒美ちょうだい?
お姉ちゃん、さっきチョコあげたからお返しは弟君のホワイトチョコがいいなぁ。
えへへ、まだホワイトデーには早いけど前払いってことでいいよね?
これからお姉ちゃんと弟君はドロドロに溶け合って混じり合って一つになるの。
まるで手作りのチョコみたいじゃない?
とっても熱くて、ドロドロしてて、どこまでも甘いの。
混じり合い、固まったチョコはもう元の二つには戻れない。
二人は分かちがたく結びついたまま砕けるしかないの。
えヘヘ、えへへへへへへ。
素敵だと思わない?
こんなに固く深く結ばれ合う方法なんて誰も考えつかないよね?
だからお姉ちゃんに食べさせて?
『弟君』っていう最高に甘いチョコレートを。
うふふふふふふふふふふ、あひゃっひゃははははははははははは!!!!
あはははははははははははははははははははははははははははははは!!!!

常に被っていた『優しい姉』の仮面を剥ぎ取り、実の弟を求める狂人の本性を露わにした姉。
その目はぎらぎらと獲物を求めて光り、口からは甘い吐息がこぼれて弟の顔に落ちる。
姉の姿をした怪物から逃れようと弟は必死にもがく。
しかしチョコに含まれていた薬品のせいで体の自由はきかず、体中が燃えさかるように熱い。
姉の柔らかな肢体に絡み取られ、組み敷かれる弟。
冷静な思考を行う余裕は彼に残されておらず、ぼんやりと彼は自分の体にのしかかる姉を見上げる。
まるで別人のように淫らに乱れる姉の姿を見て、彼は不覚にも「
ああ、姉さんってよく見ると結構可愛いじゃん……」
と思ってしまった。
いつしか二人の視線は自然と熱く絡まり合い、姉はニッコリと微笑みながらゆっくりと弟に口付けて囁いた。

『ハッピーバレンタインデー、弟君……』

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最終更新:2009年02月15日 21:18
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