りふらわりんぐ

244 りふらわりんぐ (1/3) ◆6AvI.Mne7c sage New! 2009/04/11(土) 15:56:42 ID:49Z/oaHb

――……ニュースです。昨夜○○市で起きた、交通事故の続報を……

 消したはずのラジオ放送のニュースで目が覚める。
 ラジオを消そうと手を伸ば――せずに、自分の身体が動かないことに気づいた。
「ははは……、あははは……、なんだよこの状況は………」
 あの頃の悪夢を呼び覚ますこの現状。一体どうしたというんだ?

 とりあえず、今の状況を再確認する。
 まず、ここは自分がいま借りている仮住まい――安アパートの自室のようだ。
 次に身体は――左足と右足がそれぞれ、反対方向にある部屋の柱に繋がれている。
 そして、両腕は手首を交差するように縛られ、頭の上に回されて柱に繋がれている。
 つまり、俺の身体は「人」という漢字のような形で、完全に固定されているのだ。

 間違いない。この独特なクセのある拘束は、あの頃にやられていたものと同じだ。 
 だから、俺を此処に固定したのは、間違いなく――

「おはよう、よく眠れたかしら、秋桜(しゅうさく)君。
 いいえ、ここは昔みたいに、『しゅーくん』って呼んであげる。
 ふふ、こんな呼び方をするのは、もう10年ぶりになるのかしら?」

 予想通りの声。あの頃とほとんど変わらない、美しい女性。
 俺の実の姉、ちえり姉さん――俺の子供たちを除けば、現在唯一の血縁者。
 俺が尊敬し、同時に畏怖する彼女が、全裸の状態で俺のすぐ横に現れた。

「ちえり姉さん、これはいったい、何の冗談なんだ?
 俺にはもう、こんなことをされる筋合いも、理由もないだろう?」
 俺の言葉に、姉さんは眉1つ微動だにせず、ただ微笑んでいる。
 同じだ。俺が10年間苦しめられた、あの頃の表情と同じだ。
「聞いているのか姉さん? 俺はもう、姉さんとはこんなことをするつもりはない!
 姉さんだって、あの時ちゃんと納得して、承諾してくれたじゃないか!?」

 俺のその言葉に反応してか、ようやく口を開いて言葉を放つ姉さん。
「そうね。確かに私は、貴方の結婚を認めてあげた。あの女が身篭っていたから。
 そして、あの頃の関係をもう続けないと、貴方に誓ってあげたのよね?」

――……今朝6時過ぎに、搬送先の病院で意識不明の重体だった女性が亡くn

 話の途中で、先程からやかましかったラジオの電源を切る姉さん。
 そして、再び布団の上に拘束された俺に振り向き、話を続ける。
「ふふ、あの時は本当に、私としたことが、どうかしていたみたい。
 貴方をこうしているだけで、私はもう全身がオカしくなっているのに……!
 貴方に触れるだけで、本当に簡単に、私の身体は絶頂に達するというのに!?」

 懐かしい狂気の声音。俺の青春時代を食いつぶした、姉さんの暗黒面。
 普段は人当たりも良く、勉強も運動もソツなくこなす、誰もが羨む自慢の姉。
 しかし一度スイッチが入ると、俺に過剰な愛を向ける、狂気のオンナになるのだ。


245 りふらわりんぐ (2/3) ◆6AvI.Mne7c sage New! 2009/04/11(土) 15:57:28 ID:49Z/oaHb

 始まりは9才の時、俺が女友達を家に連れてきた日の夜だった。
 ――あんなメスブタにはわたさない。しゅーくんはワタシのモノなのよ!――
 そう囁かれながら、俺は全身を拘束されて、何も知らないままに犯された。
 それ以降、俺が他の女の子に触れるたび、会話するたび、同様の行為を繰り返された。
 両親にも気づかれないように巧みに、そして邪魔な人間を容易くかわしながら。

 けれどそんな悪夢も、俺が18歳の時に終焉を迎えることになった。
 姉から隠れて告白してきたクラスメイトの女子――今の妻を孕ませてしまったのだ。
 まあ正確には、孕まさせられた、というべきだと思う。排卵誘発剤と睡眠薬は反則だ。

 ……とにかく、それを機会に「責任をとる」の一点張りで、姉さんを必死で説得した。
 俺の両親にも、相手の両親にも頭を下げ、数ヶ月かけて無理矢理入籍に漕ぎ着けた。
 そうして姉さん以外の周囲の人間を全員味方にして、最終的には姉さんを納得させた。

 一応結婚を認めてくれた姉さんは、産まれてきた俺の息子を可愛がってくれた。
 俺達も結婚したはいいが、共働きする必要があったので、本当に感謝していた。
 そして6年経って娘が産まれた頃には、姉さんもすっかり落ち着いてくれた――


「――そう思っていたのに、どうしてこのザマなんだよ!
 なあ姉さん。なんで今になって、こんなことをするんだ……!?」
 姉さんは、微笑を浮かべたまま、再びなにも答えない。

「あの時の姉さんに酷いことをしたのは、心の底から謝るよ。
 なんだかんだで、俺も姉さんのことは、好きだったんだから。
 けど、俺にはもう、姉さん以外に愛する妻と子供ができたんだ。
 俺は残りの一生をかけて、あいつらを守りたいんだ。だから」
「ふふふ、わかってるわよ。貴方はいつもそうだったわね。
 『何があっても家族を守る』のが、貴方のモットーだったものね。
 酷いことをした私のことも、『姉だから』って黙っててくれたものね」

 また反応を返してくれた。これならまだ説得の余地は――
「だから、黙っててくれたぶん、私も周りの人には、秘密にしてあげる。
 私と貴方が、また昔みたいな関係になっても、ばらさなきゃ大丈夫よ」
 ありそうになかった。姉さんはホンキだ。

「姉さん、俺の話を聞いてなかったのかよ?
 今の俺には、妻と、子供達がいるんだ。だから――」
「だから、貴方と私が、他の連中の知らないところに行けばいいのよ。
 今までの人間関係を捨てて、2人でどこかに行きましょう?」

 信じられないことをいう姉さん。
「待て! 家族を捨てろっていうのか! そんな――」 
「家族ね……。うふふ、貴方の息子と娘のことなら、心配はいらないわ。
 桜華(おうか)くんとさくらちゃんは、2人だけでちゃんと生きていけるわ。
 そのために、私が直々に生活も性活も、きっちり仕込んでおいたからね。
 生活費と学費さえあれば、問題なくあの2人は幸せになれるわ」


246 りふらわりんぐ (3/3) ◆6AvI.Mne7c sage New! 2009/04/11(土) 15:58:08 ID:49Z/oaHb

 とんでもないことを言い出す姉さん。
 ただの幼稚園児と小学生を、たった2人で暮らさせる?
 そんなこと、無理に決まっている! 早く止めなければ――

「ねえ聞いてよ、しゅーくん。さくらちゃんは見所があるわ。
 あの娘ってば、たった4才で私みたいなことを言ってきたのよ?
 『あたい、おにーたんとけっこんしたい』って、すごいと思わない?
 あの目とあの気迫、あの齢じゃあ私にも出せなかったのにねぇ」


 既視感――脳内再生される記憶。
 あの時――俺を逆レイプする時の、姉さんの言葉がよみがえる。
 いつも俺を拘束して、半裸でのしかかってきた姉さんの言葉が。

「『私は弟と結婚したい。だから今ここで、しゅーくんをオカす』だっけ?」
 そうだ。あの時俺はそう言われて……って、なんで考えてることがバレた?
「わかるよ。私は昔っから、ず~っと、しゅーくんしか見てないもの。
 他の雑多なオトコになんざ、心も身体も、許してたまるもんですか。
 おかげで独身のまま三十路手前になったけど、これでよかったのね。うふふ」

 改めてこの人が怖くなった。俺の思考が、みんな筒抜けなのか?
 だったら、俺がもう既に、10年ぶりの姉さんの匂いに負けそうなのも――
「もちろん理解してるわ。だからさっさと私を抱きなさいな。
 あの頃みたいには、私からはこれ以上、何もしてあげないわよ?」
 そう言って、逃げられないように固定していた拘束を、解除していく姉さん。
 まるで、俺が一切抵抗しないと、妄信し――確信しているかのように。

「ねえ、しゅーくん。私の身体を見てくれないかな?」
 久しぶりの、姉さんからの誘惑。
 目にするな。今姉さんのいいなりになると、あとは流されるだけだ。
「綺麗でしょ? 私もうすぐ三十路だけど、職場ではモテるほうなのよ?」
 そんなこと、9年近く囚われていた俺には、わかっているんだよ!
 だからこそ俺はいま、姉さんの身体に魅入っているんだよ!


「ねえしゅーくん。私はずっとずっと、辛かったんだよ?
 貴方が私に、同窓生やお見合い相手を紹介してくれたときも。
 私が泣きたい時に、貴方が他の連中に構っているときも。
 でもこれからは、あんな寂しい思いをしなくて、いいんだよね?」

 涙を流しながら、俺の身体の上で、じっと待っている姉さん。
 俺はいつしか、姉さんに向けて、開放された両腕を伸ばしていた。
「さあおいで、しゅーくん。貴方が昔から大好きだった私は、ここにいるわ。
 つかまえて、私を2度と離さないでください。お願いします、しゅーくん……」


 さようなら、桃枝(ももえ)。なぜかお前はもう、この世にいないと思えたんだ。
 それから――本当にすまないな、桜華。本当にごめんな、さくら。
 俺はもうお前達には、父親として何もしてやれそうにない。
 だから桜華……、さくらのことをよろしく頼む。

――俺のかわいい子供達が、どうかいつまでも、桜の花のように美しく咲いていてくれますように。


                                       ~ Happiness of the re-flowering ~

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最終更新:2009年04月13日 21:23
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