はっぴーはっぴーばーすでい!

169 はっぴーはっぴーばーすでい! (1/3) ◆6AvI.Mne7c sage New! 2009/04/05(日) 11:20:53 ID:7+RnvYum

 ふと壁の時計を見上げると、針が3つとも頂点に達していた。
 どうも夜更かしが過ぎたようだ。もう日付がかわったじゃないか。
「さあて、明日は面倒だが、ちょっと外出しなくちゃならない。
 というわけで我が妹よ、俺の膝上から降りてくれないか?」

 そう言って、俺の膝で眠っていた妹の目を覚まさせる。
 かわいい寝顔を見ていると、ついそのままにしてやりたくなるが、そうはいかない。
 明日俺は大学の用事で、銀行に出向かなくちゃならない。非常に面倒だ。
 たけど、授業料支払いに関する手続きがあるから、行かないと大学に通えなくなる。
 そういうわけで、少しでも寝ておかないといけないのだが……

「起きろ、起きろ、お~き~ろ~よ~。
 俺を眠らせないつもりか~、やらしいな~俺の妹は~」
 やらしいのは俺だった。誰もツッコまないから自分でツッコんだ。
 こんなセクハラ発言する兄を慕ってくれるこの妹には、頭が上がらないね。

「んゅ~~……はれ? 兄ちゃん、いま何時?」
 そうこうしているうちに、妹が目を覚ました。
「ああこらじっとしてなさい。ヨダレが服につくから。吹いてやるから」
 甲斐甲斐しく妹の口元をぬぐってやる俺。どこのパパさんだ?
「……で、兄ちゃん。今は何時なの?」
「今はもう午前0時だ。俺もそろそろ寝たい。
 だから、お前もそろそろ部屋に帰って寝なさい」

 そう言うと、妹の目つきが何か、一瞬だけ変わったような気がした。
 …………まあ、気のせいだろう。
「そっか~。兄ちゃん、おんぶしてもらっていい?」
「あん? 別にいいけど、どうしたんだ?」
「別に。ちょっと足が痺れただけだよ。折り曲げて寝てたからさ」

 そう言って、俺の背中に回りこみ、首筋にもたれかかる妹。
 いつも通りの重みを背負い、立ち上がってバランスを取る。
「兄ちゃん、もうちょっとお尻のほうに手まわして。
 じゃないと、兄ちゃんの首に力入れちゃいそうだから」
「それは怖いなぁ。首が折れちまうかも知れんし」
「なにおぅ!? じゃあいますぐ首を折ってやるぅ!」
「ぎゃああぁぁぁ! お前は俺が嫌いなのかよぉ!?」

 真夜中に近所迷惑な声をあげる俺達兄妹。
 明日のご近所井戸端会議のお題は、俺達がいただいた!
 嘘ですごめんなさい。静かにしますから許してください。


170 はっぴーはっぴーばーすでい! (2/3) ◆6AvI.Mne7c sage New! 2009/04/05(日) 11:21:35 ID:7+RnvYum

「ねえ兄ちゃん、あたしが兄ちゃんのこと、嫌いっていったら、どうする?」
 背負っていた妹が、突然そんなことを聞いてきた。
「ええ? お前は俺のことが嫌いだったんか? 初耳だぞそれ」
 わざと驚いてやる。嘘なのは解ってるんだぜ? このブラコンちゃん。

「いやいや、兄ちゃんのこと、本当に嫌いなんかじゃないよ?
 でもあたしに嫌われたら、兄ちゃんを好きな女の人なんて、いなくなるでしょ?」
「失敬な! 俺にだって、俺のことを好きだといってくれる女の人くらい……」
「いないんだね。強がんなくていいのに。兄ちゃんカーワイー♪」

 なあ、俺が何をしたよ何を。まあ別にいいけど。
 実際、俺達がシスコンでブラコンなのは周知の事実なのだし。
 おかげで、2人とも今まで、恋人なんていたことねぇよ。
「まあね、兄ちゃんが結婚できなかったら、あたしが嫁さんになったげる。
 あたしなら、兄ちゃんのコトなんでも知ってるから、問題ないでしょ?」 
「問題はそこじゃねぇだろう。まあいいけどさ。
 そら、お前の部屋に着いたぞ。ベッドの上までは運んでやるよ」

 妹の部屋のドアを片手で開けて、中に入る。
 相変わらず、女の子の部屋に男モノが混在しているカオス空間。
 男モノの正体は、いうまでもなく俺の元私物たちだ。
 なんでか、妹は俺のものばっかり欲しがる。なにが嬉しいのか……。

「兄ちゃん、ありがと。ベッドに倒れこむから、力抜いてよ」
「あいあい了解~。よっこらせ……」
 妹を背中から降ろそうとして、尻を支えていた手を離す。
 しかし妹は、俺の首元から回した手を、片方だけ離さない。
 結果俺達は、2人で一緒にベッドに倒れこむことになり――
 俺はいつの間にか、妹を押し倒す形で、キスしていた。


「あ~その~あれだ~~……。悪い、キスしちまった。
 ごめんな。俺もだけど、お前もファーストキス、だったよな?」
 ちょっとばかり申し訳なくて、妹に謝ってしまう俺。
 正直コイツの唇が気持ちよかったのは、内緒だかんな?

「えへへぇ♪ 別にいいよん♪ 兄ちゃんの反応がカワイイから許す。
 それにね、コレはあたしからのプレゼントの1つだよ?」
「プレゼント? そっか、そういや今日は誕生日か……」
 すっかり忘れていた。日付が変わって今日は、俺の誕生日だった。
 イヤ待て、それと今のキスと、なんの関係があるんだよ?

「なぁに? あたしのキスはイヤだったって言いたいの?
 じゃあいいよ、プレゼントどころか、今日からご飯つくってあげな」
「いいえ、イヤではありませんでしたぁ! だからゴメン!
 お願いですから、料理はやめないでください、マイラバーシスター!」

 我が家――っても俺と妹の2人だけだが――の食卓は、妹の料理で成り立っている。
「えへへぇ♪ 別にいいよん♪ じゃあまた目が覚めたらキスしたげる♪
 その時までオヤスミナサイ、兄ちゃん♪」
「ああ、悪かった。じゃあ朝は頼むな。オヤスミ~」

 何とかなったらしい。今日の夕方には、なにか買ってきてやろう。
 俺の誕生日だけど、妹と一緒に祝うなら、それだけで俺にはプレゼントになる。
 そんなことを考えながら、不穏なセリフを聞き逃したフリをして、俺は部屋に戻った。



171 はっぴーはっぴーばーすでい! (3/3) ◆6AvI.Mne7c sage New! 2009/04/05(日) 11:24:15 ID:7+RnvYum

               -※-※-※-※-※-※-※-

 兄ちゃんが自分の部屋に帰ってから、あたしは部屋のドアにカギをかけた。
 本当はかけないほうがいいんだけど、ちょっとやりたいことがあったからだ。
「えへへぇ♪ 兄ちゃんが『マイラバー』って言ってくれた~♪
 兄ちゃんカワイイよ兄ちゃん♪ もう食べてあげちゃいた~い♪」

 我ながら不気味な歌を口ずさむ。兄ちゃんに聞かれたら、ヒかれるかなぁ?
 いやそれどころか嫌われるかも。そんなのイヤだ。絶対イヤだ。
 あたしは兄ちゃんが大好き。抱きつきたいくらい大好き。
 ううん、キスしたいくらい好き。エッチしたいくらい大好き。
 いいえ、結婚して、子供つくって、死ぬまで一緒に居たいくらい、愛してる!

 気づいたら、どのへんからか声に出していたらしい。
 兄ちゃんに聞こえないように、壁は防音のものになっているけど、大丈夫かな?

 兄ちゃんがあたしを、いじめっ子から助けてくれた時、あたしは兄ちゃんに恋をした。
 あの時から、あたしの恋心は、全部兄ちゃんに向かうようになってしまった。
 兄ちゃんは結婚できないと思っているけど、大丈夫。あたしたちは義理の兄妹だから。
 あたしが0才で、兄ちゃんが3才の時に、親の再婚で兄妹になったあたしたち。
 兄ちゃんはもう忘れてるみたい。でもあたしは母さんから聞かされて知っている。
 今は2人とも、遠くに行ってしまったけれど、これはまぎれもない事実だ。

 実はあたしも、明日が誕生日だ。兄ちゃんの誕生日の次の日という、すごい偶然だ。
 そしてあたしは、明日で16歳になる。そう、法的に結婚の可能な年齢だ。
 だから、さっきみたいな暴挙に踏み切った。あのキスはわざとだ。
 ずっと昔から、兄ちゃんに甘え倒して、あたしの成長やオンナを意識させてきた。
 ずっと昔から、兄ちゃんに纏わりつき、邪魔な泥棒猫共を追い払ってやってきた。
 すべてはこの2日間のために。ずっとそのために生きてきたと言ってもいい。

「今日の夜は、兄ちゃんに誕生日という名目で、豪華なご馳走を食べてもらうんだ♪
 でも残念、その料理の中には、軽い睡眠薬の入った料理が混ざっていたりするの♪
 食べ終わって眠った哀れな兄ちゃんは、日付が変わるまでソファで眠らされるの♪
 そして、0時と同時に、あたしが兄ちゃんと繋がって、ようやく目を覚ますのよ♪」

 いけない。妄想――犯行計画を垂れ流してしまったみたい。
 題して「兄ちゃんとあたしの初エッチ計画」が、明るみにでちゃいけない。
 全ては兄ちゃんとずっと2人で生きていくための布石。
 明日繋がり終えたら、兄ちゃんに戸籍抄本と婚姻届を渡すんだ。
 そしたら、あたしに好意を寄せている兄ちゃんも、たぶんイチコロになる。

 それまでは耐えなきゃ。だから今晩は、兄ちゃんの写真をオカズに、我慢しよう。
 なぁに、明日は絶対成功させてやるから♪ だから今は、さっさと眠ろう。

――兄ちゃん、あたしの人生初のサプライズプレゼント、楽しみにしててね♪


                                 ― Congratulations on our

birthday. ―

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最終更新:2009年04月05日 21:22
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