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小ネタ「いらないのなら」(1/2) ◆6AvI.Mne7c sage 2009/03/20(金) 03:35:31 ID:4OXCnRfc
「――金はいくらでも払う。だから、お願いします」
「……解った。○○万円の一括払いで、施術しよう」
日本の首都のとある裏通りのさらに奥、違法な店の並ぶ暗黒街。
その一角に聳え立つ、なんでもこなす闇医者の診療所。
明らかに一般の人間がいることさえ許されない場所に、僕はいた。
「間に合った――ようやくこれで、
姉さんの魔の手から逃れられる……」
僕には姉がいる。僕のことを愛してやまない、いや「病んだ」姉が。
姉は「愛しているから」の一言のみで、僕を陵辱し、蹂躙し尽くす。
僕の童貞はとうに姉に奪われ、今でも毎晩犯され続けている。
また執着心や嫉妬心が強いため、高校生活も私生活も既にボロボロだ。
これ以上放っておくと、最後は監禁され、姉は僕の子を身篭るだろう。
そんなこと、許してはいけない。だから――
「僕が男でなくなれば――性転換すれば、姉さんも僕を犯せない……」
一大決心――苦し紛れの苦肉の策。なんとでも言え。
これ以上姉に、僕の認識する世界を壊されたくない。
さすがに、ペニスさえついていない僕とは、姉も性交できまい。
そうして幻滅されたら、僕はどこか遠い地で、一生孤独に暮らすんだ。
親類縁者は最初からいない。そして既に両親も殺されている。
ここだけの話、今回の手術費用は、両親の死亡保険金なのだ。
父さん母さんゴメン。僕はこんな方法でしか、逃げられそうにないよ。
「――では始めよう。手術用病衣を開いて、寝台に横になりなさい。
よし。それでは、局部麻酔をするから、決して動かないように」
「わかりました。お願いします」
注射針の刺さる痛み。麻酔薬の注入される感覚。
医者の瞳の奥で、何かの感情が鈍く輝く、悪寒。
そういえば、今の声色と雰囲気は、まるで姉を連想させるものだ。
何故――あれ? どうして局部麻酔なのに、全身の感覚が薄れて――
794 小ネタ「いらないのなら」(2/2) ◆6AvI.Mne7c sage 2009/03/20(金) 03:38:24 ID:4OXCnRfc
「――うふふ。1日ぶりだね、愛しの弟クン」
「うあ……あああ……ね、姉さん…………」
最悪の展開。医者に扮していたのは、僕の姉だったのだ。
マズイ。今は麻酔で動けない。まな板の上の鯉状態じゃないか!
「弟クン、これはひどいよ。いくらワタシでも、許せないよ。
要するに、ワタシとのエッチがイヤなんだよね?
だからおちんちんを切って、ワタシも切り捨てるんだよね?
許せない許さない許せない許さない許せない―――そうだっ!」
狂気と正気の間で揺れる姉が、突然何かを閃いたように、手を叩いた。
「それなら、弟クンの男性器を引き抜いて、ワタシの女性器を植えてあげる。
ワタシは逆に弟クンの男性器を植えて、男の子になるの。
そして弟クンのナカを、ワタシが孕ませて、赤ちゃんを産んでもらうの。
えへへ、いいでしょ。いいわね――うん、そうしよう!」
とんでもない妄言。知識もないのに、そんな簡単にはできないだろう!
だというのに、姉は瞳を輝かせて、僕のペニスにメスを向けてくる。
まるでそれが正しいことで、2人の幸福な未来のためといわんばかりに。
嫌だ! そんな致死の未来は嫌だ! それならまだ――
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい姉さん! ごめんなさい!
解ったよ! 姉さんの気持ち、解ったからやめてください!
誓います! 僕は姉さんを、ちゃんと孕ませて差し上げます!
だから性転換はしたくありません! だから、もうやめてぇ!」
麻酔で出せなかった声を振り絞り、ひたすら懇願する。
僕のそんな言葉に、姉はピタリとメスを止める。
僕のむき出しのペニスまで、あと数ミリの距離。
「そっか~。残念だけど、弟クンに孕まされるほうが、いいもんね。
解ったよ。弟クン女の子ケーカクは、ここで終わらせてあげる!」
「あ、ありがとう――ごめんね、逃げ出してごめんね、姉さん」
なんとか許された僕。けれど、これでもう姉からは逃げられないだろう。
「じゃあ、早くおうちに帰ろう? こんな黴臭い建物じゃ、エッチしにくいもん。
おうちに帰ったら、さっそく弟クンのおちんちんで、孕ませてもらうんだ~!」
そう言って、麻酔で動けない僕を軽々と肩に担ぎ上げ、扉に向かう姉。
扉を開けた先には、先ほどの闇医者らしき男性の、血まみれの死骸。
また姉のせいで人が死んだ。また僕のせいで人が死んだ!
いや、おそらく今日で僕も、精神(こころ)が死んでしまうだろう。
「弟クン。ワタシはアナタを愛しています。だから、おうちでずっと愛し合いましょう?
そして、弟クンとワタシで、い~っぱい子供を産んで、家族で暮らしましょう?」
――麻酔による睡魔に抗えず、僕は意識を失う。さようなら、僕の平穏な世界。
― Good-bye, My World ―
最終更新:2009年03月23日 00:58