530 そーぜつな、いろ…けぇ? (1/3) ◆6AvI.Mne7c sage 2009/05/03(日) 06:34:31 ID:l/N6b/cZ
突然ですが、初めまして。私は今、とある悩みを抱えています。
私の名前は才媛(さえ)。おそらく皆さんよりも、若輩者かと思います。
それよりも、私の悩みを、聞いていただけませんか?
私は今、10歳ほど年の離れた兄さんに、恋をしているのです。
私の学友に相談したところ、「それはブラコンだよ?」と一蹴されました。
もちろんそれは違います。そんな子供じみた感情ではありません。
私だって「ただのブラコン」と「近親愛」の違いくらい、理解しています!
……失礼、つい興奮してしまいました。謝罪します。
とにかく、私はオトナで魅力的な兄さんに、この身体を委ねたいのです。
そして、できれば私が年老いて亡くなるまで、共に生きてゆきたいのです。
そのような旨を主張したところ、なんと理解してくださる方が現れました。
彼女の名前はさくらさん。私の1つ下の後輩にあたる女性です。
彼女だけは、誰もが一笑するような私の言葉を、真面目に受け止めてくださいました。
そして私は今、彼女から譲っていただいた、さまざまな文献を読み漁っています。
彼女曰く、殿方はなんだかんだで、色仕掛けには多少揺らぐそうなのです。
そして揺らいだところで、告白し身を委ね、将来を誓い合えばいいのだそうです。
その為に必要な知識の書かれた書籍を、彼女は快く譲ってくださいました。
なぜ彼女がこのようなものを持っていたのかを疑問に思い、尋ねたことがありました。
すると、彼女には6歳も年上の恋人がいる、というではありませんか。
そしてその恋人さんがこっそり隠し持っていた本を、勝手に持ち出してきたそうです。
羨ましい限りです。それを語る彼女の笑顔は、普段よりも美しいものでしたし。
けれどその恋人さん、今頃隠していた本を処分されて、泣いているのではないですか?
さて、話が逸れそうなので、舞台を現在に戻そうかと思います。
いま私が読んでいるのは、ある兄妹が恋人の関係に至るまでを書いた、所謂漫画です。
少々本の厚みとしては、薄いきらいがありますが、その内容は充分に魅力的です。
その漫画の中では、妹が長年好意を寄せていた兄に、色仕掛けをして行為を迫っています。
そして兄は、そんな妹に抵抗できず、とうとうお互いの身体と想いをぶつけあって――
おっと、すみません。つい興奮して我を忘れかけていました。
それだけこの話が素晴らしくて、これからの私にとって参考になるものだということですね。
しかし、このような本を、本当に男性である彼女の恋人さんが、持っていたのでしょうか?
そう思って彼女に尋ねたところ、親戚のおねーさんから譲ってもらったものと判明しました。
……つくづく、彼女の人間関係に疑問が沸いてきた、不可解な一件でした。
「さて、それでは座学の時間は、ここまでにしておきましょうか……」
私は兄さんにバレないように、借りてきた文献をすべて、天井裏に隠しました。
おそらく家族の誰にもバレていないと思うのですが、最近少し心配です。
特に兄さんは、よく自分の部屋のついでに、私の部屋を掃除してくださいますし。
まあでも、もし見つけられたなら、それを足がかりに攻めていけばいいだけです。
そんな話が、あの資料の中にも、図解つきで解説されていましたし。
そんなことよりも、私自身がもっと、気合を入れないといけません。
年の差のせいか、私はいつも兄さんに、子供扱いされていますから。
さあ、それでは明日から、さっそく色仕掛けを始めましょう。
531 そーぜつな、いろ…けぇ? (2/3) ◆6AvI.Mne7c sage 2009/05/03(日) 06:38:11 ID:l/N6b/cZ
まずは、朝起こす時に、薄着で色仕掛けをしてみようと思います。
兄さんはちょっとだけ朝が弱いので、彼を起こすのは、私の日課なのです。
いつもなら普通に横から声をかけて起こすのですが、今日は違います。
はしたないですが、多少胸元を開けて、兄さんの身体に馬乗りになります。
そして前傾姿勢で、甘えるような幼い声で、兄さんの耳元に唇を近づけ――
「兄さん――にいにい、朝ですよ? 起きないと、イタズラしちゃいますよ?」
他にももっと科白があるそうなのですが、恥ずかしいのでこう囁きました。
すると意外にも兄さんは、いつもより快調そうに目を開きました。
「ああ、おはよう才媛。今日はえらく密着しているんだね。目が覚めたよ。
さあ、才媛も着替えなさい。それから朝ご飯を一緒に食べようか?」
うぅん……、あまり効果がなかったようです。にいにい呼びも気づかれませんでした。
次は帰ってきた兄さんに、新婚夫婦のような問答を仕掛けてみます。
兄さんは最近、遅くまで働いて帰ってきます。理由はわかりません。
私達の両親は今夜家にいないので、私が兄さんをお迎えしてあげます。
ただし、ただのお迎えではありません。制服にエプロン姿でお出迎えです。
どうも『裸エプロン』なるものもあるそうですが、まだ肌寒いので、それは控えます。
そうこうしているうちに、兄さんが玄関を開けて、帰ってきました。
「ただいま……、あれ? 才媛はまだ起きてたのかい?」
「おかえりなさい、兄さん。ご飯にしますか? お風呂にしますか? それとも――」
「ああ、それじゃあ先にご飯を食べようか。用意は才媛がしてくれたのかい?
今日はありがとう。多分待っててくれたんだよね? じゃあ一緒に食べようか」
そう言って、兄さんは私の頭を撫でて、先に自室に向かってしまいました。
むうぅ……、制服エプロンも、新婚ごっこトークも、軽くいなされてしまいました。
気を取り直して、晩ご飯をあ~んってしてあげることにします。
いつも兄さんと一緒の食事ですが、色仕掛けのために、私はいつもより緊張しています。
この心音と心情が、隣の兄さんにそのまま伝われば、話は早いのですけれどね……。
「に、兄さん……その、今日は私が、兄さんに食べさせて差し上げますねっ」
上目遣い、間接キス、その他いろいろ含まれている、私からの攻撃。
「えっと、ありがとう才媛。……うん、やっぱり才媛と一緒に食べるご飯は美味しいね」
そんな言葉と共に、私も兄さんから「あ~ん」をしてもらえました。
あれれ? 嬉しかったのですが、兄さんはあまり照れてくれてはいないようです。
本日最後の攻撃です。お風呂あがりに、下着なしのワンピースパシャマで密着してあげます。
先に入浴してそろそろ眠そうな兄さんに、湯上り状態の私が突撃して、深く抱きつきます。
「あ、才媛ももう寝る――って、どうしたのさ才媛? なんだか今日は――」
少しびっくりした兄さんの言葉を最後まで聞かず、私は全身を兄さんに擦りつけます。
あまり発育の良くない私ですが、女の子に擦りつかれて、興奮しない殿方は――
「どうしたのさ才媛。もしかして寒いのかい? だったら早く布団に入って寝ないと――」
あ、相手にしてくださらないのですか……? もう、こうなったら最後の手段を――
「えいっ……!? あ、あのどうですか兄さん……? こ、こんな私はどうですか……?」
そう、最後まで使いたくなかった必殺技、『スカートを捲ってぱんつみせる』攻撃です。
しかも『ぱんつはいてない』攻撃との併合――つまり、私のオンナを、着衣のまま見せています。
これで堕ちてくださらないと、私がただの痴女であるか、兄さんが男性不全かのどちらかに――
「こら、だめじゃないか、才媛。そんなはしたない格好してたら、風邪ひいちゃうよ?
それに、ぱんつを穿き忘れちゃだめだ――って、急にどうしたんだい、才媛!?」
兄さんに問われて、ようやく私は気づきました。
どうやら、私はいつの間にか、涙を流していたようです。
532 そーぜつな、いろ…けぇ? (3/3) ◆6AvI.Mne7c sage 2009/05/03(日) 06:45:48 ID:l/N6b/cZ
本当は今日、この他にもいろいろ仕掛けていたのですが、あまり効果がありませんでした。
どれも軽くあしらわれているようで、なんだか私は悲しくなって、泣いてしまったのです。
そんな私を、優しくてオトナな兄さんは、ちゃんと優しく慰めてくださいました。
「どうしたんだい、才媛? もしかして、何か悩み事でもあるのかい?」
やはり気づかれるのですね……。兄さんは、私をちゃんと見てくださっているのですね。
「はい兄さん。私には、やりたいことかあるんです。けれど、なかなかうまくいきません……」
半ば自棄になりかけた私に、兄さんは優しく私の頭を撫でながら、言ってくださいました。
「僕は才媛が何を悩んでいるのかは知らないけれど、諦めなくてもいいと思うよ。
才媛は頭のいい子だし、優しいし、なにより良い子だ。それは僕が保障するよ。
だから、最後まで頑張れば、才媛の願いは絶対に、叶うと思う。だから――」
「ありがとうございます、兄さん。……ふふ♪ やはり私は、兄さんが大好きです。
……わかりました。もっと頑張りますから、次はちゃんと協力してくださいね?」
「? ああ、いいよ。次になにかするなら、僕も協力するからね、才媛」
「ありがとうございます、兄さん。その言葉が聞けて、私は嬉しいです。
それでは、もう夜も遅いですし、今日はこれにて失礼しますね」
なんだかんだで、収穫もあったから、今日は1人で眠ることにしましょう。
また明日から、今まで以上に頑張って、ぜったいに兄さんを篭絡させます!
「ああ、また明日の朝に会おうね。オヤスミ、才媛」
「はい、それではオヤスミナサイ、おにいちゃん♪」
-※-※-※-※-※-※-※-
才媛が自分の部屋に帰ってから、僕はゆっくりと、ベッドの上に腰を下ろした。
「う~ん、なんだかよくわからないけど、今日の才媛はどこか変だったな……」
なんというか、いつもよりやたらに、僕にからんできたのだ。
そう、例えるならば、愛撫されるのをせがむ、恋する少女のような……。
「まさか、僕にイケナイ恋心を抱いていて、僕を本気にするために、色仕掛けを?
――いやいや、そんなことあるわけないよね。僕の考えすぎだろうな」
だって、あの娘はまだ、小学2年生の子供なのだから。
昔から才媛は名前の通りに頭が良く、特に文字を読んで理解する能力に長けていた。
それ自体は喜ばしいことだけど、いつの間にか、妙に丁寧語を話す娘になってしまった。
おそらく面白がった両親が、やたら難しめの本ばかりを読ませすぎたせいだと思うけど。
けれど、一見しっかりしているように見える才媛も、やはり年頃の女の子だ。
今日みたいに、やたら甘えついてきたり、泣いたりすることだってある。
よくよく考えたら、最近僕もバイトに明け暮れて、才媛に構っていない気がする。
だから、あの娘も寂しくて、あれほど暴走気味に擦り寄ってきたのかもしれない。
「よし、明日くらいはバイトを休ませてもらって、才媛と遊んであげよう。
昼休みに高校から電話をかけて、交替の手続きをとらないといけないかな……」
もともとは、来月誕生日の才媛のために、小遣いを溜めようと始めたバイトだ。
プレゼントは豪勢にしてあげたいけど、そのために今あの娘を泣かしては、本末転倒だ。
だから明日はしっかり一緒にいて、めいっぱい甘やかしてあげよう。
ちょっと構いすぎかもしれないけど、大事な可愛い妹だし、仕方ないよね?
「ああ、そういえば才媛って、いま何が欲しいのかな……?
まあいいか、明日の夕方にでも、それとなく聞き出してみよう」
1人でそんなことを呟きながら、僕は布団に入って、眠ることにした。
また明日、なんだかんだで起こしてくれる、妹の才媛を待つために。
――その数週間後、なんだかんだで才媛の望みは叶うのだけれど、それはまた別のおはなし。
― In age impropriety bewitchingly. ―
最終更新:2009年05月08日 22:14