オタクの妹さん ~after~

94 オタクの妹さん ~after~ (1/3) ◆6AvI.Mne7c sage 2009/03/29(日) 07:34:01 ID:wFcKzH+Z

「なあ、俺はこんな時に、どんな顔をすればいいんだ?」
「ん~、笑えばいいと思うよ?」

 まずは現状を説明しよう。
 俺は妹に連れられて、無理矢理デートに出かけさせられたはずだった。
 だがしかし、現在俺達が居るのは、どうみてもイベント会場。
 そう、俗に「同人誌即売会」と呼ばれる、祭りの真っ只中だった。

「なあ――もう何があっても驚かないつもりだが、デートはどうなった?」
「やだなぁお兄ちゃん。これがデートだよ。ほら、2人で一緒だし。
 それに、一昨日まで同人誌製作やコピー本印刷、手伝ってくれたじゃない?」
 ああ、あの修羅場って、今日の為の布石だったわけね。
 あの兄妹系18禁本の製本と発送、終わってからマジでぶっ倒れたっけな~。

「ってそうじゃないわボケ! なんで俺まで売り子やらにゃいかんのだ!」
「えぇ~、あの時お兄ちゃんも売り子の件、OKしてくれてたじゃんか~」
「い、いつだよ? そんな約束した覚えは」
「一週間前、もう無理だっていう私を後ろから犯した時、手伝うってやk」
「わー! うわー! 悪かった! 思い出したよ! ごめんなさい!!」


 そう、笑えないことに、俺と妹は「近親相姦」の関係にある。
 俺は知らなかったのだが、妹は昔から、俺を1人の男として愛していたらしい。
 そしてつい数ヶ月前、俺は妹に襲われ、無抵抗のままに身体の関係を持たされた。
 事前に兄妹恋愛の意識を刷り込まれていた俺には、なす術がなかったのだ。

「それでタガが外れたように、私の身体を求め出したのは、誰だっけ?」
「俺の思考を読むな。そして誰ががっついてるってんだよ?」
 まあ、今では半分以上諦めて、妹と恋人の真似事を楽しんでいる。
 それにしても、今回のはオイタが過ぎないか。正直恥ずいっての。

「まあまあ。実はさ、今回のサークルカットに、兄と一緒に出るって書いちゃって。
 だから、今日はなんとしても、お兄ちゃんを連れてくるつもりだったの」
「何しとるかオマエは。それでジロジロ見られてるのか」
 さっきから、俺達のブースに買いに来る連中が、何故か俺の顔をジロジロ見てきていた。
 ああつまり、こんな本を書いた少女の兄とやらを、一目見たかったってわけだ。

「なあ、こんな内容の本を売っているからさ、俺達の関係を誤解されてないか?
 本の内容みたいなセックスしてるとか思われてそうで、心配だよ……」
「あ、それなら心配ないよ。多分8割以上が、そういう目で見てるハズだから」
「おい待て。なんでそうなる?」
 思わず突っ込んだ。そういや周りにも、なんか兄妹や姉弟のような連中が多いが……。

「お兄ちゃん。今回のイベントはね、『しすぶら・inせすとらばーず4』っていうの。
 お兄ちゃんなら、このくらいの捩りネタ、なんて読むか解るよね~?」
 ああはいはい、そういうことね~そういうことか~……
「要するに『兄弟姉妹恋愛オンリー』ってことじゃねぇかあああああぁぁぁぁぁぁ!!」


 あまりに騒がしかったために、スタッフに怒られました。猛省。
「はあ、もういいや。全部あきらめたよ俺は――
 あ、まいど~。そちらの本は、一冊500円になります」
「丁度お預かりしま~す。こちらオマケになりま~す。ありがとうございました~」


95 オタクの妹さん ~after~ (2/3) ◆6AvI.Mne7c sage 2009/03/29(日) 07:40:59 ID:wFcKzH+Z

――少しだけ時間を遡り、4日前のこと。

 俺と妹は、自宅で缶詰になり、原稿を仕上げていた。
「うああああっ、午前中に仕上げないと、印刷所が! 製本がああぁぁぁ!」
「ええい! 五月蝿いわアホ妹! なんでこんなギリなんだよこの原稿!?」
 俗に言う修羅場状態。基本妹1人でやってるから、俺がヘルプに入ったが――

「しょうがないじゃないのー! お兄ちゃんにやられて、腰が痛かったのよー!」
「ああもうそれは言うな! ちょっとは反省して――よし、こっち終わったあ!」
「おおっ! お兄ちゃんでかしたっ! あとはコッチのベタ――よしできたっ!」
「それで、今日はあとコレを近所の印刷所に持ってくだけなんだな!?」
「そうだよっ! でも腰が痛くて――お兄ちゃん、1人で行って来てぇ……」
「何その公開セクハラ!? 恥ずくて行けるかぁ! オマエも連れてくわぁ!」
「に゛ゃあああぁぁぁぁ………もっとやさしくしてえぇぇぇ………」

 まあ、そんなこんなで、無事製本までこぎつけることができましたとさ。
 どうやら、今回のイベント目玉の新刊だったそうで、落とせなかったそうだ。
 内容はもちろん兄妹モノ18禁。妹曰く、俺に見せた例の冊子の続編らしい。
「お兄ちゃん。本当に助かったよ。だから、ありがと~のちゅ~!」
 印刷所の待合室でやるなというのに。人がいたらどうする気だオマエは。


「しかし、オマエは今の関係になって、コレを作る必要はないだろうに。
 なんでまだ同人作家を続けているかなぁ? 俺に教えてくれないか?」

 そう、妹が同人作家になったのは、俺とのセックスの代償行為だったはずだ。
 だから、関係を持てた今では、コレを作る必要はまったくない、と言える。

「う~ん、一番の理由は『惰性』とか『習慣』って感じなのかな?
 やっぱり今までやってたことだから、急にやめると寂しいし。
 お兄ちゃんと恋人になれたのは本当に嬉しい。今は満たされているよ。
 でもだからって、これまでやってきたことを投げ出しちゃ、駄目だもん。
 お兄ちゃんだって、何かを中途半端にするのは、嫌いでしょう?」

 普段はふにゃっとした感じの妹から、そんな真面目な言葉をかけられた。
 こんな真面目な妹を見るのは、あの日俺に関係を持ちかけた時以来だ。
 そういや確かに、俺は妹に「半端ならやるな」と日頃から言ってたっけな。

「それに、不純な動機だったけど、友達や同志だって、少しは増えたんだよ。
 映像作品の『向ダブルサイド』さんトコみたいな、仲のいい創作友達がいる。
 『The-Fortune-Diary』さんトコみたいに、応援してくれるブロガーさんがいる。
 私は、そんな些細な人との繋がりだって、大事にしていきたいんだよ」

 そうだよな。妹は誰にも相談できなかったんだよなぁ。
 兄妹での恋愛なんて、誰もが否定するだろうから、1人で抱え、悩んだはずだ。
 今みたいに心から笑えてるのだって、俺に告白してくれてからだもんな。

「というわけでお兄ちゃん。もうちょっと待っててね?
 私の同人活動が一通り終わったら、お兄ちゃんに独占されてあ・げ・る!」

 ああ。やっぱもう少し同人活動を続けやがれ、このバカ妹。


96 オタクの妹さん ~after~ (3/3) ◆6AvI.Mne7c sage 2009/03/29(日) 07:45:34 ID:wFcKzH+Z

――閑話休題。現在の話に戻る。

 とりあえず、本日用意した部数をあらかた売り払い、ひと段落した頃。
 妹は余裕ができたらしく、数人分のスケブに絵を描いていたりする。
 確かに、妹はこの非日常の場で、生き生きとしている。
 俺と恋人として向き合う時以外にも、こんな顔をしているのか。
 そう思うと、なんか悔しいな。早く俺に独占させやがれ。

 そんな忙しそうな妹の横で、俺自身もそこそこ忙しかった。
 妹が応対できない間、他サークルの連中を始め、いろんな人間に挨拶していた。
 その大半が「こんな可愛い妹、大事にしてあげなさいよ」との冷やかしだった。
 まったく。言われなくても、ちゃんと解ってるっての。

「よし、ひと段落ついたー! おつかれお兄ちゃん」
「おつかれさん。さあて、あともう少しだから、頑張ろうか」
「うん。ところでお兄ちゃん。私に何か言うことない?」
 な、なんだ急に。まさか、さっき考えてたこと、少し読まれてたのか?

「ふーん、だんまりなのかー。ひどいな~。
 私はお兄ちゃんのこと、と~っても好きなのに」
 ああもう、改めて言うな。かなり恥ずいし、顔が赤くなる。
 ええい、もうずっとだんまりを決め込んで―――

「私は、お兄ちゃんのことを、世界一愛しているんだよ」
「真面目なところも、たまに見せる間抜けさも、全部好き」
「私はこれだけ好きなのに、お兄ちゃんは、違うの?」

 くそぅ、この恥ずかしい娘め!
「ああもう! 解ってるよ! オマエが俺を愛しているのは!
 俺だってオマエを愛してるよ! さあどうだ、文句あっか!?」

 ああ、なに天下のイベント会場で叫んでるんだ俺。おや、妹の様子が……?
「き、きききき……キター! ツンデレお兄ちゃんのデレがキター!!」
「なんじゃそらあああああ!! 台無しだよもう! 俺の告白かえせ!?」
「やだもーんっ! お兄ちゃん好き好き大好き超愛してるうぅぅ!!
 キャッホォウ!! ……ってああん!? 興奮しすぎて鼻血が出たぁ!」
「ああもう何やってんだよこのオタク馬鹿いもうとおおぉぉ!!
 すみませんそこの人! ティッシュはありませんかー!?」


 またもや騒ぎすぎて、やっぱりスタッフに怒られました。猛省その2。
 次やったらここから追い出されるそうだ。その方が良い気がしてきたよ。
「まだまだぁ! 私ここでは結構有名だし、もう少し頑張るもん!
 さあ、兄妹愛を全国に発信だ! まずはあの本の第3弾を書くぞぉ!!」
 だから叫ぶな。向こうから怖いスタッフさんが、ずっとこっちを睨んでるぞ。

 まったく、厄介な妹に惚れてしまったようだ。
 まあいいか。このバカに、とことん付き合ってやる。
「俺が決めた。今決めた。離してやらねえぞ、このバカ妹!」
「望むところだ! 死んだって愛してるからね、お兄ちゃん!」

――ちなみに例の本は、コピー本もあわせて無事完売できた。店舗委託や再販はないそうだ。


                                      ― Soldout & Thank you ―

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最終更新:2009年03月29日 21:41
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